123 紅葉狩り
バミューダトライアルの日なので初投稿です
「準備はいいか?」
「ボクは何時でも」
「準備は出来ております、ご主人様」
「それじゃあクレアが魔法盾を解いたら走るぞ。ソフィーもそのタイミングで壁の移動を頼む」
「あ、あたしなの?」
突然の振りに戸惑うクレア。そうは言うが魔法盾は盾の構成物質は魔力とは言えその効果は物理的な結界なので解いてもらわないと移動ができない。
「分かったわ。じゃあせーので行くわよ……せーの!」
クレアが合図と共に魔法盾を解く。それに合わせてソフィーが目標の方に『火炎壁』を道中の中程まで伸ばしそれを防風壁にして俺とアリスは走り出した。
「そうそう、防げる限界の長さ程度しか伸ばせないけど絶対に防げるわけじゃないから先程よりも沢山抜けて来るからクレア君が防がないとボク達穴だらけだよ」
「はあ?!そう言うのはもっと早く言いなさいよ!」
再び展開される魔法盾、心なしか先程よりも壁の厚みが違う気がする。俺はアリスと並走し壁側を走る。時々壁から通り抜けてくる羽根を弾き返していく。コレで飛び出してくるのが人の手ならゾンビサバイバルホラーだな。などと考えていたら壁の終端にたどり着いた。
「ここからは壁がない。あの羽根の嵐に身を晒す事になるが準備はいいか」
「いつでも大丈夫です」
「じゃあ行くぞ……3、2、1、GO!」
『火炎壁』の影から飛び出すと同時に、無数の羽根が襲いかかってくる。その一つを盾で『反射』する。
「弾けて消えろ!」
『反射』によって光の粒に砕かれた羽根が周囲の羽根を連鎖させて消滅させる。その空いた空間に向かって走っていく。
「コレ羽根を全部砕いたら終わらないかな」
落ちた羽根は地面に吸収されて再びシルフィードに集まり巡っている。これを全部光に変えれば終わらないだろうか。まあそれを完遂するには無限とは言わなくても6桁はありそうな羽根を全て砕く必要があるので現実的ではない。
「もういっちょ!」
再び飛んでくる羽根を砕いて道を作りつき進んでいく。そして、
「たどり、ついた」
「綺麗……」
黄金色に輝く羽根にたどり着く。他の舞う羽根が真っ赤な紅葉ならこちらはイチョウの葉だろうか。
「アリス、飛んでくる羽根の対処は俺がやる。その間にその羽根を破壊するんだ」
「畏まりました」
先程、というか目標に辿り着いてから羽根の勢いが激しくなっている気がする。と言うのも俺達が居る場所とさっきまでいたソフィー達の場所で羽根の量があからさまに違うのだ。羽を砕いて空間を有る程度作っても魔法盾のような壁を作っているわけではないので羽根の勢いが増せばその分空間が小さくなる時間も少なくなると言う事だ。
「クソっこうなったら……」
羽根を弾いた瞬間に『道具箱』からもう一枚盾を取り出し右腕にもつ。左手の盾で弾いた後に右手の盾ですぐ迫ってくる羽根を弾く。左手だけでは対処できそうにない羽根を対処していく。
「これぞダブルシールド!」
渾身のキメ顔で言うもののアリスは羽根の対処しているしソフィー達には遠くて見えていない。気を取り直して羽根の対処する。
「と言うかアリス羽根まだできそうにない?!」
「もう少々、お待ちください」
羽根を前にしてたちつくすアリス、何か問題が発生したのか?
「『反射』、からの『土石槍』!」
時間稼ぎの石槍の防御壁を築き、アリスに近づく。
「どうした、何か問題でも起きたか」
「ご主人様……いえ、コレを本当に壊してしまってもよろしいのかと思いまして」
まあさっきの羽根を壊したら発狂モードになったのだから躊躇があるのかもしれない。
「分かった、こっちの対処法はアリスに任せる」
「宜しいのですか?」
「構わない、俺はアリスを信じているからな」
おっとそろそろ『土石槍』の壁が壊れそうだ。急いで羽根の対処に向かう。アリスは羽根を前にして獲物のナイフを構える、そしてそれを振り上げて。
「……!」
振り下ろしたナイフはしかし羽根を傷つける事なく地面に刺さっていた。アリスは羽根を持つとナイフで開けた地面の穴に差し込んだ。
「と言うかあの羽根持っても大丈夫だったの」
俺が剣で切ろうとした時は『付加』部分が完全に削り取られてしまったのに。
「って、羽根が止んだ?」
「ご主人様、ご覧ください」
地面に刺した羽根はすくすく育ち、一本の若木に変化した。
『この技はお父様がナンカクアスカ様に捧げる為と伺っております』
「シルフィード、羽根が降らなくなったのは」
『はい、その若木こそが『落葉』の攻略条件です』
「ふぅん、君のお父様が過去の異邦人の為に作ったという理由は聞いても?」
『いえ、私も聞いただけで記憶の継承にもなかったですので』
「それはお爺ちゃんだけの思い出って事なんでしょ」
『リーザ、そうですね。私たちが知る必要はない事なのでしょう』
ナンカクアスカに捧げる技ね……恋慕的なものだったりして。
「さて、俺たちは勝ったわけなのだが」
『えぇ、分かっています。ですがお願いが』
「なんでしょうか?」
『あの、ユート様には少々席を外してもらえないでしょうか』
「それはなぜですか?」
『えっとですね、鱗を剥がすのにですね殿方に見せるには御見苦しい姿になるので』
「俺は別位構わない、と言うか全身羽毛だった竜種のどこに鱗が有るのか見てみたい」
『えーっとお……』
「もう!ユート君、シルフィは裸になるから男は出て行けって言ってるの!」
「え……ち、違う今のは知的好奇心というか竜種の生態についての詳細を知りたいとかであって決してそういう意味では」
「いいから出て行きなさい」
「はい」
クレアにすごい形相で言われ、ダッシュで部屋の扉に向かった。
タコとフグ美味しい