103 対決
書ききったので初投稿です
両者が並ぶと辺りがざわつき始める。
「それでは『牙折り』ジェシーズと『迅雷』アリスによる交流試合を行う。一本勝負、相手に参ったと言わせるか急所に攻撃を当てたら勝ちとする。質問はあるか?」
「おいおい、馬車での威勢はどうした?まさかビビッて前に出れなくなったのか?」
「問題ありません。早く済ませましょう」
「では、双方かまえ!」
アリスの言葉に相手の男は舌打ちをして武器を抜く。アリスもナイフを抜いて構える。
「用意はいいな。それでは……初め!」
「かかって来な、遊んでやる」
「それでは、参ります」
彼我の差は約5m程だろうか、真っ直ぐ進むだけならアリスの脚力を使えば3歩で届く距離、上級クラスの腕前はどの程度なのか知るいい機会だ。
一歩目、アリスが前に詰める速度に驚いた顔をするが何もしない。二歩目、更に左前に踏み込む、ようやく剣を振り上げる。三歩目、今度は左側にクロスするように足元に潜り込む。アリスの居場所が予想外だったのか振り下ろした剣がブレている。
「せい……やぁ!」
「ぐっ……!」
「そこまで!勝者アリス!」
アリスの双剣が男の剣を弾き飛ばし首元に突きつけた。カランと男の剣が背後に落ちる。周りから感嘆の声と少なからずの拍手が聞こえた。
武器をしまってアリスが駆け寄ってくるので頭を撫でる。
「よくやったぞアリス」
「お褒めいただき光栄です」
「こんなの偶然だ!俺は認めねえぞ!」
男が落とした武器を拾って抗議している。顔は怒りで真っ赤だ。
「ジェシーズ、見苦しいぞ」
「うるせえ!俺は上級クラス3級だぞ!それがこんななりたてのガキに負けるわけがねえ!」
「そういうのであればもう一度やりましょうか?ワタシはかまいませんよ」
「このクソガキ……!もう一度だ!今度はしっかりとわからせてやる!」
「アリス、大丈夫なのか?相手めっちゃ怒ってるけど」
「ご心配いただきありがとうございます。ですがもう少しあの方には少しお勉強をさせてあげないと行けないので」
「あぁ、そう……じゃあ頑張って」
こわい。男は先程の油断しきった体勢とは打って変わってちゃんと剣を両手に持って構えている。対してアリスはナイフを片方だけ持って構えている。
「先程はワタシからでしたので今度はそちらからどうぞ」
「……調子こいてるんじゃねえぞ!」
開始の合図を待たずして駆け寄る男。それを悠然と待ち構えるアリス。上段斬りをナイフで弾く、そのまま連続で斬りかかるがその全てを弾いていく。
「オラオラ!さっきの威勢はどうしたんだ!」
「……」
全ての攻撃をきちんと弾いていく。アリスわざとやってるなアレ。
「クソっ……!いつまで防いでいる気だ!」
「そうですね……ではこうしましょう」
今まで弾いていた剣を避け始めるアリス。避けながらゆっくりとナイフをしまった。煽るじゃん。
「ふざけ、やがって!」
「では、おしまいにしましょうか」
アリスが剣を避けながら後ろに回り込む。見失ったのか上体を起こした瞬間、男の両肩に着地した。
「な?!」
「頭、お気をつけください」
足で首を挟み込み後ろに倒れ込むアリス。いくら少女の重量とはいえ全体重を乗せたこの技は防ぎようがない。アリスはバク転の要領で男の首を地面に叩きつけた。
「ぐあっ!」
変則フランケンシュタイナーだな。前にも絡んできた男にも使っていた気がする。叩きつけられた状態からピクリとも動かない男に若干の不安を感じつつもアリスの腕前なら死んではいないだろう。
「クレア、念の為に治癒術をかけてあげて」
「仕方ないわね」
「いや、その必要はないよ」
クレアの治癒術を遮ったのは男の言葉を嗜めていた細身の男だ。
「俺はアラスター。ジェシーズが迷惑かけたな」
ジェシーズ、あそこで伸びてる男の名前か。
「俺達が上級になったばかりなのは本当の事だしな」
「ジェセはああ言ってたが、イースガルドのギルドは昔から上級クラスの昇級試験は厳しい事で有名だからな。お前達の実力を疑っているわけではないんだ」
「ではなんであんなに噛み付いてきたんだ」
「アイツは先代のギルド長に世話になったんだ。だからギルド長を認められないって言ってて聞かないし、今のギルド長になってから初めて上級クラスになったのが君達だったからアイツも溜まってたんだ」
「あぁ、そういう」
エリちゃん、現ギルド長の就任には色々きな臭い動きがあったとは聞いている。その中心にいたのが元副ギルド長で内部の清掃というか粛清に時間がかかったと聞いた。
副ギルド長の息のかかったかなりの人員がやめることになったので、今ギルドは人員不足に悩まされているらしい。
「それに、ジェセは言動はアレでもクランの中では腕利きなんだ。竜種の迷宮に選ばれる程度にはな。それをあんな簡単にいなしたんだ。誰も文句は言わないよ」
周りの人々が頷く。自己紹介で上級クラスと名乗っていた連中だ。認められたのなら良かった。まだ疑ってる人が居るのなら地面に身体を生やしてもらう事になっていただろう。
「それじゃあ親睦も深まった事だし夕食にしようか」
ギルド長が締めの言葉を喋って夕食の準備が始まった。
最近書くタイミングが無い