第30話 白竜
「騙してすまなかったのう」
「どーいうことだ?」
「銀竜殿の姿を見たからにはもう争う必要などない」『白様は銀様の安否を心配してらしたぞ』
「私の?」
奥から一人の人間が歩いてくる。
「誰だ?女の子?」
『白様だ』
「白竜…」
「うっそ、ちょー可愛い女の子じゃん」
ジルコートが人型になる。
「白…」
「久しぶりです。今まで心配していたんですよ」
「あの、ごめん」
「元気そうで良かったです。青が暴走し銀が敗けたと聞いてそれっきり。なんの音沙汰もなくどれ程心配したか」
「あのだからね、ごめんって」
「…召喚契約をしたんですね」
「ええ。黒も」
「!!?黒のやつも!?そこの男とですか?」
「いいえこの子と。黒も私を心配して来てくれたの。そして成り行きで」
「…そうでしたか。黒が先に見つけたんですね、私は敗けたんですね」
「そんなことない。心配してくれてありがとう」
「なら私も契約する!」
!?
「いやそれは…マスターァ」
『それはダメ』
「黒」
『貴女には貴女しか出来ない使命がある。全うし、導いて』
「言われなくてもわかっています。銀の元気そうな顔見れたので満足しました」
「それは良かったわ」
「では私達は行きます。忠告しておきますが、悪魔の進行は早いですよ。」
「なんだと?」
「私達も止めていますが手数が足りません。それに協力的ではない竜も多く、敵対する者も少なくありません。ですので急いで下さい。」
「君達は何処へ行くんだ?」
「…貴方達にはこの先にある街に程近い渓谷を任せます。それでは」
人型から竜の姿になっていく白竜。その純白な鱗は美しく、見るものを釘付けにしてしまう。
『銀またそのうち会いましょう。…黒もね』
「ええ、必ず」
『ついでね』
そして白竜は三体の幻影竜を引き連れ、飛び立っていった。
「いつノワを出したんだ?」
「なんか出たがってたの感じたの」
『…』




