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105 秘め事

世界的運動会が始まったので初投稿です

「ねえ、キス……してよ」

「さっきの夕食に酒出てたっけ」

「素面よ、酔った勢いなんてあたし嫌だもの」

「……理由、聞いても?」


 そう問うとクレアは摘まんでいた袖を強く握りしめた、服が伸びるとかいう雰囲気ではないな。


「あたしだけ……ない」

「すまないよく聞き取れなかった」

「あたしだけ、あんたとキスしてないって言ったの!」

「……そうか?」

「そうよ!」


 思い返してみる、俺とクレアが初めて『親愛の絆』を行ったのは聖罰者(インクイジター)がクレアに攻撃した時に俺が庇って死にかけた時だ。その時は意識を失っていたのでしたという記憶は無い。それ以降だと『禁魔の伽藍洞』の時も、『海帝都市(ル・リエー・ラ・イラー)』の時もそれ以外の日常でも……。


「……してないな」

「だからしてないのよ!」


 袖を握りしめた手をぶんぶんと振るクレア、袖が伸びるのを通り越して破けそうだ。という訳で袖を掴む手を握りもう片方の手で抱き寄せる。


「きゃっ……!ち、ちかいわよ」

「顔を近付けないとキス出来ないだろ」

「それは、そう……本当にするの?」

「クレアがしたいって言ったんだろ?それに女の子にそこまで言われてキスしたくない男なんていない」

「それって、どういう……」

「俺もクレアとキスしたいって事だ」

「〜〜〜〜〜っ!!!!」


 死ぬほど恥ずかしいセリフを吐いていると思うがここで日和ったらクレアは逃げてしまうだろうしな。それに俺以上に顔を真っ赤にした美少女が目の前に居るのだから収支は既にプラスになっている。


「そ、そんなこと言われてももっと雰囲気とか……」

「夜も更けて二人っきりだ」

「だ、誰かに見られたりとか……」

「哨戒でここまではなれていたら見ているのは月と星だけだよ」

「あの、えっと……その、優しくおねがいします……」


 どんどん尻すぼみしていく言葉、最後の方はごにょごにょとしか聞こえなかったがまあこの流れなら多少違っても許してくれるだろう。というか流れ的にキスだけで終われるかな。主に俺が。

 掴んでいた手を放しクレアの顎を持つ、顎クイってこんな感じでいいのだろうか。


「あ……」


 真っ赤な顔にうるんだ瞳で息を漏らす。世の中のイケメンってこんな光景をいつも見ているのだろうかどうでもいい事を考えながら顔を近付けていく。クレアが目を閉じるのを確認して横の草むらを見る。


「……」

「……」

「きゅ〜?」


 アリスとソフィーとクー助が出歯亀をしていた。途中から居るなとは思っていたが想像以上にがっつり見ていた。この状態がクレアにバレたらどうなるか分かったもんじゃない。静かに草むらに隠れるようにジェスチャーをする。ソフィーとクー助は変わらず見てくるがアリスは理解してくれたようで一人と一匹を草むらに沈めてくれた。


「……ユート?」

「あぁ、ゴメン。クレアの可愛い顔に見とれていたよ」

「なにそれ、こっちはものすごく恥ずかしい……んむ」


 こういうのってどれくらいくっ付けてたらいいんだろうか、しようと思えば10分でも20分でも出来そうだが。


「……ぷはっ」

「はいもう一回」

「え、ちょっ今息を……はむ」


 10秒ほどで唇を離すと息を止めていたのか息を吸い始めた。可愛いので呼吸が整う前にもう一度口づけをする。クレアの手が俺の腕を強く握りしめるので限界と思い唇を離す。今度は20秒くらいだったな。


「はぁ……はぁ……」

「もう一回いっとく?」

「これ以上してたらあたし死んじゃうわ」

「それは困るな、今日はこれ位にしておこう」


 見回りの途中だしな、下手に遅れるとマッチョ氏に変な勘ぐりをされてしまうかもしれない。仕事の最中にキスしてるのに変な勘ぐりもねえな、いやこれ以上考えるのはやめよう。

 哨戒を終えてテントに戻るとクー助はテントの前で寝ており、中ではソフィーとアリスも眠りについていた。


「寝てるわね……」

「あぁ、それじゃあお休み」


 人数も増えてきた上に男女比が1:3なので大きめのテントを女子用に買い、俺用の小さいテントも買った。今まで野営は夜空の天幕で寝ていたのでこれからはある程度安心して寝れる。


「え、あんた達起きて……きゃあ?!」

「クレアちゃん様、少々お聞きしたいことが……」

「ボクも、後学のためにいくつか質問したいのだけど……」


 ……まあ女子が3人集まって姦しいとも言うし、聞かなかったことにしておこう。

 翌朝、眠そうにしている3人娘を言及することなく朝食を食べ、迷宮(ダンジョン)入り口に向かう。


「上級クラスの方は南の広場へ、中級クラスの方は西側です!」


 昨日は気が付かなかったがギルドの受付嬢や事務員らしき人間がいる。彼らは非戦闘員だし街の外に出るような人ではないのでどこか安全な場所に居たのかもしれない。俺たちが知らないだけで宿泊施設でもあるのかね。指定された場所に行くとどうやら俺たちが最後だったようだ。


「皆さん集まりましたね、それでは今回の作戦を説明させていただきます」


 今日の目標は10層に居る低階層主(ローエリアボス)、ヒュージスライムの討伐だ。10層までは今回特別に連れてきた中級クラスの冒険者に任せ上級クラスの冒険者は10層以降の中階層(ミドルエリア)を目指す。


「今回は中階層(ミドルエリア)魔物(モンスター)討伐をやっていただきます。また、迷宮(ダンジョン)内では旅団(レイド)リーダーを行ってくださる『鋼の肉体(ビルドマッスル)』の指示に従って頂くようお願いします」


 その後、いくつかの質疑応答が行われ、ついに迷宮(ダンジョン)に入ることに。


「さて、前回の海を除いて初めての上級迷宮(ダンジョン)だ、気合入れていくぞ!」

「畏まりました」

「いくわよ!」

「楽しみだね」

「きゅー!」

「いえーい!」


 声が一つ多いな?後ろを振り向くと外套(マント)で身を隠す低身長な人物、というかギルド長(エリちゃん)がいた。


「そういえば連れて行くの忘れてた」

「酷くない?!」

傭兵の姉ちゃん可愛すぎへんか?

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