第265話 蹂躙
その2日後の事、街についた俺達は目を覆いたくなるような惨状を目の当たりにしていた。
「な、んなんだこれ…一体何が」
「酷過ぎる、これも悪魔の仕業なの!?」
「ギルドは?ギルドに急ぎましょ」
「ああ」
何かに襲われたのだろう、街の住民は血を流してあちらこちらに倒れていた。
その傷口は刃物によるモノでありちらほら矢で射ぬかれた者や銃弾の痕であろう傷まであったのだ。
悪魔?いや、これは人間の仕業だろうが詮索は後にして生き残った者がいないか周囲を見渡しつつギルドへ向かった。
「この人もダメ…」
「こっちもだ。生き残りはいないのか!?」
「サキさん!アイさん!まだ息があるわ!」
「ホントか!?アイ」
「うん、任せて」
辛うじて息があった男を発見し、アイが回復魔法を掛けると、男の呼吸は安定してうっすらと開けていた目は精気を取り戻した。
折れた剣と鎧姿を見るに冒険者だと思うが、もしかしたら襲撃してきた側かも知れない…と思っていたが、彼の一言でハッキリした。
「有難う御座います。なんとお礼を述べていいのやら…俺はこの街を拠点として冒険者をしているアーセナスです」
「私はアイ、こっちはサキとアーシェ。お礼なんて気にしないで、それより何があったの?」
「銀翼の…貴方達ならきっと」
24歳だというアーセナスはAランクの冒険者として5人のパーティを組み、この街で討伐依頼をメインに活動していたようだ。
山が近い為、魔物や魔獣の討伐依頼は多かったが複数の高ランク冒険者の活躍で街自体は平穏そのものであったが、昨昼に現れた盗賊の一団に襲われてこの有り様だと言う。
Aランクのアーセナスでも歯が立たなかった強者も幾人か紛れており、その一人に負かせられ、仲間の女性を含む若い女性は皆連れていかれてしまったと。
他の冒険者や住民は皆殺しだと思われると続けた。
「これは我々の一味に手を出した見せしめだ、とも言ってました」
「まさか…」
「ああ、俺のせいだ…」
「?なんのことですか?」
「先日、盗賊のアジトを潰したんだ。その報いがこの街に来てしまった…」
「それは違うわ!連中はその事を大義名分の理由にしただけよ!」
「そうです。アーシェさんの言う通りです…だから気にしないで下さい。でも、手をお借り出来たら」
「勿論だとも。いいよな?」
「当たり前じゃん」「当たり前じゃない」
「有難う御座います!」
「そいつ等の足取りは掴めるか?」
「盗賊が現れたのは西門からですが、何処から来たのかまでは」
「誰もいないと思うけどギルドへ寄ってみようよ」
「そうね。何かしらの情報書類があるかも知れないわ」
「なら俺はその辺に転がってる盗賊らしき死体を漁ってみる」
「それはどうかと思うわ」
「私もそれは止めといた方が」
「それなら僕が」
「「そういう問題じゃない」わ」
「はい…」
アイとアーシェに止められて俺達はギルドへ向かった。
ギルド内でも戦闘が行われたようで、冒険者と男職員の亡骸があったが、女性のはなく皆連れ去られたようだ。
勿論、金品もなくなっており、特にギルドマスターの個室が酷く荒らされていた。
そんな中、散らばった書類に身を通していると、近辺の盗賊に関する物を発見出来た。
「おーい、あったぞ」
「なんて書いてあるの?」
「ならず者集団[スカルプチャーオリジナル]はランドローグ元Sランク冒険者を筆頭としている。拠点となる廃村は地図を参照だってよ」
「ランドローグってもしかして」
「アーセナスは知っているのか?」
「はい、双槍鬼の異名を持つ槍使いです。称号も与えられる実力でしたが断ったとか」
「そんな奴が何故盗賊なんかに」
「ん?まだ名前書いてあるよ」
「ベザロ、リューグ、テイアズ、パラライアだと、えー…こいつ等危険人物だとさ」
「パラライアは知ってるわ。Sランクの召喚士で[砲の真鍮]の称号を持つ女よ」
「そういえば噂で聞いたな。機械兵を含む複数の召喚獣と契約してるんだろ?」
「ええ、実際に会ったことはないけれど」
「称号持ちとか冗談。じゃあ他のもSランクの可能性があるってわけね」
「だろうな、それなら早いに越したことはない 。アーセナスはどうする?」
「もちろんお供させて頂きます!」
「エモノはあるのか?」
「いえ、折れたこの剣だけです」
「鎧はないが、剣なら…」
傷まみれの鎧はどうしようもなかったが、随分前にダンジョンで手に入れた両刃剣ならアイテムボックスにあったのでそれを渡した。
「ダンジョン産のロングソードだ。その剣と見劣りしないと思うが使ってくれ」
「はい!有難う御座います!」
「じゃあ行きましょう。カルテス達を喚ぶわ」
「頼んだ」
アーシェにカルテスとニエーバを、アイにブランを喚んで貰い地図に記載された廃村へと飛び立った。




