15 クラン申請
シュクメルリ食べたので初投稿です
朝、街に戻った俺たちは早速冒険者ギルドに報告へ向かった。受付のお嬢さんに声をかけ、採用試験のクエストの事を伝えるとマッチョ氏が来てくれた、そこで巨大スライムの報告をしたのだが……。
「つまりだ、ダンジョン最深部に巨大なスライムが居たので逃げようとしたら追い詰められたので討伐したと?信じられん」
「そうは言っても実際に倒したし、証拠にスライムの戦利品も持ってきた」
そう言って背負った麻袋から核殻と魔石を取り出す。
魔石は野球ボール程の大きさで生物の体内に入っていたのにカッティングが施されたような綺麗な正多面体の紫水晶だった。
「ふーむ、確かにこれはビック……いや、ヒュージスライムか!」
「ヒュージスライム?それってどこに行けば居る魔物なんだ?」
「最低でも上級ダンジョンの低階層主クラスの魔物だ、それがなぜあのダンジョンなんかに……」
マッチョ氏の言葉に周りの冒険者達がざわめく。確かに上級ダンジョンのモンスターのボスに遭遇して生き延びるならまだしも、討伐してきたのであれば動揺も隠せないだろう。というかそんなヤバいヤツだったのか、よく生きてたな俺たち。
「他に何か気が付かなかったか?」
「そういえば最深部の中央に何かの殻があったな」
「殻?」
「あぁ、見つけた直後にスライムに襲われたからそのあと探したのだが、見つかったのはこの欠片だけだ」
ポケットから親指の爪程の欠片をマッチョ氏に渡す。
マッチョ氏はまじまじと見つめた後、懐に仕舞った。
「なるほど、それでは試験結果だが問題なく合格だ。なにか聞きたいことはあるか?」
「じゃあ一つ、上級ダンジョンの階層主って普通どの程度の人数で挑むモノなんだ?」
「上級ダンジョンの階層主なら最低でも12人の半旅団は必須だ。この人数でも死者は出る可能性は高い。それをたった2人で倒すならそれこそ勇者ぐらいだろう」
「……なるほど」
「ふむ、これからも冒険者として貴殿等の活躍を期待する。」
そういってマッチョ氏は踵を返して出て行った。
「さてと、じゃあ……」
「「「「ちょっとまったー!!!!」」」」」
遠巻きにいた冒険者達が一斉に詰め寄ってくる。それもそのはず、ギルドの試験を受けに来た新人が思わぬ大戦果をあげて戻ってきた。それならば冒険者としてやることは1つ。
自身の仲間への勧誘だ。
「君たち二人組のようだがどこかクランに入る気はあるか?」
「ぜひ俺たちのクラン《夜明けの星》に!」
「いやいや俺たち《草原の風》こそふさわしい!」
「ねえ貴女、そんな男とはやめて私たち《白百合の園》に入らない?」
「我が師の筋肉は見たかね?!ならば入るべきは《鋼の肉体》だとわかるはずだ!」
「あんたら魔術は使えるのか?使えるのなら僕らのクラン《深遠の闇》に来ると良い」
「おい抜け駆けはやめろよな!」
「そっちこそ!」
「なんだと!」
「やんのかコラ!」
どんどんカオスになってきた、向こうの方ではケンカが始まってるっぽいしここは撤退するしかあるまい。
「受付のお姉さん、とりあえずこの戦利品を換金してほしいんだけど」
「あっはい、この量だと少し時間かかりますが……」
「後日取りに来るからやっといて、あと裏手口ってある?」
「でしたらあちらに」
お姉さんも場慣れしているのか特に驚いてもいないのかカウンターの奥にある廊下を指さす。お礼を言いながらアリスと共に通路に逃げ込んだ。
「あ!逃げたぞ!」
「追え!何としても捕まえろ!」
後ろから聞こえてくる声が危なすぎでしょう。廊下を走り抜けて裏手口から外へ出ずにさらに奥に進む。
「ユート様、どちらに向かっているのでしょう」
「裏手に先回りしてる連中もいそうだからな、更に反対側の窓から脱出するんだ」
廊下を曲がり、適当な窓から外の様子を伺うと人の気配がする、遅かったか。
「ご主人様、どういたしましょう」
「とりあえずこのまま進むか」
「それはやめといた方がいいかなあ」
「誰だ!」
俺とアリス以外の声が唐突に聞こえた。もう追いつかれたか?
「ここだよ、ここ」
上に続く階段から誰かが下りてきた……子供?
アリスより少し年上くらいの女の子が手招きをしている。
ギルド職員の関係者だろうか、身なりがかなり綺麗で只者ではない感じがする。もしかしたら役員クラスのお子さんかもしれない。
「その先は依頼書の保管室しかなくて行き止まりだし、こっちにおいでよ。そのままだと見つかっちゃうよ」
「あー、いいのか?俺等のような下っ端冒険者が入っても」
「いいよいいよ、それともまだ追いかけっこをやりたい?」
後ろから誰かが走ってくる音が聞こえる、確かにこのまま見つかるのは不味い。というか面倒くさい。
「大丈夫大丈夫、取って食ったりはしないよー安全だよー」
「そう思うならもうちょっと信頼できそうな発言をしてほしい」
「ご主人様……」
「背に腹は代えられないし、ここは乗っておこう」
階段を上ると明らかに廊下の雰囲気が変わった、1階は飾り気のない武骨な感じだったがここからは上品な感じがする、っていうか床が絨毯になっているし壁も土壁がむき出しではなく漆喰で綺麗に均されているし芸術品の様な壺が置いてある。
客、それも金持ちをもてなす為の空間である事は間違いない。
「なにやってんの?こっちだよ」
少女は慣れているようでお構いなしに廊下を突き進んでいくので俺達も後を追う。
「君は一体何者なんだ?ここはなんていうか……上客を迎えるような場所だろう」
「すぐ分かるって、ほら着いた」
たどり着いた場所にはギルドマスター室と書かれたプレートにお金をつぎ込んだような豪華な装飾が施された扉だった。
「ここなら誰も入ってこれないから安全だよ」
「別の意味で安全じゃねえよ」
「まあまあ、はいったはいった」
背中をぐいぐい押してくる、グッこいつ力強い……!
「おや、ユート君にアリスさんじゃあないか、なぜ君たちがここへ?」
「あ、マッ……チェストさん、あなたがギルマスだったんですか?」
「はっはっは、私の事は気軽にサイと呼んでくれて構わないよ。それと私はギルドマスターではない」
一瞬マッチョと言いかけたが何とか修正が聞いた、しかし話すたびにポーズをとるのは何なんだ。
「君たちが持ってきた何かの欠片、これをギルドマスターに渡しに来たのだよ、となんだ居るではないですか」
なんと既に居るとな。しかし後ろを振り向いても居るのはアリスだけで誰もいない……まさかアリスが?!
「おーサイっちありがとねえ。うーんこれは確かにあの卵の欠片だねえ」
俺の背中を押していたはずの少女の声が前から聞こえた。向き直ると欠片を片手にまじまじと観察している。
「ギルドマスター?」
「チェストさま、この方は……?」
「そういえば君たちは初めてだったな、彼女がこの冒険者ギルドを統括するギルドマスターだ」
「やっほー、この冒険者ギルドのお飾りマスターこと、エリーザ・ミラーカでーす」
「は?」
「はぁ?」
感謝祭めっちゃ良かった