第274話 対サナトス
『何匹増えようが』『我等に敵わぬことを『教えてやろう』』
体当たりを仕掛けたジェネラルに対してサナトスは掌からビームによる刃を形成し、迎え撃とうとする。
「回避だ!ジェネラル!」
「間に合わん!任せろ」
回避を促すハーキュリーだが、ジェネラルは空中での旋回性能は著しく低く勢いの付いた突撃は止まることはなかった。
そこでラミントンは二機の間に防壁を展開させてサナトスの攻撃を防ごうと考えたのだ。
『フィールドなど引き裂いてくれるわ』
『頼んだぞ、兄弟ぃ!!』
出力を増したビームブレードが防壁もろともジェネラルを貫き、機能停止へと追いやった。
「なんと…」
「すまない…防ぎきれなかった…」
コクピット内でニヤリと笑う悪魔達だが、即座に目標をロドスへと切り換えてライフルでの連射を行う。
しかしロドスの表皮に煤が付く程度で傷を追わすことが出来ないでいると、痺れを切らして接近戦へ移行しようとしていた。
「ルガ、来るぞ」
「はい!ロドス迎え撃て!」
「ルガ君、引き付け役を頼んだぞ。隙を見て奴等の首を掻き斬ってやる」
「了解です、マーデルさん」
マーデルはロドスを囮にしてサナトスをすり抜けることが出来るデスフリッカーで直接悪魔に攻撃を仕掛けようと考えていた。
サナトスのビームブレード、ロドスの拳がぶつかり合って火花が飛び散る中、デスフリッカーはマーデルの目論み通り前後に座る悪魔の背後へと近付いて鎌を振るうも押すことも引くことも出来ない程の力で刃を掴まれてしまった。
『気付かないとでも思ったか』
『雑魚の相手などしておれん』
そのまま刃を砕いた悪魔は、デスフリッカーに手をかざして一粒の黒い球体を生み出した。
『消え失せろ』
抵抗するも黒い球体に吸い込まれてしまうデスフリッカーを二匹の悪魔は笑いながら眺めていたのだが、機体に衝撃が走り慌てて前方を向き直すと、ロドスの両腕が胴体を押し潰そうとせんばかりにガッチリとホールドしていた。
サナトスのコクピット内には警報音が鳴り響く。
『油断したな兄弟』
『振り切れなければ』
『切り刻むだけだ。最大出力で応戦する』
2本の手に装備していたライフルを放り投げ、4本の掌からビームブレードを発生させたサナトスはロドスの両肩と頭部目掛けて振り下ろした。
ゆっくりだが確実に溶断されていく両肩、頭部、悪魔達は完全にロドスに気をとられていた。
そのチャンスを逃すまいと剣士ソルロがサナトスのメインカメラ目前へと転移して魔法で強化されたロングソードを突き立てる。
「と、通らねぇ」
『っ!危なかった』
『どうやら力及ばずといったところか』
「離れろソルロ!!」
その剣は貫くどころかヒビすら入れられなかった。
こんな筈ではと唖然としていたソルロに、ラミントンの叫びも虚しくサナトスの腕が襲って遥か後方へと吹き飛ばされてしまった。
「ソルロー!!」
「あ、アイツ等!!」
「二人共落ち着け、もうロドスももたない。撤退するか命を懸けるか選ぶんだ」
「俺は命を懸けるぞハーキュリー」
「俺もだ!」
「いや、マーデルはルガを連れて撤退してくれ。いいなハーキュリー」
「構わぬ。ルガ、聞いての通りだ。隙を見て撤退しろ」
「何故ですか!?」
「お前達が仲間を連れてくるまで機械兵の相手をするだけだ」
「俺達が食い止めてるから全力で冒険者を連れてこい。マーデルもいいな!?」
「…言っても利かないんだろ、どうせ」
「分かってるじゃねぇか」
「マーデルさん!」
「ルガ、男の覚悟に水を指すな。ラミントンとハーキュリーさんは大丈夫だ!」
「分かったなら早く行け!ロドス、主の護衛に専念しろ」
「ゴォォォッ!」
ロドスはサナトスの拘束を止めてルガとマーデルを連れてその場から離れていく。
「頼んだぞ」
そう呟いたハーキュリーの言葉はルガ達には届かなかった。
届いたのは爆発音とそれと共に上がった爆炎であり、ルガとマーデルはそれを見て全てを察してしまう。
だが止まることはせずロドスに急いで街へ向かうようにと伝えたその時、前方から何者かが此方へと向かってくるのが目についた。が、いつの間にかロドスの肩へと乗っている事に気が付くルガとマーデルにその男は。
「遅かったか。良く頑張ったな」
「あ、貴方は?」
「名乗る者でもない、後は任せて早く街へ向かうといい」
身の丈以上の拵えを肩に置き、ボロくほつれた黒い布を身に巻いたその男は突如と姿を消してしまう。
「なんだったのでしょうか…」
「わ、わからん…だがあの気迫、人ではないだろう。あの男なら機械兵と渡り合えるかもな」
「なら此方も」
「ああ!」
「ロドス!戻って」
ルガとマーデルはその男の力を信じてハーキュリー達の元へと戻る事にしたのだった。




