第273話 死を司る天使
ギルドから指名された二人組と三人のパーティは悪魔退治へと向かっていた。
「情報によるともう間もなく着きます」
「そうか、いつでも喚び出せる準備をしておけよルガ」
「はい、師匠」
師弟である召喚士二人組、白の騎士ことハーキュリーとルガは以前サキ達と共に悪魔退治を行った者達だ。
「気を引き締めるぞお前ら」
「「おぉ!」」
「今回は色付きも一緒だからとて油断するなよ」
「リーダーも色付きじゃん」
「そうそう」
ハーキュリー達と同行するのは[砲法の虹]の色の称号を持つ魔術士ラミントン率いる剣士ソルロ、召喚士マーデルのパーティであり、三人共Sランクの実力者だ。
今回この五人に依頼されたのは二人組の悪魔の討伐で、前に送り込まれた冒険者の生死の確認も含まれている。
ハーキュリー達は三組目だと聞かされていた。
「この辺だな。酷い有り様だ…」
「ハーキュリー、あれを見てみろ」
ラミントンが指差す方向には人であっただろう肉塊が転がっていた。
上半身が無いものや頭部が半分だけの者など確認出来るだけでも最低六人分はあるだろうとハーキュリーが述べる。
「リーダー!!ハーキュリーさん!!」「上を見てくれ!」
「なんだありゃあ…」
「ルガ、戦闘体勢だ。サラマンダーを喚べ」
「了解です!」
ハーキュリーとルガは召喚口上を唱え始め、それに釣られてマーデルも唱え始めた。
「ソルロ、援護を頼むぞ」
「了解だ、リーダー」
「あんなのに効くかは分からんが…」
ラミントン達を見下ろしていたのは20メーターは有ろう機械兵であった。
その機械兵目掛けてラミントンは雷魔法を放ち、ソルロは剣を振るい風の斬撃を飛ばすのだが、装甲は無傷のまま今だ見下ろしている。
反撃の様子が見られないままハーキュリー達三人は召喚を完了し、ハーキュリーの機械兵ジェネラル、ルガのサラマンダー、マーデルの電竜と草牙竜が一斉に飛び掛かる。
背部から前方に向けられたEキャノンを放つジェネラルにサラマンダーの炎魔法が加えられて機械兵に浴びせかけ、電竜と草牙竜は左右から鋭い爪を突き立てた。
すると機械兵から響き渡る声が発せられた。
『この程度か』
『前回の奴等より強者の匂いがしたが、期待外れだったな。兄弟』
『そのようだな。ぼちぼち反撃に出るとするか』
『『行くぞサナトス』』
沈黙していた機械兵改めサナトスは腕を広げて左右の2竜を突き飛ばすと、掌からビームを放ち電竜と草牙竜を焼失させた。
「一撃で…」
「しっかりしろマーデル!次のやつ頼む」
「お、おぉ!」
新たな召喚獣を喚ぼうとしたマーデルだったが。
『『させん!』』
と、サナトスの背部からは折り畳まれた2本の腕が伸び、腰アーマーからライフルを抜いてジェネラルとサラマンダーもろとろ計4本のビームが襲うも、ラミントンが防御魔法を展開させて防ぎきったのだった。
『やるな、人間よ』
『屠れたのはサラマンダーだけか』
「ラミントンよ、助かった」
「ギリッギリだ。次も防げるか分からんぞ」
「次を撃たせなければいいんだ。ルガよ、ロドスを喚べ。ジェネラル、奴の足止め 任せたぞ」
「はい!」
持ち前の装甲で耐えたジェネラルは、スラスターを吹かしてサナトスに体当たりを仕掛ける。
その間にマーデルは召喚を済ませ、大鎌を持つ死霊デスフリッカーを新たに喚びだし、ルガもまた最近契約を行った新たな仲間、アイアンゴーレムの上級種であるロドスを召喚させた。
[MAAS―X200 サナトス]
元々はアルカイルの名称だったが、悪魔達にサナトス(死)へと変えられた。
搭乗型機械兵で火器管制と操舵で操縦が別れている複座式となっているが、操舵側だけでも単純な火器の運用は可能である。
複座式の理由は4本のアームとサブウェポンを駆使する戦闘スタイルを有する為、回避が疎かにならぬようにと設定された。
武装は掌から放出されるビーム砲2問、ビームライフル2挺、その他。
[電竜]
エレキテルドラゴンと呼ばれる上級種の中では下に位置する強さを持つ4メーターに満たない竜。
肉弾戦を得意とし、身体に電気を纏って触れた相手を麻痺させる。
[草牙竜]
グラスドラゴンと呼ばれる上級種の中でも下に位置する強さを持つ。
大きさは電竜と同じほどで、此方も肉弾戦を得意とするが、攻撃魔法は一切使えない。
[デスフリッカー]
死の瞬きと畏れられる死霊、死神とも呼ばれる。
大鎌で生きる者の魂のみを切り裂くと言われていたが、そんなことは出来ないようだ。
[ロドス]
ヘパイストスと云う名の旧神が造り出したとされるアイアンゴーレムの上級種。
その大きさは15メーターを超え、主人の命令には忠実である。
肉体強化の魔法を使い、あらゆるモノの攻撃を防ぎ、拳であらゆるモノを粉砕する力を持つ。




