表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
136/303

136 来訪者

春分の日なので初投稿です

「ユート、君は気付いていたかい?」

「あぁ、影打だろ」

「何の話よ?」

「さっきの貴族様の部屋にシルフィードの影打があったんだよ」


 机の中にシルフィードの魔力(オド)を纏った小剣が入っている事に気が付いたのは、魔力視のスキルを使っていたからだ。ここ最近賞金首を捕まえていたからか、他の賞金首や素行の悪い連中にお礼参りされる事が多かったので普段の生活にでも魔力視を掛けていたのだ。


「そのおかげで机の中に影打が入っているのが分かった」

「なんで言わなかったのよ」

「もし彼等が死に至る毒(ヴェノム)だった場合、それを指摘してあの場が敵地のド真ん中になったら流石に厳しいからな」


 仮にそれで戦闘になり影打を回収、脱出したところで今度は騎士団に追われるだろう。相手は世間から正義感溢れる清い貴族と評判な人物だ。冒険者と騙った賊が入ったと騒がれたら、こちらにそれが嘘だと大衆に訴える手段を持ち合わせていない。


「なら一回あの場から脱した後、後日回収しに行った方がいいだろ」

「回収って、何か手段があるのかい?」

「勿論ある、と言いたいが無いんだな」


 困った困った。


「でしたら、一度エリちゃん様に相談するのは如何でしょう?」

「エリちゃん?」

「ワタシの知っている人物でこの街の事情に一番詳しい方だと思います、それに小剣のシルフィード様の事もご存知です」


 確かに友好関係のある人物で一番地位のある人物かつ、俺達の事情にも詳しい。何か手を考えてくれるかもしれない。


「なるほど、彼女なら緑竜の事に関して裏切るような事はしないだろう」


 エリちゃんとシルフィードが会話していた時の光景を思い出す。普段の飄々とした姿とは変わって、同年代の友人と話すようにしていた姿は、もしかしたらそちらがエリちゃんの素なのかもしれない。

 宿場に戻る予定だったが冒険者ギルドに急いだ。


「なるほど……かのベルンハルト家が死に至る毒(ヴェノム)の関係者だったとはね」

「まだ決まった訳じゃないけどな、もしかしたらあの影打だって死に至る毒(ヴェノム)から回収したものかもしれないし」

「それは無いと思うよ」

「断言する理由はなんだい?」

死に至る毒(ヴェノム)には過去にいろんな物が窃盗に有っている。中には貴族様の家宝が盗まれた事例もある、そして全て持ち主の手元に直接戻ったことは無い」

「つまり死に至る毒(ヴェノム)が盗んだ物がベルンハルト家に有る事自体があり得ないと?」

死に至る毒(ヴェノム)の関係者でなければね」


 うーん、まさか協力を仰ごうと行ったところが敵地だったとは。


「ユート君、これからどうするのだい?」

「そうだな、影打の場所は分かったんだ、後は取りに行くだけだな」


 とはいえ急にやり方を変えると怪しまれる可能性がある。何か手段を考え付くまではいつも通り賞金首を狩っていくことにするとしよう。

 その日の夜、ふと人の気配で目を覚ます。寝息は全員分聞こえる、つまり俺達以外の人物がこの部屋に居る。罠として用意した魔術陣(マジックサーキット)は起動していない。


「夜分遅くに失礼いたします。私はヴァルシャウト様に仕えるメイドでございます」

「貴族様のメイドがなんで一介の冒険者の寝床に何の用だい?」


 俺が起きたのに気が付いたのか挨拶をしてきた。ヴァルシャウト家、エリちゃん曰く良くない噂が絶えない貴族だ。最初はこちらが死に至る毒(ヴェノム)と繋がっていると考えていたが、ベルンハルト家が黒と確定した今、この貴族を探る理由も無かったのだが、一体何の様だろうか。


「我が主、ゲイリー・グラハム・ヴァルシャウト様がユート様をお呼びです」

「内容は事前に聞かせても?」

「すみません、私は伺っておりません。代わりにこちらを」


 差し出してきたのは封筒だ、受け取るとメイドは扉の方を向いた。見る気はないという事なのだろう。

 封を切って手紙を見る。中には僅か1文だった。


『竜の力を取り返したくないか』


「……なるほど」

「如何しましょう」

「分かった、行こう」


 隣で寝ているアリスを起こそうと揺するが目を覚ます気配がない。深い眠りについているようだ。


「すみません、他の方々には魔術で深く眠らせていただきました。一人でお連れしろとご命令ですので」

「最近俺達狙われているんだが?」


 賞金首を捕まえまくった影響で。


「承知しております。ですので、こちらの方をお連れ様の護衛に就かせて頂きます」


 陰から現れたのは全身黒ずくめの男、まったく気配がしなかった。


「彼は梟の勇者、ヴァルシャウト家の協力者です。お連れ様の護衛は彼が担います」

「勇者……」


 確かに強い、気配で分かる。このあたりの賞金首で彼に敵う者は居ないと断言できるほどに。むろん今の俺もだ。彼の傍なら確かに安全だろう、人質ともとれるが。


「それでは、参りましょう」


 メイドが床に手を添える。すると魔術陣(マジックサーキット)が姿を現す。


「あんた、魔術師なのか」

「独学で学んだ魔術とも呼べないモノですが」


 よく言うぜ、陣の呪文(スペル)からして迷宮(ダンジョン)の入口にある転位門(ゲート)に類するモノだ。

 メイドが魔術陣(マジックサーキット)に乗る、なるほどこれでこの部屋にも来たのだろう。これなら扉や窓の罠も発動しない。今後はこういう魔術に対して防げるような事をする必要があるな。


「ところで着替えていい?」


ライブは健康によい

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