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137 暗躍の夜

さくらの日なので初投稿です

 転移魔術で連れてこられたのはどこかの一室だ。装飾からして貴族、このメイドの主人であるヴァルシャウト家の屋敷とみていいだろう。


「ゲイリー様、お客様をお連れしました」

「うむ」


 メイドが部屋の隅に行く、あそこがメイドのポジションなのかな。正面に向き直ると窓辺に立つ男性。白髪混じりの男性は鋭い目で俺を真っすぐ見つめていた。こういうのって呼び出されたとはいえ格下である俺から自己紹介すべきだよな。


「初めまして冒険者ユート、私がヴァルシャウト当主、ゲイリー・グラハム・ヴァルシャウトだ」

「え、あっはい、ユートです。この街で冒険者をしています」


 向こうから挨拶してくるとは思わずちょっと戸惑ってしまった。


「まずは急な呼び出しに応じてくれたことの感謝と、仲間への睡眠魔術を使用したこと許してほしい」

「大丈夫です、敵意は感じませんでしたから。そんな事をするほど自分に会いたい用件とは何でしょうか?」


 偉い人間に会うと丁寧な言葉遣いになってしまうな。これが(元)社会人の性か。


「この街には病が巣食っているのは知っているね」

死に至る毒(ヴェノム)の事ですね」

「そうだ、古くは初代イースロン当主がこの街を興した時から存在すると言われている」


 イースロンとはこのイースガルドを治める大領主だ。そんな古くから居るんだ。


「そして我がヴァルシャウト家とベルンハルト家はこの街の平和を任された最も古き貴族でもある」

「ベルンハルト家って……」

「そう、かの家は死に至る毒(ヴェノム)の本体と言ってもいい。我が家の悲願、死に至る毒(ヴェノム)の根絶のチャンスが来たというわけだ」

「それに俺達も参加しろと?」

「戦力はあった方がいい。それに、君達も大切なものを奪われたのだろう?」


 影打の事だろう、どこで漏れたのだろうか。知っているのは俺達4人(と1匹)にエリちゃん、ヴニュ、それとテンチョーだ。この中だとテンチョーが一番怪しいな。


「我が家は裏で暗躍するのが得意でね、死に至る毒(ヴェノム)に関わる事は事細かく調べているのだ」

「それで俺達がやつ等を追っている事と、その理由を知ったと」

「先代の冒険者ギルド長の件もあったからな、調べやすかったよ」


 先代、副ギルド長の汚職関係か。アレも死に至る毒(ヴェノム)関係だったの。


「まあ影打の奪還は頭を悩ませていた所だ。協力出来るのなら自分達としても有り難い」


 俺達は影打の回収、向こうは死に至る毒(ヴェノム)の根絶。最終目標は違えど手段は一緒だ。


「しかし貴方も貴族とはいえ……いえ、貴族だからこそ他人の家を襲うのは危ないんじゃあないですか?」

「問題ない。我が家は大領主であるイースロン家より特権を賜っている」

「特権?」

「簡単に言えば我らヴァルシャウト家はイースガルドに害を及ぼすと判断した場合に限り、独自に処罰を行えるモノだ」


 一歩間違えたら乱用してそのまま家系ごと処刑されそうな権利だな。しかしこの家が生きているという事はそんな事を今まで一度もしてこなかったのだろう。


「しかしなぜ死に至る毒(ヴェノム)の正体がベルンハルト家と気付いたんですか?」

「……実は昔からベルンハルト家の動向が怪しい事は気が付いていた。しかし決定的な証拠も無く、古くから共に街を護ってきた仲間を疑いたくなかった、しかし彼が持ってきてくれたのだ」

「彼?」

「入ってきたまえ」


 メイドが扉を開けると、俺と同い年位の青年が現れた。


「彼はランベルト、私の息子エンツォの友人であり、ベルンハルト家の次期当主でもある」


 つまり敵側のご子息であると、大丈夫なのか?


「彼は家と死に至る毒(ヴェノム)の関係を知って私達の協力を申し出てくれたのだ」

「俺は、この街を守る使命がある家が、死に至る毒(ヴェノム)に侵されているのを見過ごすことはできない!たとえ一族に裏切者と罵られようとも一族の使命は俺が守ると決めたんだ!」


 なんかすげえ熱血漢が出てきたな、夜中なのにうるせえ。


「彼が持ってきた情報を元に調べた結果、確信が持てたわけなのだ」


 証拠の裏どりも調査済みと。


「分かりました、自分達も協力しましょう」

「ありがとう、作戦は3日後だ、時間になれば今日のメイドを向かわせる」


 その後、メイドに転移魔術で宿泊している宿に飛ばされると部屋の外に居た梟の勇者と共にメイドは帰って行った。

 翌朝、事情をみんなに説明すべく誰もいないであろう迷宮モドキ(いつもの場所)に向かった。


「本当に信用できるの?」

「五分五分ってところかな」

「重要なのは信用ではくて利害が一致している事だからね」


 問題はベルンハルト家にどれだけ戦力があるかだ。こちら側はヴァルシャウト家の私兵と梟の勇者、それと俺達だ。今回はスピード勝負なので俺とアリスだけが屋敷に突入する。


「あたしとソフィーはどうするのよ?」

「クー助に乗って屋敷の上空で待機してくれ、もしもの時はソフィーの魔術で屋敷の一部を吹き飛ばしてその隙に逃げる」


 これは実際には本当の最終手段だ。味方の魔術に当たらなくても吹き飛んだ瓦礫は当たるからな、敵味方双方に甚大なダメージが入る事になる。


「まあ、何がどうなっても俺達のやることは影打の回収だ。それさえできれば目的は完了する」


 準備をしながら待つ事3日後、いつもなら寝床に就く頃になってメイドが現れた。


「時間になりました」

「分かった、みんな行こう!」


 こうして影打をめぐって長い夜が始まろうとしていた。


RWBYアニメ化おめでとうございます

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