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133 死合

脱出の日なので初投稿です

 侍との死合を初めて数分、俺は割と窮地に立たされていた。


「こいつ、脚が速い……!」


 こちらの攻撃を全て回避し、確実に背後から切りかかってくる。正面でも一瞬で後ろに回ってくるのはどんな速度で移動しているんだ。


「……お主も、某の太刀筋をよくよんでおる」

「そいつはどうも、ついでにコイツもどうぞ!」


 距離を話して左手で指を鳴らす。『瞬間爆破(ソニックボム)』を侍の直上で爆発させる。侍は今までの攻撃が刀の斬りかかりのみで投げ物を持っているようには見えない。刀の範囲外から攻撃するのが確実だろう。


「卑怯っていうかな」

「……そうは思わん」


 後ろから聞こえてきた声に思わず振り向きざまに横薙ぎをする。そしてそれが失敗だったと確信したのは、剣の切っ先が侍の喉を皮膚1枚しか斬れなかった時だ。


「……次元流上段の型、『頭蓋割り』」


 両手で刀を天高く掲げた状態で一歩踏み出す侍、盾で防……!


「ご主人様避けて!」

「!!」

「……ちぇすとおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 侍が刀を振り下ろすと落雷の様な轟音が鳴り、刀の長さ以上の刀傷が地面に刻まれていた。


「……一対一(サシ)とは互いの全てを出し合うもの、魔術だろうが実力の内だ」

「そういってくれるのは有り難いが、ソレ食らったら頭蓋どころか股まで裂けるだろ」

「……今の間合いを避けるか」

「かなりギリギリだったよ」


風槌(エアハンマー)』を自分自身にぶち当てて、無理やり体を横に吹っ飛ばしたのだ。おかげで肋骨折れたけどな。


「しかしこれでお前の速さの理由が分かったぜ」

「……ほう?」


 先ほどから異常なまでの速度で移動はしているがそのまま斬りかかる事はしてこなかった。知覚できないほどの速度なら刀を持って通り過ぎるだけで俺を倒せたはずだ。


「つまりその移動方法、お前自身が移動しているわけじゃなくて何かに移動させてもらっているな?そしてその何かは、腰の影打だ」


 正直『瞬間爆破(ソニックボム)』を正確に侍の真上に出すために魔力視のスキルを使ったのが幸いした。

 爆発の瞬間、侍の腰にシルフィードと同じ色の魔力(オド)が集中したのが分かったからだ。


「なんで影打を使わないのかと思ったけど、その状態で既に使っていたんだな」


 移動に特化した能力なんだろう。集まった瞬間に見えなくなったのは高速で移動しているのではなくて、ワープしていると言った方が近いのかもしれない。


「……某は魔術に疎いのだが渡してきた者も似たようなことを言っていた……それでどうする?謎解きをしたところでこの試合には勝てんぞ」

「それは今から考える」


 どうやって攻撃しても背後を取って来るのをどうやって対処するか。攻撃して後ろに回られた瞬間に背後を攻撃するか?いや、先ほどそれをやって真っ二つにされかけたではないか。


「……来ないのならこちらからいくぞ」


 正面から切りかかってくる侍。


「ちょっとは考える時間をくれよな!」


 先ほどの一刀両断の攻撃はタメが必要なのか盾で防ぐことのできる威力だ。とはいえ下手に斬りかかれば背後に回り込まれる。というかこの侍、影打を使わなくても強いんだが!


「というかなんでそんなポンポン跳んで魔力(オド)が切れないんだよ!」

「……確かにこれを使うと気が持っていかれるがそんなもの気合でどうとでもなる」


 魔力(オド)の消費を気合で何とかするって何?いや、落ち着け。魔力(オド)は大気中の魔素(マナ)を体内に取り込んで自分の属性に変化したものだ。近接職の人間はその魔力(オド)を無意識に肉体強化に使用していたりする、それが気だ。近接職の言う気や闘気(オーラ)はその実、魔術師の魔力(オド)と同じものだ。体内で使うか体外で使うかの違いしかない。


「だとしてもそこまで使っても魔力(オド)が切れないなら魔術師に向いているんじゃねえの?」

「……今は剣の修行の身、某の力量に壁を感じた時にはそうしよう」

「はっ、その時は手伝ってもいいぜ」

「……ふ、それは楽しみだ」


 盾側に振ってきた刀を『反射(パリィ)』で返す。態勢が崩れた瞬間に斬りかかるが消えてしまった。


「からの……後ろ!」

「……っ!」


 消えるのは分かっていたので剣の軌道を変えて背後を横薙ぎする。甲高い金属音を響かせて剣と刀がぶつかり合う。どうやら連続で跳躍(ワープ)することはできないようだ。ならアレが使えるかもしれない。


「いくぜ、これで仕舞だ」


 左手の指を鳴らす。すると『瞬間爆破(ソニックボム)』が侍の四方で地面を爆発させ、土煙を巻き上げた。


「……この程度でどうとでもなるとおもうてか!」

「ただの布石だよ!」


 爆発のドサクサに隠れて『土石槍(アースグレイブ)』 。侍を囲み、俺自身は地面から生えてくる勢いで飛び、侍の頭上から攻める。


「……何度も同じ手を」

「どりゃあ!」


 斬りかかる瞬間に消える侍、今だ!


「『風槌(エアハンマー)』!」


 剣の切っ先と両足のつま先から空気の塊を射出し、その反動で独楽の様に回転、限界まで上体を反らして上を見るような状態で着地する。石仮面で人間をやめたいじめっ子のポーズだ。


「……なに?!」

「やっぱりな……その影打、移動できる場所は固定されているようだな!」


 侍が現れたのは空中、斬りかかって消えたタイミングでは俺の背中は空を向いていた。その状態で俺の背後に移動すれば、空中に放り出されてしまう。


「いくぜ、術技(アーツ)音速突衝(ソニックスラスト)』!」

「……ぬっおおおおおおおおお!!!」


 術技(アーツ)を駆使して突き上げられた剣は、空気の壁を切り裂き、音を置き去りにしながら侍を貫いた。


2マジ

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