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138 突撃

大仏の日なので初投稿です

 ヴァルシャウト家のメイドさんに連れられて屋敷に転移する、ソフィーはこの魔術に興奮してメイドさんに問い質していた。


「ようこそ冒険者パーティ『迅雷』諸君」


 その名前どこで知ったんだよ、いつの間にか海神祭での仮称が定着しつつある。


「そうかい?雷魔術を使う君達にぴったりだと思うが」


 そう言われてもあの場で適当に言った名前だしなあ。まあパーティ名を変えるかどうかは追々決めるとして、今日の目的はお喋りではない。


「そうだな、では本日の作戦について説明を行う、地図を」

「こちらです」


 部屋の中央に置かれた長机に大きな羊皮紙が置かれる。見ると屋敷の見取り図のようだ。


「これはベルンハルト家の見取り図だ。今から3時間後にこの屋敷へ侵入を開始する」


 ヴァルシャウトの当主様は淡々と作戦の説明を行っていく。どうやら前に紹介されたベルンハルトの跡取り息子が屋敷の扉を開けてくれるらしい。そこで全ての扉から一気に突入して出入口をすべて制圧、隠し通路の出口にも兵を待機させる徹底ぶりだ。


「目標はベルンハルト当主の身柄確保、あるいは殺害だ」


 ベルンハルトとヴァルシャウトは古くはこの街が出来た時からの親交のある間柄らしい。ご子息も親友の間柄らしいし当主であるこの人もベルンハルトの当主とは仲が良いのではないのだろうか。


「さて、『迅雷』の諸君についてだが、君たちの求める物は2階の執務室にある……そうだったね?」

「はい、彼がどこか別の場所に隠していない限りそこにあると思われます」


 まあ場所が変わっていようが屋敷内にあるなら探せるだろう。魔素(マナ)の痕跡は見えるモノでも消せるモノでもない。


「よろしい、では私達と共に正面からの突入だ」

「もしかして当主自ら出るのですか?」


 相手は死に至る毒(ヴェノム)だ、こちらに死人が出ないとは限らない、そのような場所に当主が出張ってきたら周囲の兵士も士気は上がるかもしれないが、同時に当主の警護に戦力を割く必要が出てくる。


「御心配には及びません。ヴァルシャウト家の当主は強くなければ務まりません」

「そうは言ってもなあ」


 メイドさんがそう言っても戦いにおいて絶対は存在しない。最低でも屋敷の一部を制圧して指令部として立てこもって指示をしてくれた方が良いんじゃないのだろうか?


「ふむ、迅雷のいう事も一理ある。何せ君は私の実力を知らないのだからね。そこで提案なのだが、一手合わせてみないかね?」

「手合わせですか……?」


 メイドさんを見るが止める気配は無さそうだ、主人の強さを疑っていないってことなのだろう。まあ、同行者の強さを知っておくに越したことはない、軽く合わせてみるか。


「分かりました、ではどこか広場に……」

「ご主人様!」


 訓練場や試合に適した場所が無いか聞こうとメイドさんの方を振り向いた瞬間、アリスが俺の後ろに向かって飛び出してきた。その行為でごく僅かな殺気が後ろに居る事にようやく気付いた。


「君も良い従者を持っている、出なければ君は首から血を流しながら床に倒れていただろう」


 振り向けば当主が逆手に持っていたナイフをアリスが防いでいた。剣を抜こうとするが当主はこれ以上やる気はないのかナイフを仕舞っている。


「貴族様にしては不意打ちするんですね」

「コレが我が家の流派でね、悪を消し去るためにはどのような事でもする。さて、私の実力分かってもらえたかな?」


 確かに全く気が付かなかった。相当な腕前なのだろう。これなら最前線に出ても死にはしなさそうだ。


「分かりました。一緒に付いて行きます」


 俺が止めたところで決定は覆りそうにないしな。


「諸君、今宵この一戦で死に至る毒(ヴェノム)との長き因縁に決着がつく。我が家の盟友であるベルンハルト家がかの毒に犯されてしまったが、毒を取り除いたとき、かの家が再生することを私は信じている。決して一人たりともとり逃さぬよう死力を尽くして欲しい」


 周囲のから静かながらやる気の声が上がる。夜の街中ではなく昼間の戦場なら気合の入った鬨が聞こえていただろう。時間が迫ってきて俺達はヴァルシャウト家の屋敷を出てベルンハルト家の屋敷に向かった。ソフィーとクレアは出発と同時にクー助に乗って闇夜を飛翔中だ。


「すばらしいな、アレはどれ位飛べるのかね?」

「そうですね、あの二人を乗せて程度なら一晩中飛び続けられると思いますよ」

「ふむ、是非我が家にも欲しいな……従魔師(テイマー)擬竜種(ワイバーン)を使役できないか聞いてみるか」


 クー助は擬竜種(ワイバーン)ではないが、まああのサイズの竜種(ドラゴン)の姿をした魔物なら擬竜種(ワイバーン)と思っても仕方ないか。


「彼女たちを上空に待機させてどうするのかね?」

「もしもの時が有ったら、魔術で空爆……上空から魔術を撃ってもらい、屋敷に穴を開けます」


 その混乱に乗じて脱出するか敵を倒しきるかはその場の状況次第だ。


「なるほど、理解した。味方に当ててくれなければ問題ない」

「そこは運次第かなあ」


 いくら識別(マーキング)をつけていても、炎の熱や魔術によって吹き飛ばされた瓦礫は防ぎようがないのだ。


「分かっているさ……そろそろ到着だ。準備はいいかね?」


 全員が静かにうなずく。屋敷の窓を見ると小さな光が点いたり消えたりしている。蝋燭の火を手で遮っているのだろうか。


「当主様、内通者より合図です」

「分かった、ただいまよりベルンハルト家当主の確保及び死に至る毒(ヴェノム)の殲滅を行う。全部隊、突入!」


 この街の今後を決める戦いが今幕を開けた。


月初めにライブ、月末にもライブ

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