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132 流浪の用心棒

雨水なので初投稿です

「賞金首を捕まえたので確認お願いします」

「き、今日もですか?」


 捕まえた指名手配の男を簀巻きにして冒険者ギルドに持っていく。これで48人目、1ヶ月間、毎日一人以上捕まえては影打を持っていないか持ち物検査をしている。

 しかし影打を持っている者はだれ一人としておらず。街中の賞金首が減っていく以外まったく進展していない状況であった。


「一昨日の賞金首が一斉に来たときは期待したんだがなあ」

「連携も取れていたし、普段から集団で犯罪行為を働いていたんだろうね」


 貧困街を中心に探しているので捕まえた賞金首は大半が中級の賞金首ばかりだ。犯行内容も殆どが強盗や空き巣ばかりで殺人を行っている者は少数だった。


「やっぱ上級の賞金首を捕まえたいよなあ」

「何物騒な事言ってんだよ」


 後ろから声を掛けられて振り向くと筋肉質の男が居た。確か鋼の肉体(ビルドマッスル)の……。


「バイセさん、どうかしましたか?」

「お前達に客が来たからな、ほらあそこだ」


 バイセが入口の方を指差す、そこには和服で身を包み、腰には刀を差した侍風の男が居た。それはそれとして、鋼の肉体(ビルドマッスル)の人は事あるごとに筋肉を見せつけるポーズをとるのはなんでだろうな。


「見たことない男だが、知り合いか?」

「いや、初めて見るが、目的はわかる」


 何せその男の腰には刀の他に脇差の様にエメラルド色の小刀を付けていたのだから。


「そうか、随分な実力者だが死ぬなよ」


 見送られながら侍の所へ向かう。これでいきなり切られたらどうしようか。俺の後ろにアリスが控えソフィー、クレア、クー助と続く。


「……用件はわかるな」

「お前の腰に付いてるものだろ?」

 男は俺の言葉を聞くとそのまま外に向かった、ついて来いという事だろう。敵に背中を見せるとは余程の自信があるのか案外抜けているのか。こういう時に付いて行かなかったらどうなるんだろうな。

 たどり着いたのは街の外、街道から外れた草原だった。


「……ここなら街道からも見えない」

「壁上から見えるんじゃないか?」


 確かに丘が視線を遮って見えないだろうが、街を守る外壁はここからでも見える。見張り塔で周囲を警戒している兵士に見つかる可能性は十分にある。


「……それは既に手筈済みだ」

「なるほど」


 買収済みという事か。


「それで?まさかあんた一人って事は無いんでしょう?さっさと呼んだらどうなの?」

「……某は一人だ、周りに伏せている者も居ない」

「君のいう事をそのまま信じるのは流石に無理なんじゃないかな?」

「……ならば魔術にてさーちなる魔術を使うがよい」

探査(サーチ)か」


 ソフィーの方を見ると、ソフィーは杖を掲げ魔術を発動させた。コーンと音叉の様な音が鳴る、しばらくしてソフィーが掲げていた杖を下す。


「周囲100mには人らしき敵意は無かったね」

「本当に一人なのか」


 となると、こちらが4人(と1匹)に対して向こうは1人、どうやら余程の自信があるらしい。


「……さて、全員でかかって来るがよい。と、言いたいが、少女を斬るのは某の主義に反する。お主との一対一(サシ)を希望する」

「それを俺が受ける理由が無いな」

「……もちろんタダとは言わん、お主たちが追っているコレについての情報をやろう」


 そういって腰のエメラルド色の小刀を叩く。やはり影打の一つか。


「……それにこの小刀も勝ち負けに関係なくお主たちに渡そう」

「ふむ、それなら……」

「ねえ、コイツを全員で袋叩きにすれば情報も影打も手に入るんじゃない?」


 いやまあそうなんだけどね?


「そもそも、なんで君はそんな回りくどいことを?影打(ソレ)を渡してきた依頼主はボク達を殺すように言ってきたんじゃないの?」

「……確かに依頼主はそなた達の暗殺とコレと同じ色の武器を回収しろとの事だったが」

「じゃあなんで」

「……気に食わなかったからだ」

「気にくわ……」

「……気に食わなかったので仕事受ける振りをしてこの小刀をそなた達に渡そうと考えたのだ」

「あんた面白い奴だな、そのまま俺達にそれを寄こしてもいいんじゃないか?」

「……だが、お主を見て考えが変わった。お主相当の手練れをお見受けする。一人の武士として手合わせ願いたい」


 この侍面白いかもしれない。


「分かった、そういう事なら一対一(サシ)の決闘を受けよう、決着の基準は武器を落とすか降参したらでいいか?」

「……かたじけない」


 3人に下がるように指示して男の前に立つ。


「……某は日高御国は志間逗の分家、志名野光国と申す」

「俺は万里結人。生まれも育ちもここではない遠くの場所から来た今はただの冒険者だ」

「……では万里結人、いざ尋常に……勝負!」


 言葉と同時に真っすぐに前進してくる侍もとい光国、そこに向かって投擲釘(スローネイル)を投げる。


「……はっ!」


 腰の刀を一瞬で抜き投擲釘(スローネイル)を切り落とす。随分な曲芸だがその隙に背中側に回り込んだ。光国は刀を左側に差していた。つまり彼は右手で刀を振るう。であれば左側に回り込めば背中に回り込むのは可能だ。仮に彼の右腕を切り落としてもクレアが再生できる。これで勝負ありだ。


「これで終わりだ!」

「……甘い!」


 光国の右腕に振り下ろした剣は空を切った。どこに、と考える前に後ろから殺気を感じてカエルの様に地に伏せると、先ほどまで俺の首のあった所に刃が通り抜ける。前に飛び込むと同時に地面に『風槌(エアハンマー)』を放って反動で距離をとる。あの一瞬で後ろに回り込むなんてどういう反射神経と運動性能してるんだ。


「あんた強いな」

「……自慢ではないがコレ一本で食っているのでね」


 楽しい死合になりそうだ。


4月23日24日は幕張メッセで会おう

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