144 火の国
こんにゃくの日なので初投稿です
翌日、俺はアリス達に妖精の事について話をした。
「なるほど、そういう事でしたか」
「でも、本当に妖精なんているの?おとぎ話じゃあるまいし」
この世界では妖精はそういう類のモノらしい。俺からすれば剣と魔法のここもそう大差ないのだが。
「妖精は民話や伝承に出てくる今はもういない種族だね。近代の学者たちの間では古代人が魔素が起こす現象を妖精と呼んでいて、現実にはいない生物っていうのが通説だね」
「空想上の生き物って事か」
彼女たちを見た感じは微塵も感じなかったが。アリス達に紹介しようにもどこに居るか分からないのがネックだな。
「まあ、そのうち皆にも紹介できるといいな」
「話はおしまい?それじゃあ、あたしに提案があるのだけれど」
そういうとクレアはテーブルの上に一枚の紙を出す、そこには水に浸かる女性の姿を描いた一枚絵と文字で彩られていた。もしかしてチラシか?
「これは?」
「温泉よ、お・ん・せ・ん!赤竜がいるバーン王国には温泉っていう暖かい水が出る天然のお風呂があるのよ!」
温泉かあ、前の世界で行ったのはいつだろうか。一時期銭湯にハマって休日にいろんな銭湯に遠出したこともあったな。
「それで、なぜ温泉に?」
「ほら、最近色々あったじゃない?」
緑竜にあったり剣を作ったり盗まれたり賞金首狩りしたり巨大犯罪組織を壊滅に追い込んだり。……色々ありすぎでは?
「だからそろそろ休息が必要だと思うのよ!」
「ご主人様を温泉で癒す……良いと思います」
「バーンの魔術書や、赤竜の伝承も気になっていた所だ。ボクとしては反対する理由は無いよ」
クレアの提案に二人とも乗り気のようだ、俺も久しぶりに温泉に浸かりたいので反対する理由もない。
「それじゃあ決まりね!次の目的地はバーン王国よ!」
そして俺達は旅支度をすると、バーン王国に向けて出発した。そして3週間後、俺達は赤竜の迷宮、『赤竜火山』にいた。
「何でよ!」
「なんでって、赤竜の素材が欲しいからだよ」
「そうじゃないわよ!わたしたち温泉の為にバーン王国に来たのじゃない!」
「そうだな、だからバーン王国一番の温泉街の宿を2ヶ月も取ったじゃないか」
そして、この温泉街がなぜ一番大きいかというと、赤竜の迷宮があるからだ。
「その2ヶ月って迷宮攻略の為の2ヶ月じゃない!」
「まあまあ、赤竜の迷宮は比較的簡単で。一日もあれば迷宮主まで行けてしまえるようです」
「迷宮に行くことは変らないじゃない!」
ここは何と街のド真ん中に迷宮の入口があり、入場料を払えばだれでも入れるのだ。
「そうじゃなくて!あたしは温泉で癒されに来たのよ!」
すごい拒否るじゃん。
「それじゃあ、今日は迷宮主まで行って、引き返してこよう。そうしたら次は一ヶ月後に一度だけに行って、それ以降は行かない。ちゃんと休む」
「……本当に?」
「本当に。アリス達もそれでいいよな?」
「ご主人様のお望みでしたら」
「ボクもいいよ。調べものしたいからね」
「……なら、いいわよ」
どうやら納得してくれたらしい。まあ慰安に来たのに最初に行くのが迷宮じゃあ来た意味を問われるのは仕方ない。とはいえ折角来たのだから俺も欲しいのだ火属性の素材が。属性剣を使いだすと全属性揃えたくなるのだ。
「なんか、あたし一人が駄々こねたみたいになったわね」
「そんなことないよ。俺だって休みのために来たけど、赤竜の素材が欲しくてここに来たのだから」
実はこの三人の中であまり自分の要望や意見を言わないのはクレアだったりする。アリスは隙あらば俺のお世話をしたがるし、ソフィーは研究や調べ物を始めると俺をこき使ったりするので、クレアも言ってくれる方がバランスが取れるのだ。
「それじゃあ、火山攻略を始めるか!」
『赤竜火山』、最初は『風切りの洞穴』と同じ洞窟の様な入口から始まる迷宮だが、しばらく奥に進むと唐突に視界が開ける。天井が霞むほどの大空洞と、その中央に火山が一つそびえ立つ場所に辿り着く。あの火山の麓に赤竜が居るらしい。
魔物は火の玉の火精や火鼠がおり、一番厄介なのが溶岩の身体を持つ溶岩人形だ。
「溶岩人形は身体の特性上、物理攻撃はほぼ効かないよ」
「じゃあどうやって倒すんだよ」
「魔術で固めるんだよ。こんな風にね」
ソフィーが水魔術を溶岩人形に浴びせると、うめき声をあげながら体が黒くなって固まった。なるほど冷やして固めるのね。
「これで後は頭の核心を狙うだけだよ」
「しかし岩の様に固まってますけど刃は通るのでしょうか?」
「殴って砕いた方が良いんじゃない?」
「確かにな、クレア、そのメイス貸して」
クレアからメイスを受け取り、ゴーレムの頭めがけて思いっきり振り下ろした。表面の冷え固まった溶岩と、その中にある核心を砕くと、溶岩人形は砕け散った。
「次来るときは俺用の鈍器を買って来よう」
そうして大空洞の中心、火山を目指すのであった。
とんでもねえお嬢様が来ましたわ