第78話 馬と蛙と幼虫と
この階の主は、ケルピーだった。
馬に似た魔物で、ドロップ品である蒼きたてがみは魔導具やローブを造るのに重宝される。
「よし、ケルピーは俺が仕留める。アイはヴォジャイーノをよろしく」
「やだやだやだ!アイツ等気持ち悪すぎ!私がケルピーの相手する!」
「じゃあジャンケンだ!せーの!」
負けた。
ヴォジャイーノは蛙人間だ。見た目が物凄く気持ち悪く、生理的に受け付けない顔面をしている。
アイは真ん中に居たケルピーに雷魔法を浴びせた。
俺は横に並んでいる二体のヴォジャイーノそれぞれに2本づつ剣を投げつけた。
「ふん。近付くまでもない」
「まだ生きてるよ」
ほんとだ。頭部と腹部に刺さった方は消えていったが、肩と腹部に刺さった方は俺に向かって走ってくる。非常に気持ち悪い面をしながらだ。
慌てて二連砲銃を腰から引き抜き、射ち放った。弾は魔力弾。
その顔面に縦二つの穴が空き、消え始めるより先に転けて、足元まで滑ってきた。
「完全なホラーだな」
ドロップ品は鉱石だったが、鉄鉱であるためハズレだ。
雷をくらったケルピーは怯んだ。その隙に蛙人間の間を走り抜けたアイが斬りかかろうとした。しかし、ケルピーと目があった途端に水魔法の水圧を浴びせられ、押し返される。
アイにダメージは無いが、距離が開いてしまった。
ケルピーはもう一度水魔法を射ってきた。それを見切ってすり抜けて走り際に剣先を脇腹に入れていった。
とどめの雷魔法を受けて消えていき、ドロップ品だけが残った。
「見てこのたてがみ、凄い綺麗!」
「ケルピー特有の色だな。それでマントでも作ってもらえば?」
「そーしようかな」
この階層を後に降っていく。
次の階は砂漠と同じように一面が砂で覆われていた。
魔物の姿がない。恐らく砂の中に潜っているのだろう。
警戒しながら1歩ずつ前へ進むと、砂の中から大口を開けたサンドラーバが飛び出してきた。
この魔物はサンドワームの幼体で、人間よりデカい。
警戒するのは鋭い牙が並んだ口と不意討ちによる攻撃だけだ。
アイに砂を巻き上げて貰おうと風魔法を撃つように頼んだ。
出るわ出るわ芋虫だらけ。
コイツ等は刺しただけでは致命傷にならない為、頭部と胴体を切り離すのがてっとり早い。
俺は長剣で、アイは風の刃で頭部を斬り落としていった。
「何匹やった?」
「数えてない!数が多すぎて魔力持たない」
「なら下がってこれ飲んどけ」
「吸収剤?それならあるからいいよ」
それから程なくして片付いた。
途中、足に噛みつかれたが回復魔法で治せる程度だった。
ドロップ品は小さな牙。これは回復薬に使われるので、小遣い稼ぎにはなる。
「さぁ今回は何が出るか」
「サンドラーバだったから、ワームじゃない?」
そして広々空間の部屋を覗いた。




