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154 火の巨人

水泳の日なので初投稿です

 結局、角はそのまま持ち出され、冒険者ギルドで換金されることになった。


「赤竜様の角?!そんなモノうちでは買い取れませんよ!」

「いつも買い取っているんじゃないのか?」

「いつも買い取っているのは古くなって剥がれ落ちた鱗とかですよ。それも試練に参加すればだれでも貰えますし……このような大きな角を買い取ったらギルドが潰れちゃいますよ!」


 査定額を聞いたら、目玉が飛び出るレベルの値段だった。城が買えるんじゃないか?とりあえずバーン王国中のギルドに連絡して金は用意してくれるらしい。


「飛んでもねえ金額になっちまったなあ」

「コレ、どうやって分配するんだ……?」

「そりゃあそういうのを決めるのもリーダーだろうが……」


 赤竜との戦いで参加した冒険者全員が俺を見る。6パーティなので均等に分割して1パーティ16%で4%残る、それをリーダー特権で回収する事が多いのだが、今回は金額が金額なのでこれすらも禍根に残りそうな気がする。


「まあ今回は強制的に俺の指揮に従ってもらったからな、俺達は報酬の10%でいい。残りはお前達で均等に分配しろ」


 俺の言葉を聞いて冒険者達の頭に?が浮かんだ様に見えた。仕方ないので銅貨100枚を使って説明したところ、何とか自分たちが得する分配方法と理解してくれた。しかしそれでは申し訳ないという事になり、今宿泊している宿屋の宿泊費分はくれるらしい。


「なんだか悪いな」

「実際お前たちが居なかったら赤竜様を鎮められなかったかもしれないからな。これはそのお礼だ」


 観光業を営んでいる冒険者は、殆どがこの町で生まれた者たちだ。そのせいか赤竜への信仰心も強い。角を6等分に分けずに止めに入ったのも、その辺りが強く影響されているのかもしれない。

 報酬は後日改めて支払われることになりこの日は解散した。この事を聞きつけたのか翌日には王国中の貴族や商人の使いがやってきて角を寄こせと冒険者ギルドに集まっているらしい。ご苦労なことで。

 と、思ったらどうやら冒険者もにわかに増えてきていた。赤竜の角を狙おうと試練に参加するつもりなのだろう。防具のレンタル屋が忙しそうにしているのを迷宮(ダンジョン)に向かう途中で見かけた。


「おかげでワイらも大忙しやで」

「大変だな」

「他人事みたいに言いよってからに……」


 奥の火口に向かう前に溶岩湖によって見るといつもより人、というか冒険者が多かった。アンフィスに聞くといつもより受付の人数が増えたらしい。


「毎日そんなに戦ってバイネインは大丈夫なのか?」

「今の所はな。でも今回の事もあるし、近いうちに休むつもりや」


 溶岩湖を離れて火口へ向かう。俺達を見て後を付いてきている冒険者が居たので適当に撒いて火口に向かった。

 敵の強さが倍以上跳ね上がった感じのする火口階層(エリア)は三回目というのもあり、スムーズに攻略が進んでいた。


疑竜人(リザードマン)が賢くなっただけじゃなくて火鼠(ファイアラット)火精(ファイアスピリッツ)も強くなっているけど苦戦するほどではないな」

「ですが、油断は怪我の元です。お気を付けください」


 アリスの言葉に気を引き締めて先へ進む。この火口階層(エリア)はほぼ一本道で出来ているので迷う事が殆ど無い。道が分かれていても外れの方は直ぐに行き止まりになっていて宝箱があるようすも無い。ゲームなら手抜きと地図(マップ)のスクショと共にネットで炎上していたかもな。

 そういう訳で、道の一番奥、火口の最下層にたどり着いた。


「あっつ……」


 野球場の広さ程のマグマ溜まりに少しの足場しかない広場は『氷嵐(アイスストーム)』を展開していても肌を刺すような熱さが襲い掛かり、俺達を容赦なく焼いた。


「ここが最終地点でしょうか?」

「今までの道からして他になさそうだし、ここであっているんじゃないのか?」


 広場に一歩入るとプレッシャーの様な圧を感じた。


「これは階層主(エリアボス)クラスだな」

「ご主人様、前です」


 正面には火精(ファイアスピリッツ)が次々に集まると大きな火の目玉が現れた。目からビーム撃ってこないよな?すると今度は溶岩人形(ラヴァゴーレム)が集まり大きな人型を形作っていく。徐々に大きくなっていき、最後には火の目玉が頭部の穴にすっぽりと収まった。その姿は端的に表すなら一つ目の火の巨人だった。


「まさにキュクロプスだな」

「来ます!」


 溶岩の腕を俺達に向かって叩きつける。俺とアリスは左右に分かれて回避する。


「魔術……は今『氷嵐(アイスストーム)』を使っているんだった」


 そうなると投擲釘(スローネイル)か近接攻撃するしかないのだが、溶岩人形(ラヴァゴーレム)の弱点は溶岩の身体のどこかにある核心(コア)だ。本来なら少しずつ溶岩を固めて核心(コア)の逃げ場を無くし、一気に叩くのだが常套手段だが。


「弱点はアレ……だよなあ」


 頭部にある火精(ファイアスピリッツ)の目玉を見る。巨人の大きさは竜化したシルフィード程ではないが十分に大きい。だが膝を付けば届きそうではある。


「ご主人様、如何なさいましょう」

「とりあえず、小剣で足を斬ってくれ」

「畏まりました」


 キュクロプスの背面に回ってアリスと合流する。アリスに足を斬るように指示する。俺もアリスとは逆側の足を狙って走る。その時、首が180度回転して俺達を見据え、俺を見ると蹴飛ばそうと足を振り上げる。


「マジか」


 溶岩の塊が俺に向かって突撃してきた。


コミケ

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