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146 涼の取り方

傘の日なので初投稿です

「それにしてもあっついわね……ソフィー、何か涼しくする魔術ってないの?水の魔術で周りの溶岩を冷やしたりとか」

「出来るけどお薦めしないね。水が高温の水蒸気になって全身大やけどをすることになるからね」

「うへえ、そんなの勘弁してほしいわ」

「ご主人様、お水どうぞ」


 赤竜モドキの試練を見ていると周囲の溶岩から発せられる熱でやられそうになる。それは俺達以外の冒険者も似たような状況らしく熱さに喘いでいる。しかし一番熱いところに居るはずの試練参加者は特にそのような素振りを見せていない。それどころか試練参加予定者と思われる集団も特に熱そうにしている様子もない。何か対策でもしているのだろうか。


「あの熱そうにしていない連中は何か対策しているのだろうか?」

「それはきっと御守り(アミュレット)を持っているのだろうね」


 御守り(アミュレット)か、DPS(ゲーム)の装備品にもあったが、出てくるのは攻撃力や防御力といったステータスに関係する補正ばかりで、属性に対する補正などは無かったはずだ。まあこれはDPS(ゲーム)の仕様で属性による補正が無かったのが原因だが。


「多分、耐熱の御守り(アミュレット)だろうね。あそこでも売っていると思うけど」


 掘っ立て小屋を指差すソフィー、値段を見れば結構な値が付いている。普段なら買おうとは思わないが、この熱さから逃れるためには買ってもいいかもしれない、という塩梅の価格だ。この迷宮(ダンジョン)に用事があって何回も潜るようなら買っていいだろうが、一度きりの人が買うには高い買い物だ。


「しょうがないから、魔術で何とかするか」

「ですが先ほどソフィー様が危険だと……」

「水を周囲の熱せられた岩に掛けたらそりゃあ危険だよ」


 やっていることはサウナのローリュと一緒だからな。似た理論で水を被ると気化熱で一時的に涼しくなるものの、その後は表面の水が熱で高温になって火傷するのでやめた方が良いのだ。


「じゃあどうするのよ?」

「水なんて中途半端な温度で涼をとるから危険なんだ、もっと温度を下げるんだ」


 イメージを考えながら魔術を起動させる。ベースとなる魔術は『水流針(アクアニードル)』がサイズ的にもちょうどいいか。水で出来た円柱を生成する。そこから作り出した水の温度を下げていく。魔術はイメージが大切だ。目標はその昔、観光地で見た巨大な氷柱だ。洞窟の奥深くにあるそれは、夏場でも溶けることなく存在し、古くは雪女伝説があったと聞いたことがある。


「凄い、この高温の中で氷を生成してる……」

「……よし!これでどうだ?」

「ひんやりしてて、きもちいい~」

「素晴らしいです、ご主人様」


 出来上がったのは両手で抱えるほどの巨大な氷柱だ。持ってみると滅茶苦茶重い。俺でも持つのに苦労するのに、この3人では押潰れてしまうな。


「アリス、シルフィードの小剣貸して」

「かしこまりました」


 アリスが道具箱(アイテムボックス)呪文(スペル)を唱えて異次元の穴から小剣を取り出して、俺に渡した。このシルフィードの小剣は他の影打とは違い、魔力(オド)を流し込めば風の魔術を行使する事が出来る。これで『風刃(エアブレイド)』を発動させると髪の毛よりも薄く、鋭い刃を生成する事が出来る。


「ちょっと離れてて……フッ!」


 小剣を氷に向かって3合、斬りつける。『風刃(エアブレイド)』を解除し、氷柱を持つと綺麗に4つに割れた。


「この大きさなら持てるだろ」


 直接持つと濡れるし冷えすぎるので布で包んでみんなに配る。全員が氷で涼んでいると赤竜モドキが雄たけびを上げて倒れた。参加者が歓声を上げていることからどうやら勝利したようだ。倒れた赤竜が這いつくばりながら何かを差し出した。もしかしてアレが報酬なのか?参加者に見せてもらうと、赤黒い鱗や鋭い爪のようだ。


「緑竜の素材みたいな純粋な魔素(マナ)を感じないな……」

「あの赤竜モドキの物だとすれば合点は行くね」


 と、なると本当にここに赤竜は居なさそうだ。この大空洞のどこに居るのか分からないが、探索するにはこの氷では心もとないだろう。今回は素直に帰るとして、次回は御守り(アミュレット)を買ってからにしよう。俺達は迷宮(ダンジョン)を出ると宿屋に向かって歩き出した。


「はあ~~~きもちいい~~~」

「いいお湯ですね」


 温泉街でも街外れにあるこの宿屋は赤竜の迷宮(ダンジョン)からも遠く規模も民宿程度の大きさしかないため俺たち以外に宿泊客は居なかった。それでも人気宿よりも上質な露天風呂があるとは店主の言葉だ。夕飯は既に済ませている。あとは温泉で疲れをいやして寝るだけだ。風呂場が一つしかないという事で先に三人娘が入った後で俺が入っているのでこの温泉は現在独り占めだ。


「さて、あまりの温泉のデカさにテンション上がってかけ湯だけして入ったから、そろそろ身体を洗うか」

「それでは、お手伝いしますね」


 湯舟から上がり、洗い場に向かう。蛇口や固定式とはいえシャワーが有ったりと、割と現代風なのは、過去に転生者が居た名残だったりするのだろうか?


「さて、と」

「まずは頭からお洗いしますね」

「あぁ、よろしくたの……おわっ?!」

「どうかしましたか?」

「どうもこうも……アリスなんでいるの?!」


 あまりにも自然に会話してくるものだから反応に遅れたがアリスが横に居た。


種24

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