第64話 嘆き
首なしの抱擁竜が立ち上がり、両腕を振り暴れ回っている。
片方は生え途中のため、血を撒き散らしていた。
「あのチビ!最後の置き土産かよ」
まだ生きがあった指環竜を見やる。
アイが氷魔法で息の根を止めた。
「ごめん」
「いや、竜は生命力が強いからな。仕方ないさ。それよりもう一戦行けるか?」
「もちろん」
がむしゃらに暴れるだけの抱擁竜を水魔法で壁際まで押し流し、雷魔法をぶつける。
その間にシュヴェーラを喚び出して、全ての剣を四方から突き刺した所で、崩れるように倒れた。
「俺達の勝利だな」
「アハハッ。ようやく召喚出来たね」
「する暇すらなかったしな」
しかしまだ終わりではない。この二体を召喚した悪魔がいる。
俺達は一つ一つの扉を開けていく。
扉の向こうは狭い部屋となっていた。むしろ部屋とも呼べない。
4枚目の扉を開けると中から声が響き渡ってきた。
『来るな来るな来るな』
「お前が召喚主か」
『やめてくださいやめてくださいもうしません!ほんとです!』
「聞ける願いじゃないな」
『ここには何も居なかったんです!森に出て食べるしかなかったんです!それでも足りるわけない!』
「なんの話だ?」
『あぁー!クソ!クソ!クソ!ケテルの奴めぇ!俺をこんなところに送りやがってぇー!!このゲブラーを捨てるというのか!!』
「もう消えてもらう」
『ああダメだ。こんな所で取り戻せる訳なかったんだよ。クリフォトォォッ!!ケテルゥゥッ!!許さんからなぁーっ!!』
頭を抱え、叫び散らす悪魔に拵えを降り下ろした。
悪魔は黒い水溜まりとなった。
「あの悪魔捨てられたのかな?」
「知らん。抵抗もなくてやり易かったがな」
「なんかサキの方が悪く見えたよ」
「なんであれ悪魔は殲滅すると決めただろ」
峻厳の悪魔ゲブラーは此処に喚ばれ、力を取り戻そうとしたが魔物も人もいない。森へ出て食べていたが、それでも到底足りず下級悪魔程度の力しかなかった。
悪魔を倒し、広間に戻った俺達は階段の正面にある扉を開けた。
すると他と違い更に奥へと繋がっていた。
奥へ進むと、狭かった通路が拓けた場所へと出た。
そこにあったのは大きな金属門であった。




