161 火の巨人
骨と間接の日なので初投稿です
「せいっやあ!」
アリスがキュクロプスの指を3本同時に切り落とし、ソレを俺が斬り冷やして溶岩石にする。岩石になった身体は取り込めないのか特に執着をみせることなく襲い掛かってくる。
「『水流針』」
後ろからソフィーの魔術が飛んでくる。キュクロプスの身体に突き刺さると高温に曝された水が一瞬で蒸発するが、同時に刺さった周辺は冷やされて岩になる。身体のあちこちに岩の傷が生まれ、最初の時よりも溶岩の身体が暗くなってきていた。
「大分弱ってきたんじゃないか?」
「動きも鈍くなってきています」
「よし、このまま核心を引きずり出すぞ」
「二人とも、敵の様子がおかしいよ!気を付けて」
後ろからクレアの声が聞こえる。見ると人型から丸い形に変形している。
一旦直接攻撃を止め、ソフィーの攻撃魔術で様子を見る事にしたが、ダメージを受けているようには見えない。ついには、丼をさかさまにしたような形になり、見た目も真っ黒に固まってしまった。
「身体に混ざった岩石で殻でも作ったのか」
「これでは攻撃が通りませんね」
近付いて剣で叩く。先ほどまでの粘り気のある水分ではなく、確かな石の感覚が手に伝わる。最終的にはこうするつもりではあったが、この大きさでは核心の位置を特定する事は出来ない。
「ソフィー、ここから核心の場所がわかるか?」
「魔物の大きさから核心の大きさは把握できるけど、この殻では中で動き回ってる可能性はあるし」
「というか、あんたたち魔力が見えるんじゃなかったの?」
「あぁ、魔力視か。確かにそうすればいいか」
ソフィーと『親愛の絆』を起動する、魔力視を使って核心を探る。
「ん?核心無くない?」
「確かに、中は空っぽだ」
魔物の核心とは心臓に並ぶ重要な臓器だ。それが無いだなんて魔物としてあり得ない。
「ねえ、地面揺れてない?」
クレアの声で地面が揺れている事に気付く。
「地震?……もしかして噴火とかしないだろうな?」
揺れている地面を見る。そこには煌々と輝く魔力の塊が見えた。え、なにアレ。
「ご主人様、避難した方がよろしいのでは?」
「今ならクーちゃんに乗って一気に上に行けるよ」
「いなくなったキュクロプス、下の魔力の塊、この地面の揺れ……みんな気を付けろ、ラウンド2が始まるぞ」
周囲の溶岩が活発になる。ひときわ大きな揺れが起きると溶岩の一部が上に伸びあがる。伸びあがった溶岩の中から大きな目が現れる。
「随分と大きくなったな、成長期か?」
「足りなくなった溶岩を周りから集めたんだろう。君達が撤退する時にさらに大きくなったと言っていたがコレがそうなんじゃないかい?」
「それより、アレをどうやってやっつけるのよ!」
目の下に穴が開く、もしかして口なのだろうか。その穴の中が一際強く輝きだす。
「クレア、魔法盾の準備!ソフィーも魔術で防御を!」
一か所に集まり防御態勢を取る。
「ちょっと魔法盾ってなんかヤバいのが来るの?」
「先ほどまでとは魔力の量が桁違いだ」
「『土石槍』で壁を作ったけど正直持つか分からないよ」
「少しでも軽減できれば御の字だ、水系の防御魔術は出来るか?」
「『水流壁』がある、いつもなら3枚が限界だけど、今のボクだと10枚は出せるね」
「じゃあ全部出してくれ、補助する」
土槍の壁、水の壁、魔法盾の3層防御が出来上がる。現状コレが今できる最高の防御形態だ。さらに『氷嵐』の効果範囲をどんどん絞っていき、水壁だけを包む、すると水がだんだん凍り付いて水の壁から氷の壁に変わった。
「『氷塊壁』だ、これで多少は持つ」
「ねえ、これ全部破られたらどうなるの」
「そりゃあ全員消し炭になる」
「骨が残ればいい方だね」
「聞くんじゃなかった……」
敵の口から光の奔流が迸る。『土石槍』を一瞬で熔解し、氷の壁にぶつかる。一気に5枚の氷が消し飛び、6枚目の氷壁が水に浸けたわたあめの如く溶けていく。
「『氷嵐』威力全開!一点集中!」
6枚目はもう砕ける寸前なので捨て、7枚目の氷壁を『氷嵐』でさらに強化する。6枚目を貫いた光は7枚目の氷にぶつかって初めて周辺に光をばら撒きながら進行を止めた。
「なにこれ、溶岩?」
「溶岩を高圧で打ち出しているんだろうね」
「触れたら火傷で済まないから魔法盾で守っててくれよ」
俺の話を聞いて真上にも魔法盾を広げるクレア、弾かれた光が地面に当たると煙を上げながら地面を焼く。
「コレ海の時よりヤバくない?!」
「魔力の純度や量で言えば確かに『海帝都市』の迷宮主の方が強いだろう、だが熱量で言えばこちらの方が上だろうね」
7枚目の氷壁に穴が開き8枚目にぶつかる。このままならジリ貧だが……どうするか。
「放っておけばこのまま氷壁が全部溶かされてボク達もこんがりきつね色になるけどどうするんだい?」
「そうなる前に手を打つか」
「どうするのよ?」
「『反射』ではじき返す」
あのタコ野郎の時は相手が一枚上手だったので失敗したが、今回はちゃんと返す。
「ふむ、打開するには一番可能性が高いか」
「ホントに大丈夫なんでしょうね?」
「俺を信じろ、としか言えない」
「ワタシはいつでもご主人様を信じておりますので」
「ソフィー、本当にそれが一番生き残れるのよね?」
「もちろん」
「分かったわ、じゃあそれで行きましょ」
「じゃあカウントいくぞ、3……2……1……今!」
合図と共にすべての魔術を解除する。それとほぼ同時に氷壁を貫いてくる光。
「ピッチャー返し!」
『反射』成功時特有の甲高い音が火口の底に鳴り響いた。
スポーツ、時間変更、録画失敗、ウッアタマガ