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召喚師と竜の誉れ  作者: 柴光
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第284話 尊さ

 


「ジル、飛んでる蝿共を頼んだぞ」

「随分と安い仕事ね、お任せをマスター」

「任せたよノワ、気を付けてね」

『はい。主も』

「温存で貴女一人だけど頼んだわ」

「青は荒いからいらないよ」


 アルバス、酷い言われようだがニエーバの本心はきっと寂しいのだろう。

 だが悪魔側の召喚獣が出ていない以上いくら治癒士が居るからとてアーシェを消耗させるわけにはいかない。

 既に赤竜のエリュテイアが先行している空はジルコート達に任せて俺達は地上の悪魔を片付けていく。

 道にひしめく敵、建物で限定される行動はストレスを感じる。

 ふと横を見るとクリスとダールが次々と悪魔を退け、遠方にはロイの揚陸艦と搭載機が持ち場の上空を制圧し、他の召喚獣達へ加勢しに行くようだ。


「空は大丈夫そうだが、この数は骨が折れるな」

「文句言ってないで手を動かしなよ。私もいい加減コイツ等の顔見飽きたけどさぁ」

「だよなぁ」


 俺と並んで悪魔達を薙ぎ払うアイも嫌気が刺してきたようだしそろそろと思い、剣を振るいながら召喚口上を唱えてジャンヌを喚び出して加戦させる。

 第一目的に後方の治癒士、アーシェの援護、第二に悪魔の殲滅を頼むとジャンヌは駆け出して行った。


「アイツ、人の話聞いてたのか…」


 ジャンヌは前線で暴れているからなのか悪魔の押しが弱まってきたように思えたその時、ジルコートから念話が届く。


『マスター!第二波が来るわ』

『新手か!?押さえられるか?』

『この数、無理そうね…』


 弱音を吐くジルコートを見ると、数千と飛び回る悪魔の群れがそこにあった。

 その殆どが中級以上の実力がある連中だとか…


『マスター!!下がって!!』


 再び念話が届いたと同時に俺達がいる地上へ空から複数の魔法が放たれた。


「アイ!!掴まれ!クリス!ダール!下がれ!!」


 アイを引き寄せて転移魔法でアーシェがいる位置まで下がり、俺とアイは放たれた魔法を回避出来たものの、前線の悪魔を含めた他の連中の殆どは直撃を受けてしまい、ダールはクリストファーを守るべく召喚した守護竜を盾に。

 本人は…


「クソ!ダール!!クリス!無事か!?」

「あ、ああ…サキ殿、ダール殿が…」

「しっかりしろ!次が来るぞ!!」

「…クッ!おのれ、おのれー!!」


 駆け出すクリストファーは目前の敵を薙ぎ倒し、怒りをぶつけていた。


『ジャンヌ、無事か?』

『はい、何ともありません!マスターこそ』

『俺は平気だ。それよりクリスが前に出た。援護してくれ』

『御意』


 俺も出来るだけクリストファーと離れずに前線へ戻り、アイには上からの攻撃に備えさせ、アーシェにアルバスとカルテスを喚んで貰うことにした。

 興奮状態で自我が保てていないクリストファーは無我夢中で悪魔を切り裂き、ジャンヌと俺は左右で様子を見ながらの戦いになっていた。


 空は鎮静化が見えつつあるなか、地上の敵数は相変わらずであり、疲れが見えてきたと感じ始めていると、一体の悪魔がクリストファーの背後へ回った。


「アゲート!」

「!!サキ殿!」


 転移魔法でクリストファーの背後へ近づく敵を倒したものの、それに驚いたクリストファーが振り向いた瞬間。


「前だ!クリス!」

「ガッ!…こ、のぉー!!」


 2本の剣がクリストファーの鎧の隙間を貫き、振るったクリストファーの剣は二体の悪魔を2つにした。


「ジャンヌ、ここは任せたぞ」

「御意!何としても死守してみせます!」


 膝から崩れたクリストファーを抱えて治癒士の元へと転移し、回復魔法を掛けて貰うと予期せぬ回答が帰ってきた。


「き、効きません」

「何を言っているんだ?回復出来ないのか!?」

「はい!傷口が魔法を弾いて止血が出来ないんです」

「そんな事があるわけないだろ!!」


 声を荒げてしまったが、治癒士が言うには悪魔の持つ武器が魔法を阻害して再生はおろか血止めすら出来ないという。

 これに似たような力?武器?を持つ悪魔と対峙したことがある。


「アイツ等の持つ得物1本1本がそんな力を秘めているのか…どうにかならないのか?」

「それが…「もう、いい。私に構わずに行ってくれ」

「クリス、何が「すまない、が、この子も一緒に連れてってくれぬか?」


 そう言ってクリストファーは愛刀を俺に渡そうとする。


「これはクリスのだろ。しっかり握って待っていろ。すぐに終わらせてくる」

「もう、無理なことは分かっている……頼…サ…殿」

「クリス!クリス!!」


 クリストファー、ならば供に片付けに行こう。

 俺は託された剣を握りしめジャンヌの元へと戻ると、何やらジャンヌも悪魔達も様子が可笑しい。


「どうした?斬られたのか!?」

「いえ、この感じ…来ます」

「大物か」


 ジャンヌの視線の先に目をやると、遠くに見える半壊した城、その前方に黒く視界を妨げるモヤが広がって徐々に城を隠していった。


「…ケテル」


 ジャンヌはそう呟き、そのモヤから目を逸らさなかった。









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