第62話 金を抱く者
「ありがとうな、ジル」
「ありがとー」
「二人共、気をつけてね」
柱の上へと来た俺達は、そこにある金属製の扉を開けた。
「なんだこれ」
「信じらんない。何処かに繋がったってこと?」
その扉を潜ると別の何処かへ繋がっているようで、柱の上とは思えないほど広かった。
この世界とは思えないような建造物が並び、あちらこちらに人間サイズの機械人形が転がっている。
しかし、その建物も機械人形も朽ち果てたおり、錆やコケで覆われていた。
「凄いとこだな」
「ねえ。でも殺伐としてるね」
「ああ、寂しい所だな」
「生物いそうにないね」
しばらく歩いていたが、生き物を見かけることはなかった。
扉から最奥に下へと続く階段とその横にはガラス?張りの四角い箱がある。その階段は延々と続いているように見えた。
結構な時間が経っただろう。ようやく階段を降りた先の広間に出た。
「全面金属だぜ」
「大昔はこんな部屋が当たり前だったのかな?」
「これは特別だと思うけどな」
「いっぱい扉があるよ」
左右にそれぞれ3枚、正面に1枚の扉があった。それも大昔の物なのに外れているものは無かった。
取り合えず正面の扉に入ってみようかとなり、歩きだしたその時、床から光りが放たれ部屋に満ちた。
2秒程目を瞑ってしまった。
次に目を開けたとき、それは目前にいた。
とっさに盾を出して構えたが俺とアイは階段へと弾かれた。
「クソ!大丈夫か? 」
「なんとか」
「竜なのか?」
部屋を包んだ光りが消え、俺達の正面には筋肉質な竜と小さな竜の二体が並んでいた。
「グォォォォッ!!」
「抱擁竜に指環竜だと!?」
「あれが…」
俺達は即座に起き上がり剣を構えると、小さな竜がデカイ竜へ魔法を掛けた。抱擁竜の身体が白いベールに包まれ、更にもう1度、今度は黄色いベールに包まれた。
「あれは攻守向上の魔法よ!」
「底上げしたのか」
抱擁竜は地面を蹴り、此方へ距離を詰める。
「それなら此方にもある!アイ!」
「りょーかい!」
アイの防御魔法が俺に付与する。
そして前へと駆け出した。
[抱擁竜]
ファフニールドラゴン。全長は人間の倍くらいの大きさで、筋肉の塊のような中級種。
翼はあるが、飛ぶことは出来ず、攻撃時のバランスを取る役目をしている。
格闘戦を主とし、ブレスは全体攻撃に行う。
[指環竜]
ニーベルングドラゴン。150センチほどの小さい竜。
指環竜自体には殆ど攻撃力がないが、サポート魔法、回復魔法に特化している。
自分自身にも防御魔法を掛け、守りに徹する戦略を取る。




