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140 起死回生の一手

メーデーなので初投稿です

 弾かれた小剣が天井に突き刺さる、回収が面倒だな。


「今の技はいったい……」

「『反射(パリィ)』を知らないのか?なんでも跳ね返す万能技だぜ」

「だとしても不可視の刃を防ぐなど……まさか、見えていたのか!」

「いや?フェイントも無いただの振りなら見えなくても分かるだろ?」


 まあ魔力視で見えてはいたが、コイツに言う義理は無い。


「あり得ない……」


 流石に周りの取り巻きが残っていたら危なかったかもしれない。ただの横振りとはいえ、普通の剣の10倍以上の距離から放たれる刃の軌跡は、切っ先に向かうほど速度を増していく。先端の速度なんて人の反応速度では到底捉えきれないだろう。『親愛の絆(チートスキル)』の賜物だ。


「レナード……」

「ゲイリーか、良い手下を手に入れたな」


 縄で縛っていると扉からヴァルシャウトの当主が現れた、今までどこに居たんですか?


「寝室に向かったのだが待ち伏せにあってね。どうやらランベルトも死に至る毒(ヴェノム)だったようだ。今、確保に向かっている」

「ランベルトは死に至る毒(ヴェノム)じゃない。あの正義感だけの無能なんぞ入れただけで組織の利益にならんからな。あいつに情報を流したのは私だ」

「なぜそんなことを……?」

「決まっている。ゲイリー、お前を殺すためさ。そのための準備もした」


 ベルンハルト当主の言葉と同時に床に魔術陣(マジックサーキット)が展開する。発動させているのはベルンハルト……じゃない!魔力(オド)魔術陣(マジックサーキット)の外から供給されている。

 範囲外に逃げようと間に合わず地面に縫い留められてしまった。


「どうかね?最後の一本の能力『超気圧(アンチサイクロン)』の力は」


 扉から入ってきたのはベルンハルト当主だった。え、じゃあこっちで俺達と一緒に押しつぶされてるベルンハルト当主は誰なんだ。


「彼は私の優秀な部下でね。君達も会ったことあるだろう?」


 つまりは影武者って事か、確認したいが動けないのでどうしようも無い。アリスもヴァルシャウトの当主も動けそうに無い。というか当主様側近はどうした。


「今はレナードの側近の相手をしている」


 直接対決する気だったの?この部屋護衛いたよ?


「もういいでしょう。ゲイリー、貴方とは古い付き合いですが……ここでお終いにしましょう」


 識別(マーキング)の保護が付いているのか超圧力の中を悠然と歩いてくる。このままじゃあ全員殺されるな。やりたくなかったが迷ってる暇はなさそうだ。


「当主様、すまんが約束を守れそうにない」

「なにを……まさか?!」


 指先に光の玉を生み出す。それを何とかベルンハルト当主に向ける。


「させるか!」


 俺の魔術に気付いたのか、エメラルド色の小剣を構えて俺に襲い掛かってくる。だがもう遅い。


「『閃光弾(フラッシュボム)』」


 太陽の様な眩い光と鼓膜が破れそうなほどの高音が部屋を満たした。耳を塞ぐ余裕はなかったので爆音を直接聞いてしまって気絶しそうだ。識別(マーキング)の術式を付けるべきなんだろうけど術式を利用して魔術を防ぐ術式が存在する。なので確実に当てたい場合は識別(マーキング)しない方がいいのだ。


「ぐぁっ?!」


 目と耳を潰されたベルンハルト当主が膝を付く、それでも魔術陣(マジックサーキット)が解かれない。魔術なら詠唱中に攻撃されたなら回避するために詠唱を止めたりするのだが、魔術陣(マジックサーキット)魔力(オド)を流し込んでさえいれば発動し続けるので厄介だ。


「くっそ、自分でやっておいてなんだがめっちゃクラクラする」


閃光弾(フラッシュボム)』を見ない様に顔を背けていたので目は死んでいない。周辺を見回せば俺と同じように顔を背けて耳を塞いでいるアリスと、ベルンハルト当主と同じように、もろに食らってしまったヴァルシャウトの当主が居た。


「ふう、何をしてくるのかと思えば……ただの目くらましでしたか」


 ベルンハルト当主が懐から取り出した回復薬(ポーション)を飲む。この世界の回復薬はゲームよろしく即効性があり、飲んでも浴びても効果がある割とチートじみた性能である。


「さて、これであなたの手は尽きましたか?ならば最後は天国に行けるように祈っていなさい」

「口パクパクさせてるところ悪いんだが、さっきの音で耳が死んでるから何言ってる分からん」


 どうせ命乞いしろとかだろう。だがそれをするにはあと一手足りなかったな。突如として割れた窓から光が差し込むと、今度は『閃光弾(フラッシュボム)』とは違い、衝撃の伴った爆発が部屋に居た全員を襲った。


「ぐっ、いってえ……」


 気が付けば部屋の壁や天井が吹き飛ばされ、バルコニーの様になった部屋で先ほどと同じ位置に倒れていた。爆風で飛ばされなかったのは爆発に飲まれている間も『超気圧(アンチサイクロン)』に縫い付けられていたからだろう。


「ユート、気が付いたかい?」

「ソフィー、今日の戦闘で一番ダメージ受けたんだけど」

「まさか窓際に居たなんて思いもしなかったからね」

「動いちゃダメよ、まだ背中の傷治ってないんだから」


 背中からアリスの声が聞こえる。うつ伏せの状態で寝かされているのはそういう事か。そこまでひどいとは一体どのような状態なのだろうか。


「……聞きたい?」

「僕としては聞かないことをお勧めするよ。何せ一番酷い状態だったし」


 どんな惨状だったの俺。


推しが卒業しました

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