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128 夜明け

禁酒の日なので初投稿です

 建物が燃え広がる中、俺は『魔力視』のスキルを使い怪しい物がないか見渡す。しかし炎のせいか上手く見ることが出来なかった。ヴニュはまだ気が付く様子はない。


「早くしないと爆発しちまうな……アリス、『再結合(リコピレイション)』だ」

「畏まりました」


親愛の絆(チートスキル)』を使ってスキルの底上げをする。『魔力視』から『天素操作(エーテルコントロール)』に強化された目で再び家中を見渡すと、上部に魔力(オド)が集まっている。


「あった、しかしあの魔力(オド)の動き、上に行く階段を探す間に爆発しそうだ」

「でしたらすぐに出口に向かいましょう」


 そうだな、と言う前に集まっていた魔力(オド)が急激に火属性に変換されていくのが分かった。


「爆発する伏せろ!」


 ◇◇◇


 奴らを閉じ込めた建物から巨大な火柱が立ち上がるのを遠くから見ていた男、ロウガはその光景に笑いをこらえることが出来なかった。


「はーはっはっ!俺様を舐めるからこういう事になるんだ!」


 昔の仲間(山賊)の伝手を使いサウスガルドに侵入、裏の人脈を駆使して『業火爆砕(エクスプロージョン)』の魔石を入手するまでに至った。それもこれも俺様に土をかけたからだ。さあて、あとはあいつらの残った仲間だが、情報屋によれば聖女と魔術師が居たはずだ。


「聖女にこの腕を治させてその後は奴隷にするか、魔術師は反抗心が無くなるまで調教してから売り飛ばせば高く売れるぞ」


 ガキには興味無いがそういう趣味の連中は沢山いる。奴隷は国が禁止してくれたおかげで前よりも価値が上がった、二人も売れば魔石分の金以上になる。


「今度からは悪党はしっかり倒すことだな、次があればの話だがな!」

「そうだな、今がその次ってことになるのかな」

「……は?」


 振り返ると先ほどの炎で焼き尽くしたはずの男がそこにいた。


 ◇◇◇


「バカな!あの魔石で死なねえはずがねえ!」

「確かにまともに食らえば俺も無事では無かったな」

「ならどうやって……」

「単純だよ、まともに食らわなければいいんだよ」


 例えば爆発の方向を変えるとか。魔石を囲むよう筒状に『土石槍(アースグレイブ)』を配置して爆風を上方向に変えて、さらに風魔術で風のバレルを成形して真っすぐ上に向かうように仕向けた。


「おかげで火柱が良く見えただろ?」

「クソが!」


 ロウガが懐から白い玉を取り出すと地面に叩きつけた。白い玉は割れ中から煙幕が噴出した。


「させるか、『風槌(エアハンマー)』!」


 風の塊を撃ち出し煙幕を発生させている玉ごと煙を吹き飛ばす。ロウガは背を向けて走り出していた。俺は投擲釘(スローネイル)を奴に向かって投げる。


「ぐあっ!」


 投擲釘(スローネイル)はロウガの足に当たり動きを止めた。手早く足を縛りつけ腕は片方が肘より先がないので二の腕あたりで縛ってついでに足の縄と繫げる。


「これでおしまいだな」


 しばらくして巨大な火柱を見て街の治安組織である騎士団が駆けつけてきた。周囲には野次馬も集まってきている。俺は騎士団に事の敬意を話しロウガを引き渡した。そうしたら詳しい話が聞きたいとの事で騎士団の駐在所まで任意同行という名の連行をされて一晩中経緯を話した。


「朝日が眩しい……」

「ですね……」


 一緒にいたアリスも同じような感じだったのだろう。綺麗な金色の髪が心なしかくすんでいるように見える。


「……んあ?あんちゃんなんでオレを背負ってんだ?」


 背中からヴニュの声が聞こえる。騎士団の人曰く俺達の事情聴取を行っている間どれだけ声を掛けても起きなかったらしい。


「おぉ、そうだユート!お前の剣完成してるぞ!」

「本当か、だが今は寝たいから午後からでいいか?」

「なんだ二度寝か?怠け者は薪にされちまうぞ!」

「お前昨晩の事覚えてないのか?」

「ん?昨日の夜か?剣が完成して早く明日になるようにさっさと寝たぜ!」


 どうやら寝ている間に誘拐されてずっと寝ていたらしい。どれだけ眠りが深いんだ。昨日の出来事を話したら納得したのか背中から降りて工房に歩いて行った。


「俺達も帰るか」


 宿屋に戻るとクレアは既に教会に行ったらしくソフィーとクー助はベッドで眠っていた。眠気が限界まで来ていた俺は装備を外すとそのまま眠りについた。


「来たかユート、これが新生スーパーアルティメットエクスソードだ!」


 昼過ぎに起きた俺達はそのままテンチョーの店に行くとヴニュが背中に大きな剣を背負っていた。受け取ると今までの剣と比べて格段に軽い事に気が付く。


「大分軽いけどどうしてなんだ?」

「さあ?竜種(ドラゴン)の素材を使ったら軽くなったんだ、だが他の魔鉄武器なんかよりも格段に丈夫だぜ」

「恐らくだが緑の竜種(ドラゴン)の特性だろう、他の竜種(ドラゴン)の素材にも似たような特徴が出るんだ」


 テンチョーがヴニュの説明に補足してくれる。


「他の竜種(ドラゴン)の素材も使うと軽いのか?」

「いや、竜種(ドラゴン)によって変わってくる。青の竜種(ドラゴン)は常にしっとりしていて毎日3滴ほどの水が滴るらしい」

「錆びないのか?」

「それどころか魔物(モンスター)を斬っても血や脂を流してくれて戦闘中でも切れ味が落ちないんだと」


 それすごく便利では?


「赤の竜種(ドラゴン)は逆に暖かいらしい」

「それはどんな効果があるんだ?敵を焼き切るとか?」

「ずっと触っていると火傷するらしい」


 温度ひっく。冬場に部屋に置いておけば暖房代わりにはなりそうだな。戦闘向きではない。


「おいおいユート、今回はこれだけじゃないぜ。むしろこれからが本番だ」


 そういって布を巻きつけた物を取り出した。サイズからして短剣だろうか。


「これが今のオレができる最高傑作だ」


 布を巻き取ると鮮やかな緑色の短剣が姿を現した。

ゴクリ……ここがタケノコの島か……

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