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142 夜明け

ストッキングの日なので初投稿です

 夜が明けると街の治安部隊こと騎士団が大挙としてやってきた。


「私が手配しておいた。今回は事が大きくなりすぎた。彼らが動かないと市井が安心できないからな」

「ベルンハルト家はどうなるんだ?」

「古くからこの街を汚してきた死に至る毒(ヴェノム)と手を組んでいた、許されざる罪であることは間違いない……ベルンハルト家全員の極刑はもちろん、血縁関係がある家や交流のあった貴族の首も並ぶだろうな」

「それでは協力してくれたランベルト様は……」

「……彼も覚悟の上だ」


 ランベルト、今日の作戦で屋敷の出入り口を解錠してくれていた協力者で、ベルンハルト家当主の息子だ。協力してくれたのに、その結果が死刑なんて理不尽とは思う。それが貴族の務めだとしても。


「なんとかならないのか?」

「難しいだろう。貴族には貴族の権利と義務がある。市井を導く者が私利私欲の為に罪を犯すのなら、その罰は誰よりも重く、厳しくなければならない。それが貴族というものだ」


 ここで、だから、でも、と言ったところで俺達は冒険者で貴族じゃない。貴族のルールに首を突っ込むのはそれこそ余計なお世話なのかもしれない。


「それはそれとして、君達の目的の物は早く回収しておいた方が良い。騎士団がこの場所を押さえたら回収できなくなってしまうからね」


 それは困る。俺達がこの作戦に参加したのは影打を回収するためだからな。ベルンハルトが所有していた2本を瓦礫の中から回収し、当主の死体から俺が所持していた小剣を回収、これで4本の影打を全て回収出来た。


「ん?これは……」

「ご主人様?何かありましたか?」


 死体の懐に封がされた手紙を見つける。あて先はゲイリーと書いてある。


「『迅雷』諸君、小剣の事は他言しないよう部下に指示しておく」

「お願いします。それとこの手紙、当主様宛ですよ」

「これは、レナードの……」


 手紙を見る当主、読み終えた時に一瞬、怒りと喜びが混じったような顔をしたがすぐに戻った。


「ありがとう。どうやらレナードの息子は助けられそうだ」


 その手紙に何が書いてあったのだろうか、俺が知るすべは無いし、他人の手紙を覗き見るほど悪趣味でもない。あの熱血漢の少年が助かるならそれでいいだろう。


「じゃあ任務完了だな、帰るか」

「そんなあっさりでいいの?」

「俺達の出番はもうないからな、ほら帰って寝るぞ」


 メイドさんに送迎を頼もうとしたが、人の目があるところで使うのもではないとの事で歩きになった。帰る途中に冒険者ギルドに寄りヴニュに会いに行く。


「おぉ!取り返してくれたのか!」

「あぁ、それでこの小剣どうするんだ?」

「どうするって?」

「これを持っていたら、今後こういう事に巻き込まれるって事だよ」

「それならもう決まってるぜ。持ち主に渡すのさ」

「持ち主?誰の事だ」

「そりゃもちろん、この小剣を作るにあたって材料をくれたシルフィードなる竜種(ドラゴン)さ」


 無い胸を張るヴニュ、シルフィードはこっちに来れるのだろうか。


「シルフィは当分外に出れないって、魔素(マナ)のコントロールが安定しないとかで」

「となると、誰かが持っていくしかないって事か……俺達だよな」


 隣に居るエリちゃんの証言により、また『風切りの洞穴』に向かう事になった。今回はエリちゃんではなくヴニュが同行する。

 後日、ヴニュを連れて『風切りの洞穴』に向かった。馬車だと金も時間もかかるので朝日が出る前にクー助の背中に乗って向かった。日が昇り切る前に着いた俺達は他の冒険者に見つかる前に迷宮(ダンジョン)に入った。


「はー、あんたがシルフィードかい?」

「え、えぇ……あなたは?」

「オレはヴニュ!あんたがくれた材料のおかげで俺史上最高傑作の一振りが出来たぜ!ありがとな!」

「そ、そう言っていただけたのなら、私も渡した甲斐がありました……」


 竜種(ドラゴン)形態のシルフィードをベタベタと触りまくるヴニュとそれに対してどうすればいいのか戸惑っているシルフィード。助け舟を求めるようにこちらを見ているが面白いのでもう少し見ていよう。


「それで、今回はどのようなご用件で?」

「あぁ、シルフィードの素材で作った武器なんだが複数本出来てな。1本は俺達が貰って、残りをシルフィードに献上する事になったんだ」


 満足したのかシルフィードから降りて俺の横に居るヴニュ、その手には4本の小剣を抱えていた。


「必要以上に持っていても面倒な事になるからな、シルフィードが持っているのが一番って事になったんだ」


 竜種(ドラゴン)と言えば財宝だしな、その中にシルフィードの素材を使った武器が有ってもおかしくは無いだろう


「そういう事でしたら、私も無用な災いをもたらしたくはありませんし」

「それじゃあ、ヴニュ……ヴニュ?」


 ヴニュはじっとシルフィードを見つめている、どうしたのだろう。


「あんただったのか、オレに作り方を教えてくれたのは」

「どういうことだ?」

「実はこの小剣を作っている時、どうしても上手く出来なくて悩んでいたんだ。そしたらどこからともなく声が聞こえてその通りに作ったら完成したんだ」

「なるほど、そうなのか?」

「いえ、私はそのような事……」

「あー、でも確かにこんな綺麗な声じゃなかったな、もっとこう、オレのじいちゃんみたいな声だったな!」


 その例えで分かるのヴニュだけだよ。しかし爺さんか、まさかシルヴェストルだったりして。


「それでは、確かに頂きました。次回は是非正面よりお越し下さい。真の緑竜の試練をお見せできますよ」


 先程放置した意趣返しか、あんまりやりたく無いお誘いを頂いた。


フェスは最高だぜ

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