163 婿探し
初恋の日なので初投稿です
「つまりはなんだ、赤竜……ウルガンは次代の赤竜に番を持たせようとして結婚相手を探していると?」
「そのとおりや」
そしてどういう訳か俺達が選ばれたと。
「ボク達の理由は何だい?」
「それは兄ちゃん達が持っている武具だな」
そういわれると心当たりがある。というか心当たりしかない。
「これか……」
俺の風属性の剣。それにアリスのシルフィードの小剣だ。それ以外でも余った素材はそのまま俺の道具箱に眠っている。それを知られたという事か。
「それにしたって赤竜と会うのは今日が初めてのはずだ。どうやってボク達の事を知って君を招集に使ったんだい」
「そこはウルガン様は源創種やし、そういうのは分かるんとちゃうか?しらんけど」
このしらんけどは多分「個人の感想です」という意味だろう。なんかアンフィの発言が段々分かるようになってきた。しらんけど。
「あたし達、赤竜のお嫁さんになる気は無いわよ」
「ご主人様には崇高なる使命がございますし、ワタシばそのご主人様をお世話するという役目を仰せつかっております」
「まあまあ、まずは話を聞いてくれへんか?」
アンフィがテーブルと叩くと中央が開いて湯呑が人数分せり上がってくる。何その面白ギミック、聞くだけ聞いてやろう。
「いうて番を探してると言っても一生ここに居ろって訳じゃないねん。ただちょーっとサラマンディア様との間に子供を授かって欲しいだけで」
「「「子供?!」かい?」でございますか?」
三人が驚愕する。いや俺も大分驚いてはいるが。
「子供とは……しかしいいのか?」
「なにがや?」
「源創種とは創造主が作った原初の種族と聞いた。そしてその特性として身体が全て魔素で出来ていると、その血筋に俺達の様な血が入ったら源創種ではなくなるのではないか?」
そもそもシルヴェストルには番らしき人物は居なかったし教えてもらってもいない。てっきり単性生殖なのかと思っていたが違うのだろうか。
「あぁ、ちゃうちゃう。作る子供っていうのは赤竜の子供じゃなくてワイらの様な竜人や」
「え、お前……竜人なの?」
「せやで、こう見えてウルガン様の長男やで」
アンフィが立ち上がり指を鳴らすと、身体が炎に包まれる。すぐに炎は消えるがそこに居たのは村で見かけた偽装した姿に赤い角や肌に鱗を纏った姿だった。
「疑竜人とはずいぶん姿が違うんだな」
「アレはこの迷宮がワイの魔力を元に生み出した魔物やからな」
「アレお前の子供だったの?」
しかもお相手は迷宮か。
「言い方ぁ!いやまあ、間違ってはいないんか?別にアレが子供だとは考えたことないんやが」
「なるほどね、大体分かった」
ソフィーが道具箱から紙とペンを取り出し、ガリガリと何かを書いていく。
「赤竜は次世代の赤竜とは別に竜人を生み出していくのが赤竜としての強さなんだね。そしてそれには赤竜だけでは不可能、他種族の協力があって初めて出来ると。そのためにボク達は呼ばれた訳だ。赤竜のお眼鏡にかなうほどの強さを持っていたから」
紙に書かれた物は……何それサッカーボールの化け物か?
「おおぅ、まあ大体そんな感じや」
「しかし子供ねえ」
あの赤竜と子供を成すって、どうするの。一瞬一般的な生物の生殖行為を思い浮かべるが振り払う。まあ緑竜の時の様な継承の儀をやるとかだろう。
「まあ俺達が呼ばれた理由は分かった。赤竜の娘さん、名前はなんて言ったか」
「サラマンディア様や」
「そう、サラマンディア様。その人の竜人を生み出す事にも手伝うのは吝かではない」
「ホンマか?!」
「ただし!条件として赤竜の素材が欲しい」
そもそも俺達(というか俺)がこの迷宮に潜ったのが素材を手に入れるためだからだ。無償で手伝う気はない。
「なんやその事か、ええで」
「あんたの一存で決めていいの?」
「もとより協力のお礼に何か渡すべきだとウルガン様には言うてあるし、了承は得ているんや」
そうなのか、それならもう少し欲張りたいな。
「じゃあ赤竜の素材と……ここには倉庫はあるのか?」
「倉庫?」
「うーん、地面が見えないくらい深い穴の開いた部屋に棚がたくさん並んだところなんだが」
「おぉ、あるで。あそこ倉庫なんか」
「そこにおいてある素材もあれば欲しいんだがいいだろうか」
「ええでええで、何のためにあるのか分からん場所やったし、欲しければ持っていきな」
「俺としては十分だが、みんなは何かあるか?」
「ワタシは特にございません」
「あたしも、そもそもここに何があるか分からないし」
「ボクとしては何かこの遺跡に眠る本や資料でもあればいいんだけど」
そうなると赤竜や倉庫眠る素材と遺跡の文献という事になるな。
「全然大丈夫や、ほなウルガン様!それでよろしいですね!?」
「……うむ!アンフィスお前に任せる!用意せよ!」
「畏まりました」
「それでは強者よ!まずは我と手合わせしてもらおう!シルヴェストルを倒した強者の力!確かめさせてもらう!」
なんで?と口にする前に赤竜、ウルガンの魔素が膨れ上がるのを感じる。マジで戦うのか!
「ウルガン様はアホなんやけど戦闘狂なんや。準備してる間戦っといてくれや」
「アンフィス聞いてねえぞ!」
「言うてないしなあ。まあなるはやで用意してくるから死なない程度に頑張ってや」
アイツ後でぶっ飛ばす。その覚悟を決めて赤竜と対峙した。
運動会