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127 突破手段

とんちの日なので初投稿です

「おい、何をしている。その手を下げろ!」

「ところでお前たちは魔術を見たことがあるか?」

「なんの……いや、お前確か魔術を覚えたらしいな。そこから撃つ気か?このガキがどうなってもいいのか?」


 ロウガがヴニュを盾のように突き出す、確かにこのまま俺が魔術を行使して『火球(ファイアボール)』でも放てばヴニュに当たってしまうだろう。


「じゃあ迷宮(ダンジョン)でパーティと魔物(モンスター)が混戦しているとき魔術師はどうすると思う?」


 強化魔術を付与するにしても攻撃魔術を行使するにしても敵味方を巻き込んだ事になってしまう。故に攻撃魔術は味方から離れた位置を攻撃範囲が狭い『石礫(ストーンブラスト)』か『水流針(アクアニードル)』を狙い撃つしかないし、強化魔術が切れた前衛を下げさせて個別で強化するしかない。


「そこで俺は魔術が敵味方を区別するように術を考えた。それがこの『識別付与(マーキング)』だ」

「訳の分からん事を……てめら、やっちまえ!」


 周辺の男たちが武器を片手に襲い掛かってくる。流石の俺でもこの数を徒手空拳で相手するのは難しい、というか『親愛の絆(チートスキル)』を使わないと無理だ。


「残念ながらもう遅い」


 部屋の壁や天井に紫色の魔法陣が無数に展開され、そこから大量の雷が部屋を満たす。男たちは何が起きたのか気付く間もなく地面に倒れた。


「な?!」

「ほらもう一手」


 俺は真っすぐ伸ばした指をロウガに突きつける。指先から小さな光の玉が出るとそれに気付いたのかヴニュを前に突き出す。


「バカが、こっちにはこのガキが居るのを忘れたか!」

「忘れてねえよ、『光爆(フラッシュ)』」


 魔術名と同時に光の玉は太陽と見間違うほどの光を解き放ち攻撃が来ると思いじっと見つめていたロウガは光に目をつぶされた。


「ぐあっ?!」

「今だ!」


 その光を合図に天窓を突き破ってアリスが飛び込んできた。身体を回転させながら勢いをつけたアリスのナイフはロウガの腕をバターの様に容易く切り離した。


「ああああああっ?!」


 ヴニュを地面に落ちる寸前にスライディングで抱きかかえ、ロウガから距離を置く。


「ナイスキャッチ俺!」

「ご主人様こちらへ」


 アリスの案内でカウンターの奥へ走って行く。


「逃がすかぁ!」

「ん?うぉ?!」


 嫌な気配を感じて後ろを見れば剣が飛んできたのですんでの所で回避する。


「よくもやってくれたなあ……ぶっ殺してやる!」

「腕から血流してるのに頭に血が上ってるなんて血気盛んだな」


 ロウガは切られた腕の断面を縛って止血し、残った腕で剣を投げたのだろう。腰には鞘しか残ってなく手には火の灯った蠟燭を携えていた。


「そんな状態なら逃げた方が良かったんじゃないか?」

「俺様がなんの準備もなくここに出てきたと思っているのか?」


 ロウガは傍にあった樽を蹴飛ばすと中から液体がまき散らされた。そこに蝋燭を放り投げると一気に燃え盛った。


「うわちっ」


 事前に撒かれていたのか火の手は瞬く間に部屋中にたどり着いた。


「これで袋の鼠だ」

「ロウガ!」


 炎の向こうに居るロウガは懐から水晶を取り出して見せつけてくる。


「こいつはこの家に仕掛けた『業火爆砕(エクスプロージョン)』の魔石との同調(シンクロ)の魔術が掛けられている魔石だ、こいつを割れば魔術が発動してこの家諸共お前たちを粉々にしてくれる」


 魔石、魔物(モンスター)核心(コア)を加工して作られる魔道具(マジックアイテム)だ。しかし核心(コア)の貴重性や魔術の封じ込めの技術的な問題から下級魔術の魔石ですらかなり高価な代物だ。


「上級魔術の魔石なんて随分奮発したんだな」

「俺様を出し抜く奴にはそれなりの敬意を払う事にしているんだ。だからお前を()る為に人質だって取るしこの建物ごとお前を吹き飛ばす準備だってする」


 そいつは用意周到なことで、しかし火に囲まれてロウガに近付くのが難しい上に逃げるのも困難だ。俺とアリスだけなら『親愛の絆(チートスキル)』でどうにかなるがヴニュが居る。


「お前たちを殺したら次は残りのパーティメンバーもお前たちの後を追わせてやる。あの世で仲良くすることだな『迅雷』」


 そういうと後ろに下がっていき姿を消すロウガ、建物の正面から逃げたのだろう。


「ご主人様いかがなさいましょう」

「『業火爆砕(エクスプロージョン)』の魔石という事は発動させるにはかなり距離を開けないとロウガ本人にも被害が出るから今この瞬間に爆発することはないだろう、なので俺達もさっさと脱出しよう」


 火を避けつつ裏手の扉に向かう。扉にも油が塗られていたのか他の部分よりも激しく燃え上がっていたがまあ蹴破れば問題なかろう。ヴニュを抱きかかえながら扉を蹴りつける。


「っ~~?!かってえ!」


 まるで壁でも蹴っているような感覚だ。もう一度蹴るが結果は変わらずだ。土魔術で扉の外を固められているのではないだろうか。


「他に出口はないか?」

「ダメです、窓も開きそうにありません」


 やられた、こっちに逃げることを想定してこの部屋を行き止まりに作り替えたんだ。このままでは俺達はヴニュを抱えたまま火の手が回った方へ逃げなければならない。そうなると流石にロウガが爆弾を起動させるには十分な距離をとっている可能性が高い。


「こうなれば『業火爆砕(エクスプロージョン)』の魔石を見つけるしかない」


 見つけなければ死ぬ宝探しが今始まった。


肉を集める準備をしろ

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