10 チュートリアルバトル編
今年もあと1ヶ月を切ったので初投稿です
迷宮
それは神が与えた試練とも、悪魔が誘う罠とも言われいる不思議な場所。
姿形は洞窟からお城まで千差万別。
ダンジョンに住む生き物は魔物と呼ばれ地上とは全く違う生態系をしています。
そして何故かダンジョンの奥深くに眠る財宝の数々。
一説にはダンジョンその物が一種の生物という研究もあるほど……
そんな不思議なダンジョンを徹底紹介!これを見れば貴方もダンジョンマスター間違いなし!!!
━━王都ダンジョン研究所『なぜなに?ダンジョン!』より抜粋
……これ書いたヤツ俺と同じ異世界転生者じゃねえの?
ご丁寧に最後の上級迷宮の後半「残りは君の眼で確かめてくれ!」で〆てあるし。
「冒険者の間で一番人気のある攻略本なんですよ、絵付きで字が読めない人でも分かりやすいと評判なんです、これのお陰で冒険者の生存率が凄く上がったと聞きました」
確かに内容は細かく記されている、迷宮の形状から生息している魔物の種類に弱点、さらには宝箱に入っているアイテムの傾向まで網羅されている。
「凄いなこれ、ここまでの情報は最早必需品レベルだぞ、何者なんだダンジョン研究所」
「なんでも初代所長は遠い異国の地で測量を嗜んでいた方とか、この世界の地図を作ったのもその方だったと聞いております」
本当に何者なんだよ所長。
そうこうしてる間に目的地のダンジョンまでたどり着いた。
ただの洞窟のようだがよく見ると入り口に半透明のなにかが浮いている。
「なんだこれ……魔方陣?」
「転位門の魔方陣ですね、ダンジョンの入口は必ずその魔方陣があるのです」
「この世界に来てファンタジーらしい現象を初めて見た」
爺のヤツはご先祖様が枕元に立つ感じなのでノーカンで。
入る前に装備のチェックをする、俺は武器屋で購入した剣と盾、それに革の胸当てだがアリスは普段着に大型のダガー2本という男らしい装備だ。
アリスが小さい女の子もあってダガーがショートソードに見えてくる。
「小さい娘が大きな武器はロマンだな……じゃなくて本当に何もつけなくて良かったのか?」
もっと腕にシルバー巻くとか。
「はい、村でもこれで狩りをしてましたし、着込んだら動きにくくなって逆に危険です」
そこまでいうのなら信じることにしよう。
待って今狩りしてたって言った?何狩ってたの?
「主にランスボアとハニーベアでしょうか、動きが分かりやすいのでそこまで強くはないかと。とても美味しいですよ」
……兎に角ダンジョンに潜って見よう、そうすれば色々分かるはずだ。
◇◇◇
結論から言えばここはダンジョンなんてものでは無かった。
まず敵が弱い、出てくるのがデカい蜘蛛と大きいコウモリ、それとスライム。
デカい蜘蛛はバスケットボールくらいの大きさで名前はスカルスパイダー。腹の模様が頭蓋骨に見えることからそう呼ばれている。最初はその大きさもあってかなりビビったがやってくることが上から落ちてくるか壁から飛び掛かってきて噛みついてくるのみである。
次に大きいコウモリがビックバット、翼を広げたら50㎝くらいのこいつも飛んで張り付いたら噛みつく。
そう、二種類とも噛みつきしかやってこないのだ、しかも消化液を流し込んでくるとか吸血をするとかではなくただの噛みつきなのである。
これが真っ暗な洞窟の中なら多少は不意を突かれてダメージを受けていたのかもしれないがダンジョンの中は蛍光灯ほどの明るさで照らされ洞窟というよりも通路といったほうが近いかもしれない。
見通しが良すぎるせいもありとにかく不意打ちが出来ない造りになっている。
こうなってくるとここはもうダンジョンというかチュートリアル場である。
そしてスライムであるが、こいつは何もしてこない。
スクロールによると這いずり回っては地面に生えている草や生き物の死骸を溶かして食べるダンジョンの掃除屋なんだとか。
試しにスライムに指を突っ込んでみたが溶けるどころか指を刺した所から水分が抜けて少し萎んだように見える。
「これでどうやって溶かすんだ?」
「この攻略本によりますと何匹か集まった時に力を発揮するみたいですよ」
「どれどれ……普段は動く水溜まり程度の存在だが真の脅威は数が揃い合体した時である……」
スライムは合体することによりその能力を飛躍的に向上させます。特に知能に関して言えば倍々に向上していき10匹も合体すれば通常の1000倍にもなり簡単な下級魔法を行使出来るようになります。ダンジョンを綺麗にしてくれる有難い存在ですが増えすぎても厄介、なので見かけたら適度に間引きましょう。
なおスライムの中身は少しだけ魔力が入った魔法水なので魔力が枯渇して動けなくなった時や水分が無くなって脱水症状になった時の緊急補給としても使えます。
「魔法は脅威だが魔物を食おうとするなよ」
よく見たら他の魔物の説明欄にも食べられるか書いてある、これ書いた奴は日本人かその血を受け継いだ人間であることは間違いない。
「ユート様?どうかなさいましたか?」
「いや、大丈夫。魔物が弱すぎてここじゃあアリスの強さもよく分からないし、さっさと用事を済ませて帰ろうか」
「わかりました、では先に進みましょう。ここからだと……あちらですね」
そうして俺達は最深部へと足を進めた、これから起きる事も知らずに……
こういう〆方すればなんか意味深になる