第246話 基礎と審判
コイツ、一体何処から現れたんだ?俺が気配に気付けなかっただと?
間違いなく悪魔だが、この容姿に見覚えがある。
『ねぇ、聞いてる?』
「年端も行かぬ少女の格好、お前、ガブリエルだな?」
『そうだけど?それより、僕の質問に答えてよ』
やはり噂に聞いていた悪魔のようだ。見た目はコレでも溢れる気は半端じゃない。
俺達にやれるか?(マティアス、白兵戦に備えろ)と念話を送りながら悪魔の質問に答える。
「大竜退治だ。あれはお前が喚んだのか?」
『へぇーそうなんだ。あれは僕じゃないよ、悪魔が喚んだんじゃない?』
「お前も悪魔だろ?」
『僕は違う。いや、僕達は天使。元が付くけどね。それよりその機械カッコいいね、僕にちょうだいよ』
「何を言ってるんだ?」
『まぁ、君を殺してから貰うから安心して』
ガブリエルの手に神々しく光る1本の剣が握られると、それを振りかざそうとしていた。
「チッ!マティアス!」
腰から引き抜いたピストルの照準を合わすと同時に剣が振るわれて、マティアスは腕を斬り落とされてしまったが、1発の弾丸がガブリエルの胴体を貫通した。
『危ないなぁ。僕じゃなきゃ死んでたかもね』
「効いて…ないのか?」
『ちょっとは痛いよ。でも、それじゃあ足りない』
「ふん。変な性癖でもあるのか」
『まぁ、いいや。これで終わり』
「そいつはどうかな?下を見てみろ」
『?なにもないじゃん』
コイツが下を見た瞬間、取り出した閃光弾を投げつけた。
『な、何コレ!?』
『撤退するぞ』
「了」
卑怯と言われればそれまで。あんな化け物、暗部の俺には正面から対峙しろなんて無理難題だ。
逃げ切れれば俺の勝ちだが、簡単には行かないみたいだ。
「ドラゴン…」
マティアスの手に乗り、撤退しようと走り出した俺達の目の前に1体の竜が舞い降りた。
ルシフェル、源陽竜と呼ばれる大竜の1体。
「すまんなマティアス。ここで終わりのようだ」
「…」
『良い覚悟です』
辺り一面を真っ白な光りに包む程のブレスが放たれた所で俺の記憶は無くなった。
心地良さを感じる暖かな光り、抜け出したくなかったみたいだ。
『ルシフェル、危ないじゃないか。僕まで巻き込むつもり?』
『ごめんなさい』
『まぁそれはいいけどさぁ、機械は残しといてって言ったじゃん』
『…』
『まったくなぁ』
ガブリエルは源陽竜を解除して自らも姿を消す。




