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召喚師と竜の誉れ  作者: 柴光
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第286話 終わりと始まり

 


『精霊王まで墜ちたか』

『青、あれ見て』

『分かっておる。蒼よ、全力を尽くさねばなるまい』

「敵機に対し分析を開始します。07単騎での勝率は42%。換装による最適化を行った場合は2割増します。よって敵召喚獣[ミトラ・マズダーラ]は07のみで構いません」

「バルディエル、アレを引き付けるというの?」

「計算上最も効率性が宜しいかと」

「ならアナタを信じるわ。頼んだわよ」

「了承しました。銀竜[ジルコート]。これより戦闘モードへ移行します…魔力の増大を確認。回避を推奨します」


 バルディエルはミトラが撃とうとしていた魔法を先に察知した為、此方へ放たれた魔力砲を全員回避することが出来た。

 ミトラの攻撃を回避しつつ、背部のミサイルを全弾射ち尽くして同時にフルチャージされたエネルギーライフルのトリガーを引くバルディエル。

 ミトラは防壁を張ってそれらを防ぐのに気を取られ、左右からジルコート達が抜けていくのを許してしまった。


「不覚!」

「外部装甲のパージを確認。ガヴィアンテパックスタンバイ、換装完了。各部作動良好。これより近接戦闘へ移行します」


 今までは背負ったバックパックのみ変更していたバルディエルだったが、今回の換装では装甲までも新たな形で取り付けられた。

 元々細身だったバルディエルが更に細くなり、背中には左右二基づつのバーニアノズルを搭載した独立可動式スラスターの初めて見るパックを装備した。

 このガヴィアンテパックは完全な近接戦闘特化型であり、武装も両手剣と腰部にマウントされたプラズマソードのみでライフル等の飛び道具は一切積んでいない。

 それ故に、ミトラを翻弄する程の機動性を見せつけてくれる。


「速いが動きが単調だぞ、機械兵!」


 回避と攻めの繰り返しで動きを読んだミトラはバルディエルの隙を見つけて突きを繰り出したものの。


「!?誘い込まれた!?」


 バルディエルはわざと隙を作りミトラの攻撃を誘導したのである。

 上から降り下ろされたバルディエルの実体剣はミトラを切り裂くも。


「ただでは、やられん!」


 同時に横へと払ったミトラの剣もまたバルディエルの腹部中央まで切り裂く。

 深傷を負った両者はその場に膝を突き、バルディエルは爆破、ミトラは粒子となって消えて相討ちという形で幕を閉じた。




 アルカンシエルへ向かったタルタロスと冥庭竜のズクは、複数のブレスを避けながら距離を詰めて行き、目前へと迫った二人は剣と鎌状の腕を振りかざした。


「唸れイクシオン!」

「その首、貰います」


 ガキンッ!と、二人の得物は見えない壁に阻まれてアルカンシエルに届くことはなかった。


「コイツ…何時の間に」

「常に防御魔法を張っているとでもいうのですか」

「下だ!ズク!!」

「!!」


 呆気に取られてしまったズクの真下から鋭く鋭利な尾が迫り、タルタロスのお陰でギリギリの所で横へ回避に成功するも、避けた側から振るわれた掌の攻撃を受けて弾き飛ばされてしまれて城壁へ叩きつけれてしまったズクとタルタロス。


「クソ、痛ぇ」

「申し訳ありません。しかし、これはチャンスでは?」

「確かにな」


 怪我の巧妙なのか、ズク達の前には鎮座したケテルの横顔があった。

 ケテルは気付いているのかいないのか、それとも興味がないのかズク達を見下ろすことはなく、ただ真っ直ぐを見ていた。


『冥庭竜、奈落の王、アルカンシエルは私達が相手をするわ。アナタ方はケテルを』

「この声は銀竜からか」

『承知しました。お任せします』

「おい、良いのか?銀竜達に勝てるとは思わなんだが」

「それでもやるしかありません」

「それもそうか…よし、行こう」



「良いわよね?皆」

「今更だな!散開して叩くぞ!白、着いてこい」

「赤、命令ですか?」

「白は赤の援護をお願い」

「銀がそう言うならやりましょう」

「けったいな奴だな」


 エリュテイアとブランはアルカンシエルの右舷へ、ジルコートとノワルヴァーデは左舷、残りの三竜が正面から飛び込んでいく。

 三方向から攻めることによってアルカンシエルの攻撃を拡散させる事には成功しているも、此方の攻撃は防壁で塞がれて届かず、ジルコート達は次第に避けるどけで精一杯になってきていた。


