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12 出し惜しみの切り札

コミケまで1週間切ったので初投稿です

 アリスの腕を引き寄せて俺との位置を逆転させる。

 その直後、背中にスライムの放った火炎球がぶつかり炎が弾けた。


「ぐぇっ」

「ご主人様!」


 衝撃でアリス諸共弾き飛ばされて地面に転がる。


「ご主人様!起きてください、ご主人様!」

「……はっ?!背中いってえ後頭部あっちい!髪の毛焦げてないかこれ?」


 背負っていた魔物の素材でパンパンの麻袋のおかげで大したダメージは受けなかったが炎が舐めた後頭部から熱と髪の毛が燃えた特有の臭いがした。


「ご主人様!よかった……!」

「アリス、感動の抱擁はダンジョンでてからやろう!」


 抱きしめたい衝動を押しとどめて立ち上がり入り口に走る。二発目の火炎球が放たれた瞬間足元に転がっていた蜘蛛の腹を掴んで投げると、それに当たった火炎球は弾けて霧散する。

 その間に通路へと飛び込み駆け出した。


「はぁ、はぁ……何だったんだあいつ」

「恐らく、ご主人様が拾ったあの黒い物にスライムが呼び寄せられて合体したものかと」

「あの黒い殻か?」

「はい、魔物(モンスター)は魔力の篭った物に吸い寄せられると聞きます。それにあの部屋はスライムには乗り越えられない段差がありました」

「つまりあの欠片に魔物たちが集まったけど段差のせいでスライムだけが溜まりすぎてあんなデカくなるまで合体し続けたってことか?」

「恐らくは……」


 真実はともかく事実としてあんな巨大スライムが居る以上ここに長居は危険だ、至急戻ってギルドに報告するべきだろう。今の俺たちにアレをどうにかする手段は持ち合わせていない。


「ま、あんな巨体通路に入れないだろうし、勝ったなガハハ」

「……ご主人様、後ろを見てください」


 自分で言っておいてなんだけど今フラグ建てたわ。

 ふり向くと通路に隙間なく巨大スライムが詰まった状態で迫っていた。

 ところてんかな?切る刃はどこにもないけど。

「アリス、道覚えてる?」

「大丈夫です。お任せください」

「じゃあ任せた……走れ!」


 足音に反応したのかスライムの迫ってくる速度が増した。

 魔物達も異常を感知したのかスライムから逃げるように移動しているが間に合わずにスライムに飲み込まれ、ものの数秒で溶解されていく。どうやら捕食対象としてみているようだ。


「服が溶けていや〜んって感じにはならなさそうだ」

「ご主人様、非常事態です。前をご覧ください」

「前……うげ」


 通路が透明のプルプルしたもの……後ろから迫ってきているものと同じスライムが詰まっていた。

 目の前のスライム壁を避けるようにわき道を通る。


「なんであっちにも……」

「最深部に行く道はここだけではなくあと2つあります」

「全ルートから追い詰めようってか?泥状生物(アメーバ)のくせに賢いなぁおい!」


 こうしてスライムとの鬼ごっこが始まった。塞がれた道を迂回し、塞がれる前に走り抜け、時には剣で無理やり道をこじ開けながらも出口に向かって走っていった。

 そして行き止まりにたどり着いた。


「……申し訳、ございません。道を一本間違えました」

「いや、どのみちあそこから先はスライムで埋まってたからあそこで曲がるしかなかったさ」


 実はどこか壁が薄くて隣の通路に繋がってないかと壁を叩いたが特にそんなことはなかった。

 スライム壁と向かい座り込む、スライム自身も追い詰めたのを分かっているのか全く追い詰めてこずにじわりじわりと進んできていた。


「アリスごめんな、こんなことに巻き込んじゃって」

「なぜご主人様が謝るのですか」

「だってさ、俺が来なければアリスは生まれ故郷で暮らしてた訳だし、こんなところでスライムなんかに殺されることもなかった」

「そんなことありません、ワタシはご主人様と共に居られてとても幸せでした」

「だけど……」

「ご主人様、ワタシは村でただ一人の森人(エルフ)でしたから、村の人からも教会で一緒に住んでいたシスターたちからも嫌われていたと思います」


 アリスはぽつりぽつりと喋りだす。


「子供たちはそういう事に敏感ですから、友達と呼べる人はいなかったです」

「ですからお告げのおかげで村を出る決心がつきましたし、素晴らしいご主人様にも出会えました。本当はもう少しお世話をしたかったですけど後悔はありません」

「……アリスは凄いな、凄すぎて俺も奥の手を出す時が来たようだな」


 ジジイから貰ったのは良い顔と身体能力だけではない、言ってしまえば特殊能力(チート)だが発動条件がいくつかあってこの土壇場まで使えるかわからなかったのである。


「アリス、俺を信じてくれるか?」

「なにを……いえ、ワタシはユート様を信じています。これまでも、これからも、今この瞬間も」

「OK、それじゃあお手を拝借」


 1つ、一人では発動できない、信頼し合える仲間が必要。


「俺の言葉を復唱して」

「はい」


 2つ、1の条件を満たした人物と指を絡ませた所謂恋人繋ぎをすること。


「「病める時も、健やかなる時も、共に笑い、共に泣き、共に怒り、共に悲しみ、共に生きよう」」


 3つ、この状態で詠唱を行い、キスをすること。


「「我らの絆は死すら別つ事は叶わぬと知れ」」

「「再接合(リコピレイション)」」

チケットをご用意出来ないe○……ぜってえ許せねえ!

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