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148 氷魔術

露天風呂の日なので初投稿です

 この温泉町は渓谷の川を挟むように宿屋が連なっていて川の上流、町の一番奥に赤竜の迷宮(ダンジョン)が存在している。昔は温泉と共に噴き出す毒ガスのせいで人も動物も近寄る事の出来ない死の谷となっていた。


「そこに現れた旅人が土地を整え、毒の空気を薄めて人が住めるようにしたんだ。そうしたら温泉の効能

 や極楽茸で徐々に人が集まって国でも有数の温泉町になった……というのがこの温泉町の歴史だね」


 町の歴史が分かる資料館に赴き、大まかながら町の歴史を調べると大体このような感じだ。


「この旅人っていうのが臭いな」


 唐突に表れて毒ガスがたまらない様に谷を削り、周りの木を伐採して風通しを良くして毒ガスを押し流す。しかも毒ガスの中でも動けるように無毒化の面を作り、仲間にも配ったという話だ。


「しかもこの無毒化の面、これは原始的ではあるがガスマスクだ」


 口と鼻を覆うマスクに、そこから背中の装置に伸びるチューブ、装置の中には木炭らしき黒い塊が敷き詰められている。某化学漫画でも登場した活性炭を利用したガスマスクだ。


「コレを作るには科学知識が必須だ。生活の知恵でどうにか出来る物じゃないな」


 そもそもこの資料館もその旅人が作ったという話だ。この観光地でよく見るどこに需要があるか分からない資料館をだ。ナンカクアスカと同じ転生者(日本人)の可能性は十分にある。そうなってくると何かスキル獲得のチャンスかと思ったが、特に何も無さそうだ。


「そろそろ移動するけど、ソフィーはどうする?」

「ボクはもう少しここに残るよ。二階には少しながらも図書館があるみたいだし」

「そうか、晩飯には帰って来いよ」


 資料館を出て温泉町を眺める。谷の両サイドに並ぶ町並みは日本の温泉街を彷彿させる姿だ。温泉饅頭や温泉卵もあるしな。


「これから如何しますか?」

「『赤竜火山』に行こうと思う」


 隣に居るアリスの質問に簡単に答える。温泉に浸かるにはある程度疲れた方が気持ちいいしな。そうなると迷宮(ダンジョン)に潜って探索するのが一番だ。魔物(モンスター)戦利品(ドロップアイテム)を売れば金策にもなるし。


「ではご一緒します」

「アリスも他の2人みたいに自分のしたい事すればいいんだよ?」


 クレアは町の食べ歩きをしているし、ソフィーはいつも通り本の虫になっている。


「ワタシはご主人様のお世話をしたいのです」

「そっか、じゃあ行こうか」

「はい」


 アリスを連れて『赤竜火山』に向かう。入ると赤熱した溶岩が目を焼く。相変わらず熱いな。


「アリスは大丈夫か?」

「昨日の様に短時間でしたら問題はありませんが一日中となると少し厳しいかもしれません」

「となると、やはり何か対策が必要だな」


 とは言え、昨日の様に氷を抱えてでは戦闘に支障をきたす。


「とりあえず周りに浮かせてみるか」


水流針(アクアニードル)』を凍らせた『氷塊針(アイスニードル)』を衛星の様に自身を中心に周回させる。魔術はイメージが重要なので新しく作った魔術には名前を付けるとイメージの固定ができる。


「うーん、これは……」

「あまり、涼しく感じませんね」


 前を通り過ぎる時に熱さが軽減されるがこれは溶岩を直視しないからだな。それに魔物と戦うとなれば邪魔になる。もっと細かくしてみるか。大きさを半分……いや、一気に十分の一程度まで細かくする。その代わりに数を10倍にしてみる。連なって土星の環みたいになったな。


「氷を上下にばらけさせて、回転速度も上げるか」

「なんだか熱さが和らいできましたね」


 氷の冷気が回転速度を上げた事で周辺の空気が下げられたのかも、その代わりに小さくした氷が解けるのが格段に上がった。氷の生成速度を上げることで対応する。


「大分涼しくなったな。それに回転する円を大きくすればパーティ全員入れそうだ」

「しかしこれをずっと出しているなんてご主人様が疲れてしまいませんか?」

「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。『型式(タイプ)子機(ビット)』を使った程でもないし、一日中発動は無理でも半日くらいなら問題ないかな。あ、でもこれを使ってる間は他の魔術は使えないかも」


 今回は戦闘になったら消して戦う事になりそうだ。ソフィーが居る時は展開したままでいいかも。


「そう考えていたんだけど、これは……」


 ある程度歩き、疑竜人(リザードマン)と対峙した。戦闘を行うというタイミングで実験的に氷の範囲を拡大し、戦闘エリアを包むように展開したら魔物(モンスター)に変化が起きた。


「なんか、動きが鈍くないか?」

「そうですね、昨日とは比べて明らかに動きが鈍いです」


 ただでさえ動きが単調な疑竜人(リザードマン)が更に動きが鈍くなる。


「ほら、アイツなんてその場で突っ立ってるぞ」


 襲ってきた魔物(モンスター)は切り伏せて立ったまま動かなくなったヤツの前まで移動する。目の前で手を振っても動く気配がない、爬虫類は変温動物な上に火山の様な常に高温の場所に居るからか、人が快適な温度だと寒いのかもしれない。


「とはいえここの魔物(モンスター)はそんな事しなくても倒せるんだけどな」


 これはもっと深部に潜ってもいいかもしれない。そうして俺とアリスは赤竜火山の奥に向かって歩み始めた。


古戦場です

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