第95話 ドラゴンテイマーの仕事
かつての教え子がいる港町は王都を越えた先にある。
言葉にするのは簡単だが王都へは6日、港町は更に5日掛かる。
そこで俺達はドラゴンの力を借りることにした。
モンスターテイマーが運営している空送商会だ。
これを利用することにより11日の距離を5日で行けることになる。だが、料金がべらぼうに高い。しかも二人しかも乗れない。
これは竜の食費も兼ねているから仕方ないことだが、滅多に乗っていいものではない、贅沢な代物である。
この商売に適した竜種である遊翼竜は飛ぶことに優れ、何より心優しく穏やかな性格。
しかし、長距離を飛ぶのには優れているが、遅い。それが5日掛かる原因だ。
大きな街にしか拠点を構えてないがクインテットなら問題なかった。
イグニス達は気ままに歩いて行くと言って西門から出ていった。
そして俺達は今、遊翼竜の背中に乗っていた。俺とアイ、テイマーに遊翼竜の食料らしき袋だ。
アイテムボックスに入りきらないのだろう。
この空の旅は信じられないくらい心地いい。大枚を叩いただけのことはある。
こんな旅を何時までも続けたいと思ってしまう。
「最近不景気でしてねぇ。お兄さん方みたいにこの距離を乗る人は減っちゃいましたよ」
「まぁ、滅多に乗れるもんじゃないですしね」
「値段が安かったら毎回利用したいよね」
「ハッハッハッ、コイツの食費が凄くてそーもいかんのですよ」
ただ、冒険者達が間違えて攻撃してこないように高度を上げてるせいで寒い。
慣れてしまえばこの寒さも一興なんだが。
3日目の夕暮れ時、王都を避けて草原に降り立った。
「順調に行けば後2日で港町に入りますぜ」
「早いですね」
「何より楽」
「そうでしょう。この楽さが売りなんですがねぇ、お兄さん達も宣伝してくださいよ」
「ハッハッ、良いですよ。各地でこの旅のことを話して回りますよ」
「おお、そりゃー有り難いですね」
この草原に降りてから2時間程経とうとした頃、離れた所から魔法らしき光りが上がった。
俺とアイは不審に思いその場所へ歩み寄る。
[遊翼竜]
カインドドラゴン。
下級種で飛ぶことを生き甲斐としている。人になつきやすく、穏やかな性格。
体長も5メーターと大きいのだが、戦闘に関してはまるっきり。殆どの国では保護対象に認定されている。
人語は理解出来るが話すことは出来ない。




