第225話 城主との対峙
1階を散策したが、奴等の姿はなかったので2階へと上がると、そこにもエンプーサが待ち構えていた。
咄嗟にクレイモアを手にして、現れた2体を横払いで真っ二つに、奥にも複数いるので斬りかかろうとした時。
「サキ、後は任せな」
ベナフだ。後ろから魔法を放とうと片手を前に突き出している。
転移魔法でベナフの後ろへと移動すると、激流の如し水魔法がエンプーサ達を襲い、通路いっぱいの激流がそのまま角の壁を破壊して外へと叩きだしたのだった。
「いい調子だ」
「通路がびちょびちょ。なんてこと、してくれてんの」
「おいおい、さっき床をツルツルにしといて良く言うぜ」
「二人共、早く進むわよ」
「「はーい」」
「子供だな」
角を曲がると、螺旋状の広い階段が続いていた。
上るとムルシエラゴが襲いかかってくるが、アーシェが喚び出したデポルラポルに全滅させて貰い、上りきるとそこには真っ赤に塗装された巨大な扉があった。
扉を押すと、音を立てながらゆっくりと開いていき、それは俺達の前に姿を現した。
「良く来た人間達よ。我は歓迎するぞ、さぁパーティを始めよう」
紳士的な立ち振舞いを見せるドラキュラ、何処かの姫妃の格好をしたカーミラ、歓迎すると言い放ったのはその奥に玉座に座る美しい女性、ヴァンパイアバシリッサの吸血鬼3体だ。
「コイツは予想外だったな」
俺が予想していたのはドラキュラとカーミラだけで、バシリッサは予想外、多分アイとアーシェもそう思っているだろう。
「ほんと、ツイてないよ」
「あの女は俺が相手しよう。残りは任せたぜ」
俺達は頷きあい、俺とアイでドラキュラを、デポルラポルがカーミラを、ベナフはバシリッサを相手取る。
カーミラはドレスをヒラヒラさせながらデポルラポルの剣撃を華麗に避け、手にもっている鉄の扇子で片方を斬られ、その隙を突いたもう一人が背後から剣を突き立てるも、紙一重でかわして突き出た腕を切り落とした。
双子だけでは厳しいと考えたアーシェはルナを喚び出したが、その間にもデポルラポルは消耗していく。
腕を落とされた方は魔法による攻撃を行い、牽制しているがカーミラには当たならい。
剣を握る方に振られた鉄扇が当たろうとした時、ルナの召喚が間に合ってその攻撃を防御魔法で弾いた。
ルナはそのまま双子に強化魔法をかけると、今までと比べ物にならない程の剣速でカーミラを圧していき、攻撃魔法が強化されたもう一人が放った魔法によって壁際へと飛ばされるも、直ぐ様体勢を立て直した。
しかし、駆け寄った双子の魔法と剣の連撃に対抗出来ず、逃げ出そうとしたところ2人に挟まれて為すすべなく討伐された。
[カーミラ]
ドレスで身を包んだ青白い肌が特徴の女型の吸血鬼。
鉄の扇子を武器に軽い身のこなしで相手を翻弄し、裂いて吹き出した血を浴びるのが好きらしい。
[ドラキュラ]
紳士服を着こなす男型の吸血鬼。
手にする杖は仕込み刀であり、剣士としての腕は超一流。影に身を隠すことも出来る。
相手に噛み付くことはせず、グラスで血を嗜むようだ。
[ヴァンパイア・バシリッサ]
吸血鬼の女帝である長髪が似合う美しい女性。
全属性の魔法を使いこなし、竜種に劣らない魔力を持ち合わせている。
また、己の眷属も召喚出来るらしい。
バシリッサは純粋に首許へ噛み付く。




