107 作戦会議
移動する山の日なので初投稿です
「それで、何故俺達にヒュージスライムのメインアタッカーを?」
「単純な事だ、君達がこの中で一番強いからだ」
強い、と一言で言われてもあまり実感がない。確かに『親愛の絆』は持っているが結局はスキルを強化するだけで俺自身が強くなるわけではない。俺の強さは棍棒を持って襲ってくる奴に対して遠くから銃をぶっ放してるのと同じだ。弾を避けれる技量の持ち主には近付かれて殴られるし、そもそも後ろから殴られれば銃を持っていようと負ける。だからそうならない様に鍛えてはいるのだが。
「ヒュージスライムの弱点は知っているかね?」
「核心だろ?しかしアレは16個の核心をほぼ同時に破壊しなければ倒せないぞ。それに核殻もある」
核殻は魔鉄も含有している硬い装甲だ。『致命の一撃』を使えば倒せない事はないだろうがそうなると『親愛の絆』を晒す事にもなる。それだけは是が非でも避けたい。
「いや、何も全ての核心を全て破壊して欲しいと言っているわけではないのだ。君達のパーティで最初に二つほど破壊して欲しいのだ」
「二つ?」
「ヒュージスライムは核心を使って呪文を唱えていると言われているんだ。その為に核心が減ると大規模な魔術を行使できなくなるのさ」
「つまり俺達にスライムが大規模な魔術を使ってくる前にその口を塞げっていう事だな」
スライムに口は無いが。
「しかしそうなると問題が1つあるね」
「問題?」
「最初に2個破壊したところで核心が分裂して数が元通りになってしまう。そうなったら魔術を使ってくるよ」
「そのあたりはどうするんです」
「その事は十分承知している」
「ではどのような対処を?」
「核心を2個破壊した時点でヒュージスライムは大規模、中級以下の魔術しか使用できなくなる、前衛は再生しない様に核心を破壊し続けその間に旅団の全魔術師による一斉攻撃を行う」
つまり核心が16個揃わない様にしながら最後は魔術による飽和攻撃を仕掛けると。随分と大雑把な戦術だ。
「もちろん一番危険な役目をさせる訳だからその分報酬は上乗せさせてもらう」
「どのくらいだ?」
「均等分配した戦利品の3割だ」
「因みにその戦術の死者はどの程度なんだ?」
「多く見積もって1割だな」
つまりヒュージスライムと戦うと2人死ぬ可能性があると。
「メインアタッカーは分かった、その上で核心の破壊方法に提案がある」
「ほう、聞かせてもらっても?」
「俺とソフィーでヒュージスライムに魔術を撃つ」
今の俺達なら『親愛の絆』の使わなくても多分討伐出来ると思う。主に攻撃するのはソフィーだが。というか現状このパーティで広範囲、高火力の攻撃方法はソフィーか俺の魔術なのだが俺が魔術を使うために後ろに下がると前衛をアリス一人に負担をかけてしまうのであまりやりたくない。しかしこれだけ仲間が居るならその負担も軽減できるだろう。
「君達だけで?」
「俺とソフィーなら他の魔術師より早く魔術を撃てる、その間だけ防御を固めてくれればいい」
「具体的にどのくらいだ?」
「ソフィー、どのくらいいる?」
「仮に中級魔術を撃つのなら1分も要らないだろうね」
「そんなに早く?本当に可能なのか?」
「出来るとも」
『雷帝戦槌』はともかく『落雷』なら俺でも1分もかからずに発動させることは出来る。
「分かった、最初はそれで行こう。しかし二人だけの魔術ではヒュージスライムは止まらない可能性がある」
「その時は俺も前線に出て守りに回るよ」
その後も先頭ローテーションで数回戦闘を行ったが順調に進んでいき遂に10層の主部屋前にたどり着いた。階層主へ繋がる大扉を前に一同が集まりマッチョ氏が作戦を皆に伝えた。
その言葉に全員がざわつく。まあ無理もない、本来なら24人全員で戦って死者が一人二人出るような戦いなのだ。
「おいおい、コイツ等の強さは昨日見ただろ!」
そんな時大声で全員に話しかける男が居た。兜で顔が見えないがこの声は俺達にイチャモンをつけてきたあの男だ。
「そいつらがやれるって言うんだからいっちょ賭けてみようじゃねえか!」
どうやら俺達の作戦に賛同してくれているようだ。その言葉に他のメンバーも賛成の声が多数上がる。
「では、異論はないようなので第一回目はこの作戦で行こうと思う。準備が出来次第主部屋に突入する。各自準備に取り掛かれ」
マッチョ氏の言葉に武器の手入れを始めるメンバー達。俺達も何か準備を行おうと思ったが、魔術をぶっ放す以外にやる事が無かった。先程の全身鎧の男が近づいてくる、確か……ジェシーズだっけか。
「よおお前ら、随分と大胆な作戦を思いついたな」
「何、俺たちが出来る最善手を提示しただけだ」
「前にお前たちが持ってきたヒュージスライムの殻、報告では鳥の勇者が討伐したとあったが、もしかして……」
「……その報告通りだよ」
「……へっ、そういう事にしといてやるよ」
ジェシーズは去っていった。そういえばそういう設定だった、そもそも鳥の勇者って何者なんだ。その疑問にエリちゃんが答えてくれた。
「鳥の勇者は数年前に現れた冒険者でね、一人で幾つも迷宮を発見、踏破している神出鬼没の冒険者なんだ」
「なんで鳥なんだ?」
「ボクも本人を見た事ないから噂なんだけど鳥頭なんだって」
それは悪口では?
「そういう意味じゃなくて、言葉通り鳥の頭なんだって。多分被り物なんだろうけど、とある呪いにかかって頭が鳥になってしまったって話もあるよ」
なんじゃそりゃ、知れば知るほどよくわからん人物だ。
「『迅雷』、そろそろ時間だが大丈夫か」
「マッtyサイさん、あぁいつでもイケるぜ」
「ふむ、ではこれよりヒュージスライム討伐戦を行う!先の説明通り『迅雷』による魔術攻撃を行うまで我らが盾になる!その後第二波として各魔術師による一斉攻撃だ!」
ついに大人数の戦いが始まる、何も起きなければいいけど。
サマーキャンペーンを攻略しろ