第279話 対最楽園竜
『骨が折れるのう、コクウンの』
『そうじゃのう、ちと本気で取り組まんといかんのうイカヅチの』
エデンの砲撃を回避しながら懐へとブレスを吐き出す雷竜と雲竜だが、硬い外甲に阻まれて煤がつく程度で留められてしまっていた。
「年寄りは無理すんなよ!コイツ、俺の魔法をもろともしねぇー!」
『『年寄り扱いは酷いのぉ、赤いの』』
「事実だろ!おい、そのデケーので動きだけでも止めさせろ」
雷竜雲竜を凌ぐ力で攻撃を仕掛ける赤竜でもその防御力を破ることが出来ずに苛立ちながらワスプ級を操るロイに指示する。
それに応えようとしているロイに容赦なくエデンの砲撃が跳んでくる。
「クソっ!デカイと格好の的だな!!艦搭載機全機出撃させろ」
既に数十機が墜とされている中、残った機械兵とファイターを発進させて進路を切り開こうと試みる。
二度目の物量作戦で新たに発進したハリアーⅣとナイトシーカーは編隊を組ながらエデンへ接近して攻撃を開始し、それぞれのミサイルやエネルギー弾を着弾させて徐々にダメージを与えていく。
いや、ダメージといえるような損傷は見受けられず、一度目と同様に次々と墜とされる機械兵とファイター、そしてワスプ級のミサイル攻撃を撃ち落としたエデンは前方、ワスプ級へ向けて収束された魔力砲を放った。
「マズイ!避けろ!!」
「間に合わ…」
凄まじい破壊力の魔力砲がワスプ級を貫いて爆発音と共に轟沈させてしまった。
それでもロイだけは寸での所でバルディエルが救出してくれたのだった。
ちなみに俺達は後方で降りている。
「お前さんは、そうか来たのか」
そのまま俺達の元へと連れてきて貰い、ジルコート達と共にエデンへ飛翔して行った。
「助かったぜ!もうダメかと思ってたわな」
「再会早々死なれても困りますから」
「死んでも死なねー男が俺だ!だけどほんとに助かったぜ!」
「強力な皆が居るのにアレ、びくともしてなくない?」
「いやぁ、恥ずかしい話なんだが、アイツにダメージらしいダメージは与えられてねぇんだわ」
「見ため通りって所かしら」
「ジル達に任すほかないな。俺達が近付いても足手まといだろ」
「確かにね」
「よし!俺も喚ぶか!今回は大人しく召喚士をやらせてもらうぜ」
「賢明な判断だわ」
「「確かに」」
ロイは東雲竜のジンガを召喚して攻撃に参加させた。
飛べない召喚獣の地上部隊は既に全滅、残るはエリュテイア、雷竜雲竜に加え、ジルコート、ノワルヴァーデ、ブラン、カルテス、ニエーバ、アルバス、ジンガの10竜とバルディエル。
「おう、無事だったか、銀…白も青もいるのか」
「ええ、貴女こそ元気してたかしら?」
「してたように見えるか!?」
「フフ、見えるから聞いたのよ」
「そうかよ!嫌味な奴だぜ」
軽口をたたきながらエデンの砲撃を回避するエリュテイアとジルコート。
『真面目にやらんか、食らっても助けてやらんぞ』
「青の言う通りです。油断して良い相手ではありません」
「わぁってるよ!うるせーな。後から来たんだからその分働け、白」
「サポートはしますが攻撃は任せます」
「人任せかよ!」
『ほれ、お主等』『狙うは一点に集中するぞい』
と、雷竜雲竜の指示で動き出したジルコート達は、最も弾幕が薄い上部へと上昇して攻撃を集中させた。
その間バルディエルとブラン、カルテスがヘイトを稼いでくれている。
竜達は一斉にブレスをぶつけるものの、その外甲が破れる気配はない。
『マスター、アーシェさんにアレを』
『衛星兵器か』「アーシェ、奴に撃ち込んでやれ」
「わかったわ!アイさん」
「うん」
アイの手を借りてアーシェは衛星兵器シャルウルを喚び出して、竜達が距離を取ったのを見計らい強大な一撃を天から撃ち落とした。
「やったのか!?」
「手応えはあったわ」
ロイが目を凝らして爆煙に呑まれたエデンを見る。
次の瞬間、全方向に砲撃が放たれて避けきれなかったニエーバとバルディエルが消失してしまった。
「アレだけの攻撃を食らっても破れないのか…」
「気を落とすな、サキ!まだ活路はあるだろ!」
「そうですね!まだ、まだだ」
ロイの言葉は何を示しているのか解る。そして俺は口上を唱えてティリンス・アクロポリスを喚び、その大剣はエデンに襲いかかり、最後にアクロポリスが手にした大剣を振りかざすと岩なだれのように音を立ててエデンの外甲が地面に落下していく。
「やった…」
「終わったのね」
「だと良いけど、アレは何かしら…」
「まだ、続きがあるみたいだな」
殻を割った中に白身と黄身があるようにエデンの本体と呼ぶべきそれは姿を現した。
純白に輝く翼を拡げて眠りから醒めたかのように背を延ばすと、一撃の眩いブレスを360度回転しながら放ち、ジルコート達を焼き払った。




