第229話 対エイム
『見たことあるの』
「エイムよ、青」
『そうだ、そんな名前だったな』
ジルコート達は知っているのであろう、エイムと呼ばれる悪魔は空に大規模な魔法陣を展開させて1体の巨人を喚んだ。
『さぁ、我に仕えよ。魔神ダエーワ!』
地響きと共に降り立った魔神はバルディエルのような機械兵の倍の大きさを誇っていた。
「デケー!あんなん相手しろってのか」
「ベナフ、悪いがジル達の援護をしてくれないか?悪魔は俺達がやる」
「はいはい、任せときな。確かアイツは火を操るのに長けていたはずだ」
「そうか、サンキュー。気を付けてな」
「互いにな」
人化を解いたベナフは、ジルコート達と合流し、竜5人組で魔神に挑んで行く。
「アイはアーシェの護衛に回ってくれ。俺はジャンヌを喚ぶ」
「分かった」
「私は平気よ。アイさんも連れてった方が良いわ」
「大丈夫だ。仕留めてみせるさ」
ジャンヌを喚び出して、腕をつかんで悪魔の元へと転移した。
突如目の前に現れた俺達に驚いた悪魔に、ジャンヌは聖剣と使いなれた剣の二刀を振りがざす。
悪魔は、咄嗟に松明を突き出すと、前面に炎の壁を作った。
「それがどうしたと言うんですか!」
ジャンヌは炎ごと斬り裂くも、既に悪魔は距離を置いていた。
「マスター!!」
「おうよ!」
『な、いつの間に!?』
悪魔の頭上に転移した俺は、長剣を振り降ろすと、松明を盾に防がれたが、地上に叩き落とすことが出来た。
落下するジャンヌの元へ転移し、地上へと戻ると、悪魔の所へ即座に駆け寄った。
起き上がった悪魔は、蛇のように長い炎の渦を自在に操りジャンヌを押し返そうとしていたが、彼女は勢いを落とすことなく薙ぎ払いながら突き進んだ。
『止められると言うのか!?』
「私を止められるのはマスターだけです!!それにこんなチンケな火、アイさんの方が余程マシな火を使いますよ」
クシャミが出たアイを大丈夫かとアーシェが訪ねた。
炎を破ったジャンヌは、その勢いのまま二刀の剣で悪魔を斬り抜くと、お互いに振り返って悪魔は構えたが、それより速くジャンヌは両腕を斬り落とした。
『バ、バカな!我は覚醒態なのだぞ…なのにこんな小娘に遅れを取るなど…』
「覚醒態?私は疾うに覚醒を果たしてますよ。マスターと出会ったその時から」
『な、なんだと』
「もう、終わりです。覚醒してその程度じゃどうしようもないですよ」
『ひ、』
悪魔は、ジャンヌを蹴り飛ばしてその場から逃げ出そうとしていたが、振り返ると俺と目があった。
見つめ合う気はないので、胴体に2本の片手剣を突き刺して悪魔退治を終わらせた。
「良くやったな、ジャンヌ」
「お褒めのお言葉をちょ「それより覚醒態ってなんだ?ジャンヌ、お前もそれなのか?」
「え?はい、私の場合はマスターの力になりたいと願ったら急に力が沸いてきました。これが愛の力なんですね」
「…悪魔も同じなのか?」
「悪魔は糧を必要としますから同じとは言い切れませんが、似たようなもんです。魔界や冥界に住む者なら誰しもなれると思いますよ」
「そうか、ありがとな」
「とんでもないです!マスターのお役に立てて光栄です!」
慕ってくれるのは嬉しいんだが…ジャンヌを解除して俺はジルコート達に目をやる。
[エイム]
ソロモン時代における序列23番にしてデューク。
蛇と火を操り、街を一瞬にして業火に包むとされている。
覚醒態となり、ある者からダエーワを授かった。
[魔神ダエーワ]
元々はアンラ・マンユに仕える悪魔達だったが、大戦後に生き残った1体が何らかの影響によって魔神になった。
仲間の魂かアンラ・マンユの意思とも云われている。




