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召喚師と竜の誉れ  作者: 柴光
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第263話 調査員

 


『首尾はどうだ?』

「上々よ。それよりこんな時間に呼び出さないで貰えるかしら?」

『それはすまんな。貴様が楽しそうにしていたのでな、中々声を掛けられんかった』

「…」

『おっと、他意はないぞ。後2匹だ、奴等の手を借りれば楽に終わるだろ』

「アナタ達が邪魔してこなければの話よ」

『あの者共と私等は指揮系統が違うのだ。此方の残りは2匹だけ、それさえ殺れば貴様の自由も約束出来る』

「期待してないわ」

『そう言うな。天使…いや悪魔と違って約束は守る』

「どうかしらね」

『フフフ、期待しているぞ。それと』

「?」

『冥府の者が動きだしたようだ。悟られれば終わりだぞ』

「それを私に言ってどうしろと?」

『忠告だ。ではな』

「…ハァ」





 野営を終えて片付けている最中、街道から人を乗せた馬が走ってきた。

 何やら慌てているようだが、その理由はすぐに分かった。


「アイ、アーシェ、目覚めの運動だ」

「人助けなら仕方ないね」

「ええ、謝礼金は奮発して貰うわ」


 その人を襲おうと這いずっている4体の獣竜は、リザードタイプと大差がなく大きいだけで竜種に分類される毛の生えたトカゲだ。

 アーシェはさっそくデポルラポルを喚び、俺はアイを掴んで獣竜の前に立ちはだかると、ソイツ等は驚いて急に止まった前列に後列の2体が突っ込む。

 まずは前列にシュヴェーラを舞わせて8本の剣を突き刺し、もう1体はアイの炎魔法で火だるまになり、風魔法を浴びせて炎を吹き飛ばしてからトドメの剣で頭部を貫いた。

 後ろの2体もデポルラポルの闇魔法で致命傷を追わせて首を切り落としてトドメを刺していた。

 後ろを振り替えると、その人は足を止めてアーシェに頭を下げている。


「助かりました。本当に有難う御座います」

「困った時はお互い様よ」

「無事なのか?」

「はい、有難う御座います。まさかあんな所にベスティアドラゴンが居るなんて…あ!申し遅れました、私はリリ・グロース、郊外調査員です」


 郊外調査員はギルド内の役職の一つで、主に街道の補修の有無や地図の更新、たまに魔物の棲み家等のチェックを行うギルド役員である。

 内容にもよるが、大体は3人一組+依頼した護衛の冒険者で街の外へ出るのだが、この女性は一人、ということは。


「他5名と一緒にこの街道で儲けを働く盗賊の噂があって調査をしておりました。昨夜は野宿しようと話あって冒険者さんが見張りを買って出てくれたのですが、朝を迎える前に襲われまして…」

「それでリリさんだけ逃げられたと?」

「はい…ドラゴンを召喚して追わされましたが。3人の冒険者さんは亡くなりましたが同僚は連れさられたんです!」

「貴女達役員は皆女性なのね?」

「そうです。お願いです!どうか同僚を助けて貰えないでしょうか!?もちろんお礼は致します」

「もちろん!ね、サキ、アーシェ」

「ああ、任せて下さい」

「その盗賊許せないわ」

「有難う御座います!Sランクの方々の報酬としては足りないと思いますが、出来るだけご用意いたします」

「私達を知ってるの?」

「有名ですよ。黒の外套を纏った銀翼の覇軍に聖騎士スタイルの黒白の城壁、それに天才召喚士の背徳の赤」

「流石ギルド役員ね」

「嬉しいことだな。なら自己紹介はいらないな、そこへ案内してくれ」

「はい!」


 下級とはいえ、複数の竜を使役する盗賊なんて聞いたことがない。召喚士の落ちこぼれなんて話では済まない…まぁ、召喚出来る者が何人かいるだけの話なら問題はないが。

 取り合えず俺達は襲われた地点へ移動することになった。


「距離があるから歩いて言ったら手遅れになる。しかしジル達を喚ぶのは良いが目立たないか?」

「確かに…何処から見てるか分からないしね」

「それでしたら大丈夫です」


 リリはそう言って召喚向上を唱えると、シャドウホースと呼ばれる馬型の召喚獣を喚び出した。

 隠密行動に長けたシャドウホースなら足音も気配も消せるので近付くことが出来る。

 俺とアイでシャドウホースに、ギルドの馬にリリとアーシェが乗って襲撃された所へ急いだ。


「この先です」

「ならここで待っててくれ。コイツは借りてくぞ」

「はい。お気をつけて」


 そこには無惨に引き裂かれたテント、文字通り身ぐるみを剥がされた冒険者の遺体が転がっていた。


「酷い…」

「ああ、盗賊は人の皮を被った魔物だな。見付けたら容赦しなくていいぞ」

「分かってる。ねぇ、これ見て」

「足跡か。高原に続いているな」

「うん。この先にアジトがありそうだね」

「…それは間違いなさそうだが、足跡が残るほどの質量を持った何かを飼い慣らしてるって事になる。獣竜じゃこれ程深く足跡は付かないだろう」

「もっと大きなドラゴンとか?」

「どうかな…取り合えず言ってみよう」


 アーシェ、リリと合流して足跡を追うことにした。

 リリが言うには獣竜以外見ていないそうで、この先にあるのは小さな遺跡の入り口がポツンとある位だとか。

 この足跡の方角も遺跡に向かっているらしく、そこが拠点と見て間違いないなさそうだ。


「間に合ってくれればいいが」

「…そうだね」










[獣竜]

 ベスティアドラゴンとも呼ばれる下級の竜。

 4足歩行型で、地竜よりリザードに近く、リザードタイプとの違いは大きさと毛が生えている位である。

 ブレスは使えるがスキルも魔法も使えない。



[シャドウホース]

 真っ黒い馬型の召喚獣で隠密行動に適しており、スキルで影に入り込むことが出来る。

 大人二人乗せても余裕がある程の大きさがある。

 





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