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召喚師と竜の誉れ  作者: 柴光
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第291話 新たなる世界

明けましておめでとうございます。


 


「やった!やったよ!!サキ!!」

「やりましたね!サキさん!アイさん!」

「ああ!アイもギアスも良くやったな!それにセシルが居てくれて本当に助かった」

「皆さんの努力の賜物です。早く帰ってふかふかのベッドで寝たいですね」

「良い考えだな。アイ、幻影でアーシェの事迎え行ってくれるか?」

「オッケー!任せといて!」


 はしゃいでいるのは俺達だけ…と言うわけではないようだ。歓喜の声がそこらかしこで聞こえてくる。

 この喜びも大事な仲間であるアーシェとも分かち合いたい為、アイが造り出した幻影ノワで呼んできてもらうように頼んだ。

 その間にも中心街に進行していた連合軍が集まり始め、より一層騒がしく誰しもが浮かれていた。

 だが、喜びも束の間の出来事となってしまった一言がジルコートから届く。


「マスター。何か感じるわ…何か、来る」


 頭上に舞い降りたジルコートは何かを感じ取り、俺達はその言葉に静まり帰った。

 ジルコートは城のあった場所、その上空を見つめて眼を離そうとしなかった。


「この期に及んで何が来るって言うんだ」

「この感じ…」

「知ってるのか?セシル」

「天使と悪魔が入り交じったかのような……知っています。この感じは…」

「カマエルとヨフィエル」

「ジャンヌ、感じるのか?」

「牢獄されていたはずですが。マスター、下がっていて下さい」


 ジャンヌが俺達の前へ出ると、両手の剣を構えて何かの方を注視する。

「来る」とジルコートが促した瞬間、星明かりとは異なる二つの赤い発光体が崩壊した城の上へと降りてくると、それは人の形を成して高笑いをあげ始めた。


『アーハハハハッ!皆満身創痍って感じかなぁー??』

『…手強いのもいる』


 辺りがざわつき始めたって事は皆に届いているのだろう、女の声だがアイツ等の念話は他の悪魔より不快な感じで頭に響く。


『疲れきっている所申し訳ないんだけどー、殲滅させてもらうね笑』

『我もとへ来い、ラグナロク・アポカリプス』『おいでよ、ティリンス・アクロポリス』

「ラグナロク…だと!?」

「ティリンス・アクロポリスもです。サキさん、もしかして…」

「そんな訳ないだろセシル。別個体のはずだ」


 女型二人の前へ召喚されたのは俺のよく知る二体の召喚獣、もちろん別個体だろうがラグナロクとティリンスが立ち塞がり幾本もの剣を俺達に向けている。


「マスター…あの子達はマスターを主としていた召喚獣、同一体よ」

「そんなバカな…」

『あれれー?混乱してるヒトがいるー。無理もないよねー?この二人に裏切られたんだからさー笑』

「裏切られた、だと!?どーいう事だ!!答えろ!ティリンス・アクロポリス!!」

『…己が定めに従ったまで。悪く思うな』

「…ジル…頼めるか?」

「もちろん。叱って来ないと気が済まないわね」

「それなら私も連れて行って下さい!マスターを裏切るなんて言語道断です!!あの二人には痛い思いをさせてあげなくてはなりません!」

「ジャンヌ、邪魔はしないでね」

「貴女こそ、私の距離に入らないで下さいね」

「全く…」


 ジャンヌを乗せたジルコートはティリンスとラグナロクの元へ急速に近付く。

 ジルコートに迫る無数の剣、雨の如く降る大剣を紙一重で避けて行き一瞬にしてティリンスの懐へ潜り込むと、振り下ろされた剣よりも早くブレスを放って先手を打った。

 怯んだティリンスに対してもう一撃、二撃と食らわるも、背後から降り注ぐ大剣に邪魔をされて4発目は空振りに終わる。


『ジルコート、見違えたな』

「口下手な貴方に褒められるとは思っても見なかったわね」

『思ったことを述べたまでだ』


 竜と巨兵はまるで楽しんでいるかのように互いに力を振るいあい、少ない口数を交わしていた。

 押しきられていたティリンスは宙で操っていた大剣を地上へ落とし、自らが握る1本の剣のみでジルコートへ勝負を挑んだ。

 下から上へ、右から左へと薙ぎ払おうと振るうのだが、全てはジルコートの速度から産み出された残像を捉えていたのに気が付いた時、ティリンスは既に敗れたことを悟った。

 四方向から繰り出されたかのように見える最上級の光魔法がティリンスを包みこみ、決して折れぬ大剣が地面へ突き刺さる音と同じくして『すまなかった』の一言が頭へ届いた。


「本当にバカね」


 ジルコートは俺の気持ちを代弁してくれたようだ。


 ティリンスの消失によりジャンヌと対峙していたラグナロクに隙が生まれた。

 宙を舞うラグナロクに対して飛べないジャンヌは、周囲を舞っている剣を踏み抜いて戦っている。

 何故こんなにも良い勝負をしている?ジャンヌが本気を出しても敵う相手ではないはず、だとジャンヌには悪いがそう思っていたのだが、俺の予想は覆されて一瞬の隙を逃さなかったジャンヌは、ラグナロクの攻撃に左腕を犠牲にしながら渾身の突きを繰り出した。


