第230話 対16災害
ダエーワは16本もの腕が生えており、それぞれから異なる魔法、またはスキルを放っている。
始めにチラッと見たときは5人は、腕から放たれる魔法の手数に苦戦しているように思えた。
今改めて見てみると、あれほどあったダエーワの腕は残り4本まで減っていた。
そして今、アルバスのブレスによってまた1本もがれたのである。
「頑張ってるな」
「なに悠長なこと言ってんのよ」
「そうよ、先程まで危うかったわよ」
「悠長でもないけど、心配はいらんだろ。アイもアーシェも居るんだからさ」
「それほどでもないよ」
「アイさん、サキさんに乗せられてるわ」
しかし、残りの3本が厄介だった。
吹雪、暴風、雷をあらゆる方向へ放って、5人を近付けさせ前としていた。
時おり俺達にも襲い掛かるが、離れているお陰で威力も弱まりアイの防御魔法で十分防げるほどであった。
「クソったれ!あの腕をなんとかしてくれよ」
『紫よ、黙れい。出来ればとっくにやっておるわ』
「ほんと、青の言う通りよ」
アルバスとジルコートによって大人しくさせられたベナフ。
光速で放たれる雷を紙一重に避けて風魔法を浴びせるニエーバだが、ダメージは少ないが確実に攻撃を当て、破壊力の高い暴風は、アルバスとベナフのブレスで迎え撃つ。
広範囲の吹雪は、ジルコートの防御魔法で防ぐと、ノワルヴァーデが飛び出してダエーワの懐に黒炎のブレスを吐いた。
「よっしゃぁ!効いてるぞ」
『ダメ。この程度じゃ怯まない』
『ベナフ!避けなさい!』
「あ、やべ」
ニエーバの言葉にハッとしたベナフだったが、雷の攻撃がすぐ目の前に迫っていた。
俺達もベナフの名を口にした…その時、間にアルバスが入り、雷を代わりに受けたのだった。
「アルバス!何してんだ!」
『貴様の為ではないわ。我は主と契約している故、死には…せん。後は任せたぞ』
アルバスは光りの粒子になって消えてしまった。
これで4人になってしまい、更に厳しい状況に陥ってしまった。
すると、街の方から冒険者達が集まり、数名の召喚士が口上を唱えて各々の召喚獣を喚び出した。
「へルックドラゴンにローズドラゴン、それにデザートキングやタイタンもいるわ」
「ああ、加戦してくれるようだな」
「アルバスの仇、とってもらわなくちゃね」
へルックドラゴンと呼ばれる幸福竜と砂山の怪物であるデザートキングは守り型で、ダエーワの攻撃を一身に受けてくれている。
ローズドラゴンこと桃竜と巨人のタイタンはジルコート達と攻撃に参加してくれた。
ベナフは前へ前へと出て行き、遂には腕1本を捉えて渾身のブレスを放つと、その腕は胴体から切り離されて落下した。
残る腕も、隙を突いたジルコートとノワルヴァーデによって落とされる。
デザートキングの砂嵐、タイタンの土魔法、ニエーバと桃竜の風魔法、ジルコートと幸福竜の光魔法、ベナフの水魔法にノワルヴァーデの闇魔法が一斉に放たれ、ダエーワは沈黙するのであった。
「勝ったんだね」
「ああ、終わったな」
「魔神相手に凄いわよ。後で労いましょう」
集まった街の冒険者達も喜びあっていた。
[幸福竜]
へルックドラゴンとも呼ばれる中級種で、守りに長けている。
大きさは一般的な竜より一回り小さい。
[桃竜]
またはローズドラゴン。
上級種。ピンク色の鱗を持ち、可愛い顔付きに似合わない攻撃力を有する。
[デザートキング]
動く砂山の怪物で、野生では殆ど見かけることがない。
砂の体はどんな攻撃でも吸収してしまうが、水に弱い。
[タイタン]
元から召喚獣である巨人。
巨躯から繰り出される打撃は強力であり、同時に土魔法に特化している。




