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召喚師と竜の誉れ  作者: 柴光
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第264話 対人戦

 


 足跡を辿った先にあったのは、リリの言う通り小さい遺跡が建っていた。

 見た目はさほど朽ちてはおらず、扉もしっかり付いている。


「見張りはいないようだな」

「ここで間違いなさそうだけど」

「ああ、降りて周囲を探ってみるか」


 俺とアイは小声で話し合い、ダークホースをその場に留めて周囲を探索してみることにした。

 その事を後ろにいた2人にも伝えようとしたところ、短剣を抜いたリリが突然アーシェの背後に回って首許に剣先を突き付けたのだ。


「動かないで。動いたらこの子の首をかっ切るわよ」

「急にどうしたんだ?」

「どうしたもこうしたもまだ分からないの?こういうことだよ!」


 遺跡からぞろぞろと20人弱の盗賊が出てくるなり俺達を囲い、手にした武器を突きつけてきた。


「今回は優秀そうなの連れて来たじゃないかリアノ」

「ちょっと!本名呼ばないでよ」

「そうだったなすまんリリ」

「どうやら騙されたと言うことか」

「そうよ、黙って有り金を出しな」

「女は貰う。リリ、傷付けるなよ」

「どお?騙された気分は?」

「…報いかしら」

「何か言った?」

「リリ、お前の後ろに誰がいるか分かってるか?」

「は?」


 リリが後ろを振り向いた瞬間、俺は腰のアルバトロスを抜いて瞬時に照準を合わせて実弾が頭を貫いた。

 片目が見えないせいでアーシェの頬をカスってしまったがリリはその場に倒れこみ、アイを掴んでアーシェの元に転移して更に盗賊の輪から抜け出そうと再び転移を繰り返した。


「残念だが俺の大事な仲間を汚ならしいお前等に預けることは出来んな」

「貴様!どうやら死にたいらしいな!!」

「三下の台詞だな。雑魚がほざくな」

「!!やっちまえ!」

「アーシェは離れててくれ」

「サキさん…」

「?」

「ありがとう」

「ああ!」


 襲いくる盗賊達に対して抜いたままのアルバトロスで6人の頭を撃ち抜き、5人の胴体に穴を開けた所で弾切れになった。

 撃ち終わると同時に、アイが炎魔法を放って盗賊達を火だるまにするも、何人かは防御魔法で防いでいる。

 ここでアーシェもアルバスを喚び出して一気に片付き始め、残るは後方の首領らしき男と取り巻きの3人のみとなった。


「後はお前等だけだ。まだやるか?」

「正直、人相手は嫌になるね」

「クソ!まだ終わりじゃねぇ!!」

『おい、奴等何かを喚ぼうとしているぞ』

「アルバス、止めてもらえるかしら?」

『あい分かった』


 アルバスが残党に突っ込んでいくと、首領が前に出て手にした戦斧をかざし、周囲に光りを放つと、俺達、アルバスも含め、その眩しさで怯んだ。

 ほんの数秒間だったが視界が戻ると、3人の盗賊は[鋼鉄処女(アイアンメイデン)]を召喚してアルバスに襲いかからしていた。


「鋼鉄処女と契約していたのか。盗賊らしいな」

「鉄の塊では私のアルバスは止められないわよ」

『ふん。意思なき鉄塊など造作もない』

「それで終わりと思うなよ!」

「今更足掻いた所で結末は終わりだ」

「言ってろ!来いファラリス、奴等を業火で灰とかせ!」


 アルバスの爪が鋼鉄処女2体の胴体を貫いて戦闘不能にさせたタイミングで首領が巨大な牛型の召喚獣[ファラリス]を喚び、鋼鉄処女と対峙していたアルバスをスルーして俺達の方へ向かってきていた。


「アイ」

「任せて!」


 突進してくるファラリスに、水魔法を放ってから雷魔法で濡れた身体を突き刺すも、速度を落とすことなく目前まで迫るファラリス。

 ならばと前に立ってバスターソードを構え、全力のカウンターを繰り出して足を止めさせ、鋼鉄処女を片付けたアルバスがブレスを射ってファラリスに直撃させる。

 それに怒りを覚えたのか、ファラリスの攻撃対象はアルバスへ変わり、再び放ったブレスを炎のブレスで食い止めて相打ちに持ち込んだ。


『獣如きがやるではないか』

「ヴォーーーーー!!」

『何を言っているのか分からんぞ。まぁ、これで終わりにするから良いがな』


 急降下したアルバスは腕を構えてファラリスの首目掛けて振り下ろし、硬い皮膚を貫くだけにとどまらずその首を切り落として見せたのだ。


『終わったぞ』

「お礼を言うわ、アルバス」

「盗賊達の姿が見えないがどうした?」

『彼処に横たわっておるだろ』

「あ、切り刻んだのね」

「オーバーキルだな」

『愚かにも歯向かおうとしてきたからな』

「自業自得だ。後はアジト内を見て終わりだな」


 アルバスに頼んで盗賊達の死体を焼き払ってもらい、俺達は遺跡の扉を潜った。

 遺跡だけあって外見の小ささと比べて中は広く、小部屋と思われる扉が幾つも存在していた。

 ひとつひとつ扉を開けて行くと、略奪したであろう金品や武器の数々、そして衰弱しきった女性達を見つけて回復魔法を掛けてから外へと連れ出すと、その内の一人がリリの事について尋ねてきた。

 殺したことを含めて話を進めると、その子はリリに対してギルドの仕事で良くして貰ったと、しかし襲われた時に一人だけ何もされなかったのはおかしいと思っていたと話し、裏切られたんだと涙を流していた。


「アーシェどうした?」

「なんでもないわ。ボーとしてただけよ」

「休んでていいんだぞ。この傷、ごめんな、今治すから」

「あ、ありがとう」

「よし、消えたぞ。残らなくて良かった」

「ほら、イチャついてないで手伝ってよ」

「ええ、ごめんなさい」

「そこで謝ると変な感じするよ」

「そうかしら」

「冗談言ってないで行くぞ」


 ここから次の街まで歩いて2日程なのだが、2体のギルドの馬が繋がれていたので女性達を乗せて先にその街に向かって貰うことにした。

 ギルド役員なら当然乗れる為、何度もお礼を言いながら去って行く。


「街でお待ちしておりますので、必ずギルドに顔を出して下さいね」

「ああ、分かった。気を付けてな」

「はい、では後程」


 俺達は一休みしてから街道へと戻った。









[アイアンメイデン]

 女性の顔が刻まれた3メーター程の鋼鉄の召喚獣。

 胴体は開閉式となっており、中には無数の針が生えていて敵を閉じ込め串刺しにし、その者から体液と魔素を吸収する。

 何故か浮遊している。



[ファラリス]

 業火の雄牛の異名をもつ火を噴く巨大な牛型の召喚獣。

 硬度な皮膚に覆われており、放つ炎は低温で徐々に相手を焼き付くしていく特性を持つ。

 火力調整も可能で、ドラゴンブレスを受け止められる程の超火力にも出来るようだ。











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