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129 消えた悪意

3分間電話の日なので初投稿です。

 緑色の刀身が窓からの光を反射して鮮やかなエメラルド色に輝く。


「名付けて真・緑竜小剣ジルヴェストルだ」

「ジルヴェストル?なぜその名前を」

「オヤジの作った小剣がその名前だからだ」


 あぁ、先代の名前をそのまま武器の名前にしたのか。となると……


「その名前じゃないな」

「あん?」

「この武器を作るために素材を提供してくれた竜種(ドラゴン)の名前はシルフィードだ」

「ふうん、なるほどな。じゃあこいつの名前はジルヴェストルじゃなくてシルフィードだ」


 小剣ジルヴェストル改めシルフィードは先ほど貰った俺の剣の様に見た目よりもずっと軽い。もしかしたら投擲釘(スローネイル)よりも軽いんじゃないだろうか?


「軽さもだがこいつの真骨頂はそんなもんじゃないぜ」


 ちょっと貸してみなと手を差し出されたのでヴニュに小剣を渡す。受け取ったヴニュは剣を前に構える。


「なんとこいつは魔力(オド)を込めるだけで魔術が使えるんだ!」


 ヴニュが小剣を両手で握って力む。するとシルフィードが仄かに光り出す。


「んんんんん~……どりゃ!」


 光は次第に強くなった後、ヴニュの掛け声と共に風が吹き荒れた。棚に飾られた武器や防具を巻き込みながら壁に大きなヒビを作り出した。


「すげえ、今の『風槌(エアハンマー)』か?」

「はぁ、はぁ……おう、魔術の才能がないオレでもこれぐらいの魔術ができるんだからお前達ならもっと凄いのが出せると思うぜ」


 確かに凄い特性だ、ヴニュの魔術の才覚がどの程度かわからないが『風槌(エアハンマー)』一つであそこまで息切れしているのでまあまあに低いのだろう。そういった者が魔術を行使出来るという事が凄い。習熟に時間が掛かる技術を道具側がサポートすることで誰しもが扱う事が出来るというのは、戦闘に置いてどのように有利になるか人類がクロスボウや鉄砲を作ったことでも証明している。


「まあ、問題は量産できないって事だな」

「おい、なんだ今の音……って、なんじゃこりゃあ~?!」

「あ……」


 先ほどの魔術で穴が開きかけた店の壁を見て絶叫するテンチョー、その後ヴニュと一緒にしこたま怒られてしまった。とりあえず修理費を出すことで許しを得た。


「という事でいつもの迷宮(ダンジョン)モドキに来ましたよっと」

「前に来たのは魔術学園以来でしたからね」

「ここがその場所か……なるほどね」

「どうかなされましたかソフィー様?」

「わずかにだけどクーちゃんの魔力(オド)を感じるんだ。ユート君が過去に黒い卵の欠片を見つけたのもここなのだろう?」

「あぁ、もしかしてとは思ったけど、ここがクー助が生まれた場所なんだと思う」


 卵の欠片がクー助のものだとすればここで生まれたクー助は単独でここからサウスガルドまで飛んだことになる。迷宮(ダンジョン)より弱いとはいえ魔物(モンスター)もいるし野生動物もいる。そんなところを生まれたてで移動できるとは流石の竜種(ドラゴン)と言ったところか。


「ところで、その小剣は誰が装備するの?」

「そうだな、クレア持ってみるか?」

「あたし?いいわよ、そもそもあたしの聖女の体質で魔術との相性悪いのよ」


 そういえばクレアはそのせいで道具箱(アイテムボックス)を習得できなかった。その代わりに別の科目で卒業資格を獲得していた。


「それもそうか、ソフィーはどうする?」

「ボクはそれを使うより自分で唱えた方が速いからね。そもそも剣術は習っていないんだ」

「となると、やはりアリスが持つのが一番だな」

「よろしいのでしょうか?」

「俺は剣と盾、それに魔術と投擲釘(スローネイル)で手数は十分あるからな、これ以上武器を増やしても腐らせるだけだし、サイズ的にアリスなら使いこなせるだろう」


 小剣の大きさは、アリスが持つダガーの倍くらいだ。普通の魔鉄ならば重くて両手で持たないと振り回せないだろうが、投擲釘(スローネイル)より軽いこれならばアリスの戦闘スタイルを邪魔することもない。


「それでは、預からせていただきます」


 小剣を手渡す。アリスは鞘の両端を紐で結び、肩に掛けた。アリスの体格だと普通の片手剣サイズに見えるな。跳ねたり鞘から抜刀したりして感覚を確かめるアリス。アリスは道具箱(アイテムボックス)を習得できているが詠唱を唱えないと術を行使できない。戦闘中には使えないので使うなら出しっぱなしになる。道具箱(アイテムボックス)を無詠唱で使えるのは俺とソフィーのみだ。


「ふむ……この程度でしたら戦いに支障は無さそうです」

「それはよかった。街中では道具箱(アイテムボックス)に仕舞っておいてくれ。エリちゃんやテンチョーの話じゃあ、国宝級の代物らしいからな」

「承知しております」


 その後、小剣の威力を試したりしてこの日は終わった。翌日、冒険者ギルドに向かい依頼(クエスト)が無いか確認しに向かったがエリちゃんに呼ばれて、またしても2階に向かった。


「君たちはいつも厄介な事に巻き込まれてるねえ」

「その厄介の半分はエリちゃんから貰っている気がするけど?」

「まあそれはそれとして、君達が捕まえた誘拐犯が大狼のロウガというのは知っているね?」

「あぁ」

「そのロウガが、今朝死んだ」

「処刑されたのか、随分と早かったな」


 もっとアイツから魔石のルートやこの街に侵入できた手段とか聞き出すものかと思ったが。


「処刑じゃない、殺人だ」


 しかし、返ってきた言葉は予想外のモノだった。

夏だったり冬だったり沖縄だったり岩手だったり幕張だったり

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