160 赤竜火山攻略
豆腐の日なので初投稿です
昨晩の記憶が曖昧なまま迷宮攻略に向かう。
「本当に何も無かったの?」
「えぇ、何も無かったわよ」
「ご主人様はぐっすりとお眠りになられてました」
「何しても起きないから皆で布団に連れて行ったんだよ」
とまあ、終始こんな感じではぐらかされている。善意で隠してくれていると思ってこれ以上詮索するのはやめよう。善意だよね……?
「という訳でやってきました赤竜火山火口部、ここの最下層に階層主の巨大な溶岩人形がいる」
「どのくらいの大きさなんだい?」
「そうだなあ……おおよそだが俺の身長の5倍はあったと思う」
「それと恐らくですが身体の方向というものが無いと思われます」
「なにそれ?」
「前回戦った時、背後から攻撃したら顔が後ろを向いて蹴ってきたのです」
「人の形状をしているがあいつに前後という常識は無さそうだ」
「ふむ、今回の敵の本質はスライム等の不定形生物と同等なのかもしれないね」
「ねえ、それよりもここさっきまでの所と比べて熱くない?」
「あぁ、さっきの場所と違って火口だからな。溶岩も冷えた赤黒い色じゃなくて熱く光っているぜ」
『氷嵐』を強くして火口部の熱さに合わせる。
「今回俺はこの魔術を使っているから魔術は使えない、ここの攻撃魔術はソフィーが頼りだ」
「ふふ、まかせたまえ」
早速進んでいく、前回の探索でここに出てくるのは疑竜人が殆どだが前の階層とは違い、俊敏で知能もある。まあ俺とアリスの時点で倒せていたので問題は無いだろう。
「それじゃあ行こうか」
道は覚えているのでサクサク進んでいく。道中の疑竜人は俺とアリスが前衛をしてソフィーが魔術による援護射撃を行う。魔物たちは一瞬で全滅した。
「ふむ、ここなら水魔術だけで十分だね」
「むしろ水魔術以外で有効な魔術あるのか?」
「雷魔術とまでは行かなくても水と風を組み合わせて風雨でも降らせれば溶岩人形何かは一気に複数体固められると思うよ」
他にも火精みたいな火の塊や体の火が消えたら死ぬ火鼠にも有効だろう。確かにこの迷宮のほぼすべての魔物に有効な攻撃方法ともいえる。
そうこう喋っている間に今回の目的地である最下層に到着した。足場の中心には火精が1体漂っている。
「アレがそうだ」
「あなた達が言っていたより大分小さいけど大丈夫?もしかして私達だましてる?」
「だましてねえよ!そんなんならここから攻撃してみればいいんじゃないか?」
俺の言葉にソフィーが『水流針』を呼び出して射出する。
しかし水の針は球体に当たることなく、地面から噴出した溶岩によって防がれてしまった。
「アレが今回の敵、仮称キュクロプスだ」
「伝承に出てくる火の巨人か、君もなかなか博識だね」
「ご主人様ですから」
「それよりアレこっち来てない?」
噴出した溶岩が火精に群がり巨人を成形するとこっちに向かって歩き出した。
確かに前回は広場に入ってからこの巨人が姿を現したが今回はまだ通路にいる。攻撃したのでアクティブになったのだろうか。
「ここじゃあ危険だから広場に出よう、それとクー助で飛ぶと俺の『氷嵐』の範囲外に出てしまう可能性があるから注意してくれ」
「分かったわ」
「きゅ!」
「いくぞアリス」
「畏まりました」
俺とアリスが飛び出し足元に向かう。キュクロプスは出てきた俺達を叩き潰すように腕を振り下ろす。
「当たるかよ!」
横に大きくステップして避ける。火属性の敵なので今回はタコ野郎の素材で作った水属性の剣であるこいつを持ってきた。名前は確かウルトラ何とか……そんな感じの名前だ。
「おりゃあ!」
横におりてきた腕を切り裂く。液体ではあるので難なく切れはするが直ぐに修復されてしまう。しかし後衛の安全の為にも敵意は稼がないといけない。
ギョロリと火の目がこちらを向いて振り下ろした腕を横に薙ぎ払ってきたので慌てて逃げる。
「あっぶな」
「ご主人様大丈夫ですか」
「なんとかな。しかし斬ってもすぐ直るんじゃあ俺達では手の施しようがないな」
「いえ、そうでも無いかもしれません。アレをご覧ください」
アリスが指さしたのは俺が先ほど斬りつけた場所だ。何故か黒くなっている。
「アレは……固まってる?」
「恐らくですがその剣で切ったからだと思われます」
「これで?」
「ワタシも何度か斬りつけましたがシルフィード様の小剣を使っても同じような事にはなりませんでした」
つまり水属性の剣で切ったから冷えて固まった?理由はともかく固められる手段は魔術以外にもあるというのは理解した。
「アリス、小剣で切断するのは出来るか」
「やれます」
「よし、アリスは少しずつ溶岩を切り落としてくれ。俺がそれを固める」
「畏まりました」
クレア達も広場に出てこれたようだ。これでフルメンバーでキュクロプスの対処が出来る。
「それじゃあ、だるま落とししようぜ」
だるまはお前な!
エボのダム