第35話 猫寄りの虎
エルフの名前はハイレーン。俺達が向かう街、クレバスの北西に位置する森に住んでいるのだという。どちらかと言うと山寄りだそうだ。
「村長の話だと人でも魔物でもない魔力がここ何年かで増大していると。最近その気配が少しばかり減少したので私達が調査に出たの」
「私達?他にもいるのか」
「村の精鋭よ。各方面に一人ずつね」
「一人でこんな草原を歩いてたの?」
「と言っても私達は皆テイマーなの」
「その従魔はどうしたんだ?」
「あそこ」
こちらを睨み付けるように遠くの物陰から頭を半分だしている真っ白い虎?がいる。
「あの子凄い怖がりで魔物が近付いてくると逃げちゃうの」
「えぇ…」
「森ではそんなことなかったのに」
「そうなんだ…」
ハイレーンは真っ白い虎を宥めるように呼び、虎もそれに応え、ゆっくりのそのそと歩いてくる。
虎の風格が一切感じられない。
「その魔力や気配のことなんだが悪魔なのか?」
「ええ多分」
「それなら此処から更に西と南側に上級悪魔が居た。一体は倒せたが、一体には逃げられたんだよ。それとなく関係してるんじゃないか?」
「多分…ごめん、あんまり詳しくなくて」
「いいさ、それよりこの辺にもその気配はあるのか?」
「この草原や山からは感じないって言ってた。一番近いのは渓谷」
「そっちにも誰か向かってるの?」
「人間と関わりがあった者が渓谷に向かったわ」
やはり白竜の言うことは間違いないみたいだ。無駄足ではなくて良かったが、もしかしたら先に倒されある意味無駄足になるかもしれない。
「俺達はその渓谷に向かってんだ。そこに悪魔がいると聞いたんでな」
「だからこんな草原にいたんだ」
「ああ。そこで相談なんだが、ハイレーンも一緒に行かないか?」
「私も?」
「悪魔とやり合うなら仲間は多いほうがいいしもう一人のエルフと仲を取り持ってくれると嬉しいんだけど。なぁアイ」
「うん、私も話し相手が欲しいなぁ」
「じゃあ、私で良ければ」
「よし決まりだな。宜しくな!えーっと」虎を見る。
「ミィ」
「宜しくなミィ」
「ニャゥ」
!?…鳴き声猫じゃん…
アイが笑いを必死に堪えている。
「ミィちゃん宜しくね」
「ニャァ」
アイが吹き出した。
ハイレーンが不思議そうに見ているが、この辺の虎はニャアと鳴くのかもしれない。
俺達三人と一匹は渓谷を目指す。
[役職:モンスターテイマー]
常に従魔と共に行動し、戦闘においては主に従魔に指示を出し戦わせる。人によっては共に戦う。ライダーがその例だ。
[白虎]
タイガータイプ。人語は話せないが理解出来る知能を有する。
雷魔法に優れ、それを活かした多彩な攻撃を仕掛ける。何より素早さが高い。




