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139 潜入

恐竜の日なので初投稿です

 屋敷の正門を守る守衛は俺達を見ると何も言わずに道を開けた。説得済みというわけだ。


「第二部隊は周囲の警戒、第三部隊は屋敷を囲んで出入口を封鎖せよ。ネズミ一匹逃すな」


 ヴァルシャウトの当主の命令により周囲に散らばっていく。


「我らは屋敷内部に突入する、行くぞ!」


 玄関の扉を押すと抵抗なく開いた。開いてなくても蹴破って突入したのだろうが、そうすれば内部に居る兵士や死に至る毒(ヴェノム)の構成員を全員起こす可能性がある。余計な戦闘はやらないに越したことは無い。


「私は奴を捉えに行く、君達は自分の任務を遂行したまえ」

「分かりました、行こうアリス」

「かしこまりました」


 小剣の場所は……二階か、位置は変ってないので執務室だろう。階段を駆け上がり廊下を進む、廊下は暗いが奥に動く光が見える。夜の巡回をしている屋敷の住人だろう。投擲釘(スローネイル)を光に向かって投げる。


「ぎゃっ」


 投げた投擲釘(スローネイル)が刺さった瞬間に、括り付けていた糸を伝って『麻痺雷撃(パラライズボルト)』が相手に流し込まれる。雷魔術は強力だが発動する時に落雷に似た閃光と轟音を発するという隠密性に欠けた欠点を持つ。迷宮(ダンジョン)なら問題ないが、現状では無視できない。そこで触れた物に直接流し込む事によって光と音を消すことに成功した。


「まんまテーザーガンになってしまったな」


 電流によって糸が焼き切れるが、『麻痺雷撃(パラライズボルト)』を受けた相手は痙攣しながら倒れた。

 相手を簡単に縛り上げて目的地に向かう。途中から屋敷がにわかに騒がしくなってきた。相手が気付き始めたか?


「ここだな」

「鍵が掛かっています」


 前に案内された部屋の前にたどり着く、魔力視で見ればまだ小剣は中に有る事がわかる。問題はどうやって開けるかだが。


「流石に蹴破ると大きな音がでるしなあ……」


 その時、笛の様な音が屋敷中に響き渡る。ついにバレたか。


「となると、もう隠密する必要は無いな、『風槌(エアハンマー)』!」


 扉を魔術でぶち破る。吹き飛んだ扉は勢い良く飛び、窓から勢いよく飛び出した。中に入ると無人かと思いきや何人か人がいた。彼等は破壊された扉と窓を交互に見ていた。その中に動揺することなく堂々と椅子に座る人物、ベルンハルト当主だ。


「おっと失礼、ノックが強すぎたかな?」


 兵士の様な身なりと盗賊の様な身なりが大体半々だ。さっきの『風槌(エアハンマー)』を警戒してか広がるように移動している。


「来るならゲイリーが来ると思ったが、まさか冒険者とはね」

「ベルンハルト当主様、あんたが盗んだ物、取り返しに来たぜ」

「取り返しに……?あぁ、コレの事かい?」


 机からエメラルド色の小剣を取り出す当主。間違いない、奪われた小剣だ。


「これは君たちの様な一介の冒険者には不釣り合いの物だ」


 魔力(オド)が高まっていく。右手の小剣に集まると当主は軽く袈裟切りに振るう。嫌な予感がした俺は袈裟切りの軌道から逃げる。


「え?」


 間抜けな声と共に、俺と当主の間に居た盗賊風の男が斜めに切断された。さっきまで俺の居た床に斬撃の傷が出来る。どうやら魔力(オド)を込めると『風刃(エアブレイド)』が発動する小剣らしい。それにしては延長された刃が全く見えなかった。


「ほう、今のを避けますか」

「同じ魔術を多用するんでね」


 とはいえ魔力(オド)の消費量が激しいのか直ぐに2発目を撃ってくる様子はない。代わりに周囲を囲んでいる取り巻きが距離を詰めてきていた。


「雷魔術は周囲にも伝播します、近付いてしまえば撃ってこれないので恐れずに斬りかかりなさい」


 ベルンハルト当主の言葉と同時に襲い掛かってくる取り巻き達。糸付きの投擲釘(スローネイル)を投げる、身体に刺さったり、弾いたが糸が体に引っかかったのが合計で4人、その全員を『麻痺雷撃(パラライズボルト)』で戦闘不能にさせる。しかしまだ数が多い。


「俺が右半分を相手する、アリスは左半分を」

「かしこまりました」


 鎧を着た兵士はそこまで強くないが問題は盗賊風の男たちだ。死に至る毒(ヴェノム)の関係者、それもトップの周囲の居ることから、かなりの手練れであることが分かったがこちらの攻撃が全く当たらない。鎧を着こんだ兵士を盾に陰から攻撃してくるからかなり厄介だ。しかも後ろには再び魔力(オド)を貯め始めた当主が居る。


「一気に決めるか、アリス!」

「はい!」


親愛の絆(チートスキル)』を発動する。斬りかかってきた兵士の攻撃を受け、相手の顔面に向かって盾から『風槌(エアハンマー)』を打ち込む。陰から這いつくばるように迫ってきていた男の脇腹を狙った一撃を剣でいなし、顎を蹴りぬく。アリスも殺すことなく腱を斬りつけて武器を持てなくしたりしている。順調に敵の数を減らしていたが当主が再び動いた。


「これでお終いです」


 当主が剣を横に構えた。コイツ全員まとめて切り殺す気か!


「させるか!」


 周囲の人間を吹き飛ばして盾で受ける準備をする。その行動に当主は邪悪な笑みを浮かべながら振りかぶった。まるで勝利を確信した笑みだ。


「……ここ!『反射(パリィ)』!」


 虚空に向かって盾を振ると、甲高い金属音と共に青白い火花が盾から飛び散った。


「な?!」


反射(パリィ)』を食らって大きくよろけた当主に一気に詰め寄り小剣を弾き飛ばした。


雨ニモマケズカゼニモマケズ推しが引退表明は負けそう

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