『このままでは…』


 アルバスがそう嘆いていると、飛翔する悪魔達を片付けた召喚獣の竜種が次々と集まり攻撃に加わり、更に遠くから近付く二つの影があった。


「待たせたな、嬢ちゃん達」

「遅くなってすまない。遅ばせながら加戦するぞ」

「紫!!」


 二竜の姿を見たジルコートは安堵の表情を見せた。

 遅れてやってきたのは竜胆竜のベナフと灰簾竜のムアンの紫竜親子、先程集まった竜達を含めて14体もの数でアルカンシエルに挑む事が出来る。

 劣勢だったジルコート達は物量で押し始めていた…しかしそれも束の間、アルカンシエルの十もの首を1つたりとも落とすことが叶わず、味方側が次々と墜とされて行き、カルテス、ニエーバも消失してベナフも叩きつけられてしまう。


「クソ!良いとこ無しかよ!」

「無事か?ベナフよ」

「親父…ああ、なんとか」

「突破口は俺が作る。銀の嬢さんに念話を送れ」

「は!?どうやって作るんだよ!?」

「いいから早くしろ」


 ムアンに急かされたベナフは味方にその旨を伝えてムアンに続くと、アルカンシエル目掛けて高速で近付いて行く。


「せめて、せめて1つだけでも!」


 ムアンに反応した1つの首がブレスを放ち、それを回避して前面に防壁を集中させて互いの防壁がバチバチとぶつかり合う。


「全霊でも届かないのか!?」

「手伝います」

「白のお嬢さん!」


 ブランもまた防壁を展開させて二竜で一点集中を狙うと、その箇所だけ穴を開けることに成功する。


「今だ!飛びこ」

「親父ー!!」


 ムアンに立てられた牙は、全身に大穴を開けて無情にもアルカンシエルの喉元へと押しやられてしまう。

 ムアンの血を浴びたブランも同様、他の首から逃れる事が出来ずに血が滴る中飲み込まれた。

 それでも竜達は二人が命懸けで開いてくれた可能性へ飛び込んで魔法、ブレスを放ち続けた。

 何体もの竜が牙の餌食にされてしまったが、その犠牲のお陰でようやく1つの首をもぎ取り、続けて2つ目もと意気込んでいると。


『なんと無慈悲な』

「嘘でしょ…」


 切り取ったはずの首が再生されるのも目撃したアルバスとジルコートは絶望を感じた。


「再生持ちとは、な。親父達の犠牲は無駄だったって言うのか!!」

「…紫…白、ごめんなさい…」

(我を喚ぶように伝えよ。銀竜ジルコートよ)

『誰なの?』

(我は創初竜と呼ばれる者。主に伝えるのだ。)

『創初…わかったわ』


 ジルコートに呼ばれた俺はアイテムボックスへ手を入れて遺跡で入手した竜の珠を取り出した。


「これであの惨状が変わるのを期待しているぞ!頼むぞ」


 放り投げた珠は空中で弾けて空に広がる雲を裂いて星の海まで届く青い火柱を上げた。


『汝の願い、聞くまでもなかろう。任せてもらおうぞ』


 宇宙(そら) から俺達を見下ろす超弩級の竜、創初竜はアルカンシエルへ視線を向ける。










[創初竜]

 ノーネームドラゴンと呼ばれ、古神と並び世界が作られた時に誕生した古の竜。

 超弩級の全長は星を囲める位あるだろうと推測され、力は衰えては来ているが神竜より遥かに強大な力を有している…はずだと、本人は唱える。



 













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