「マスターの痛み、解りましたか!?」

『…とっくに…知っていたよ…』

「それなら、良いです」


 金色の鎧もろとも貫かれたラグナロクは、ジャンヌを突き飛ばして舞っていた幾本の剣を自らに降らせて最後を遂げた。


『ムカつく!ほんとムカつく!!あのヒト、あんなのが居なければこんな気分にならなかったのにー!!』

「「マスター!!」」


 転移?ジルを上回る飛翔?俺の目の前にはさっきから喋っていたであろう方の悪魔?天使?が居た。


『ばいばーい』


 なんの抵抗も出来ずにいた俺の首目掛けてレイピアと思われる細剣が振るわれた。

 ドンッ!と俺は突き飛ばされ、何が起こったのか頭が追い付かないまま、目だけがその光景を直視していた。


「「アイさん!!」」


 アイ?セシルもギアスも何を言っているんだ?アイはアーシェを迎えに行ってるからここには居ないだろ、そうだろ?

 そうだよな!?


「アイ!!」


『邪魔してくれちゃって!』

「邪魔は貴方だわ」


 この台詞がアーシェの放ったものだと理解するまで少し時間がかかったが、女型の悪魔?と交戦するデポルラポルが目に飛び込んできた事によって意識がハッキリした。

 横たわるアイ、悪魔との間に入り盾になろうとしているギアス、アイに魔法を掛けようとひざまずくセシル。


「アイ…?セシル!!アイは!?アイはどーなんだ!?」

「サキさん!落ち着いて!今セシルさんは回復魔法を唱えてる最中よ」

「アーシェ、何が、何が起きたんだ!?俺はアイに助けられたんだよな!?」

「ええ、飛び出したアイさんは…アイさんの…頭に」


 アーシェの言葉を聞いて信じられなかった俺はアイの元へ近付き、綺麗な顔付きに幼さが残るいつも見知っている顔を見つめる。

 赤黒く塗られた血は、瞼を濡らし風になびいていた髪を固めて俺の足許まで流れてきていた。


「ごめんなさい。もう、回復魔法は…」


 謝るセシルは最後までハッキリと言おうとはしなかったが、回復魔法の効果が現れないのは何故か、俺でも分かる。

 死。

 アイは即死だった…身を呈して俺を守ってくれたアイに礼どころか一言も言えないとは。


「セシル、もういい。少し、ほんの少し、アイと二人にしてくれ」

「……分かりました。全力でお守りします!」


 座り込んだ俺は、膝にアイの頭を乗せて出来るだけ血を拭ってあげようと軽く軽く袖で拭いていく。


『あー!もうしつこいなぁー!!カマエル!もうやっちゃいましょ笑』

『少し待て、この銀竜、強い』


 ジルコートはカマエルと呼ばれる悪魔を相手取っていたが双方引けをとらず、もう一体の女型もまたデポルラポルに加えてジャンヌも相手にしているのに余裕を見せていた。


『もういいよね。ジョーカー、使っちゃうんでー笑』


 ジャンヌとデポルラポルを突き飛ばして女型は上空へ上がり、それを追うようにカマエルもまたジルコートを払い除けて二体は再び同じ立ち位置へ並ぶ。


『『我等こそが創造主!古き時を滅し 新たな夜明けを宣言する 降臨せよ 新世界竜』』


 地平まで夜空を照らす光りを放つ一体の竜が魔法陣から舞い降りる。

 新世界竜、見た目こそジルコートと大差ない大きさでもその力は誰しもが知っている。


「世界を無に変えた神竜……マスター…アイの仇、取れそうにないわ」


 新世界竜だのなんだのもうどうでも良くなってきている俺がいる。

 そんなことではアイに申し訳立たないのに気持ちが前を向こうとしないが、仇を取らなきゃおちおち死ねない。


「どうせ死ぬなら一子報いてやろうじゃないか」

(ならばその魂、私が貰い受けよう)

「その声…」


 俺はアイテムボックスに手を入れて残っていた竜の珠を取り出してみると、外へ出した瞬間持っていられないほどの熱を発した為思わず放り投げてしまった。

 落ちて砕けた珠から久々にそのツラを拝んだ小さい竜は出現するやいなや。


『竜種の魂をもつ者よ、私に託してみるか?』












[新世界竜]

 シャングリラドラゴンと呼ばれ、ある土地では崇められ、ある土地では畏怖の象徴として奉られてきた神竜。

 全長は15メーターに満たないが、その力は三体の監視者を凌ぐという。

 終神ロキそのもの、または半身という説がある。














次で最後の話になると思います。

ここまでお付き合いいただき誠に有難うございます!!

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