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召喚師と竜の誉れ  作者: 柴光
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その後

 


[アーシェ]

 召喚師となったアーシェはサキからジルコート、ジャンヌを託されて三人で極東を目指した。

 目的はサキとアイの故郷、今となっては古びた墓石が立つだけのかつて町だった場所に花を手向けに行くこと。


「サキさん、アイさん、私はアナタ方のお陰で自分を取り戻せた事、感謝してもしきれないわ……輪廻転生があるならばまた一緒に冒険にでましょう。暇を見てまた来るわね」


 足許に生えた短い草が揺れる中、真新しい墓石に背を向けて立ち去るアーシェは1度だけ振り返り、再び歩き始めた。




[ギアス]

 ルティの召喚が自在となったギアス、港町を出てサキ達と同様に冒険者を目指す事を使用人の婆やに伝えると。


「この町の事は気にしないで好きに生きると良いですよ。旦那様と奥様がお亡くなりになってからは坊っちゃん一人で全てを背負いこんでいましたね。 自由に在られた方が奥様もお喜びになると思います」

「ありがとう婆や。父さんは怒りそうだけどね」

「いいえ、きっと応援してくれますとも。町長には私から伝えておきます」

「ううん、僕が行くよ。ちゃんと伝えてくるから安心して」

「御一緒します。しばらく坊っちゃんのお世話が出来そうにありませんもの」

「また子供扱いして……でもそうだね、一緒に行こうか」


 町長と居合わせた住人達は二言返事で了承し、別れを告げてギルドのある街まで旅だった。


「師匠、僕もSランク目指して頑張ります!暇な時は見守っていて下さい」


 空へ向かって語りかけたギアスは青空の下街道を進む。




[セシル]

 アーシェと同じく師の称号を得たセシルに待ち受けていたのは、同族のエルフによる質問攻めであった。

 それは何日にも及び、解放されたと思えば古くからの知り合いである冒険者達に捕まって三日三晩宴に付き合わされる羽目となってしまう。

 ようやく帰宅を許されたセシルに一人の冒険者が尋ねた。


「これからどうするの?」

「そうですね…取り合えず師の名に恥じぬように、彼等に恥じぬように生きたいと思います」

「この後の事を聞いたんだけどなぁ」

「あ…そうでしたか」

「ハハハ、セシルらしいね」

「どういう意味ですか!?でも、そう在りたいとは願っています」

「そうだね…」


 冒険者もまた今後を語り始め、酔いの覚めぬ中二人朝まで未来を、何より現在の平和を守るのが残された者の使命だと決意する。




[イグニス&エリュテイア]

 後方支援をしていたイグニスに被害はなかった。それ故サキ達の死を知ったのは後になってからだった。


「若い命と引き換えの安らぎとは…」

「何しんみりしてんだよ、爺さん」

「エリュや、もうお主も自由に生きたらどうじゃ?ワシは元々引退した身、もう腰を落ち着かせたいと考えておる」

「お、それもいいな!だがな爺さん、俺が爺さんの下を離れる時は看取った後って決めてんだ。それなりに楽しんでるし心配すんな」

「ホホッ、おんぶに抱っこで世話になるぞ」

「今更だな。おい、あれ黒と白じゃねーか!?」

「んー?ワシには良く見えん」

「げっ!アイツ等何のようだよ」

「ほれ、行って来れば良かろう。積もる話もあるじゃろうて」

「俺はねぇけど、しゃーねぇ行ってくる」


 飛び立つエリュテイアを見送ったイグニスは近くに腰を下ろして呟いた。


「二人で余生を過ごすのも悪くないの」


 じゃれ合う三竜に暖かな眼差しを送り微笑んだイグニスは長く平穏な日々が続くことを願った。




[ノワルヴァーデ&ブラン]

 復活を果たした彼女達は主であるアイを失ったことを嘆き、自分の不甲斐なさを責めるノワルヴァーデだったが、ブランに宥められて落ち着きを取り戻した。


「まずはやるべきことをやりましょう」

『銀を探す』

「銀でしたらアーシェさんと一緒に居るはずです。探しましょう」

『その前に、赤が近くにいるかも』

「そのようですね。挨拶くらいしておきましょうか」

『白に任す』

「黒は内気過ぎます、そんなんだからいつまでたっても自立出来ないんではないですか?」

『…』

「冗談ですって!ほら赤も気付いたみたいですよ!」

『銀に言い付ける』

「怒らないで下さい!謝りますからー」


 エリュテイアと合流したノワルヴァーデとブランは、暫く再会を喜んだ後ジルコートを探しに気儘な旅を始めた。

 また彼女と出逢うのは先の話。



 落ち着きを取り戻す中、神と崇められる存在のうちの一人だけは苛立ちを隠せずにいた。

 思い通りに行かない事を。

 神竜が敗れた事を。

 かき混ぜた筈の世界が元へ戻ろうとしている事を。

 冥界が邪魔だてした事を。

 旧天使が敗北した事を。

 穢らわしい連中が今だに傍に居る事が赦せないと。


 ―早く、早く、ハヤク、我ガ忠実ナル僕ヨ、早ク悪魔共ヲ、早く我に、我に安泰を―


 神と呼ばれし者の周囲には何十体もの偽神竜が造り出され、来る日を待ち望むように咆哮を上げていた。

 近い未来、天使と悪魔の対比する翼を持つ偽神竜が地上を埋め尽くす日が来ようとしている事は、まだ誰も知らない。












 

これにて完結となります!

最後までお読み下さった皆様、誠に有難う御座いました。


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