居場所
そんな彼女は私なら何でも話した。
驚く事に私と彼女は親友だったのだ。きっかけというきっかけもなく、気付いたら居たという現状だ。それほどまでに自然で、そこも彼女らしいものだった。私達を見たクラスメイトは皆妬みからかわからないが「釣り合っている」と口々に皮肉を言った。彼女は全く気にしなかったが、私は目立ちたくなかったので、苦笑いをするしかなかった。
ある夏の、とても暑い日だった。彼女は突然呟いた。
「私の言う事、信じてくれる?」
彼女は嘘吐きだ。信じられる筈がない。…普通なら。
「もちろん、何?急に」
私達は親友だった。
「私は異世界に生まれるべきだったって言ったらびっくりする?」
「そりゃあびっくりするわよ、まぁ完璧な貴女が言ったら信じちゃうわね」
あんまり深く考えなかった。どうせ冗談だ。彼女はよく冗談を言う。
「冗談じゃないよ、ホントにホントなんだよ、私異世界から間違えてコッチに生まれちゃったの」
彼女が真面目な顔をした。私はようやくちゃんと聞く気になった。
「ほんと?」
「ホント」
真面目な顔は変わらなかった。私は困惑した。信じられない。異世界なんて、運命なんて。漫画のような話だった。でも…彼女は完璧で、現実離れしている。嘘とは思えない。
「そうなの…」
私は曖昧に答えた。だが、彼女はホッと息をついて安堵の表情を浮かべた。
その次の日から、よく「前世」の話をしてきた。
勇者だったり、魔王だったり、女神だったり…沢山の登場人物が出て来た。作り話にしては凝っている。私達は異世界に思いを馳せた。
いつしか彼女は異世界の事を故郷と呼ぶようになった。この世界は私がいるべき場所じゃない、帰りたい。落ち込んだりした時は必ずこう言った。
故郷に帰りたい。
彼女はどんどん帰郷する事に焦がれる様になった。