第218話 対巡洋戦艦
バルディエルはヴォルドパックに換装済みの状態で召喚され、竜達に遅れを取らずに駆けて行き二人と1機はあっという間に巡洋戦艦の懐に飛び込んだ。
そして発砲音と爆発音が辺りに響き渡った。
『機械兵か、実に美しいフォルムだ。私のと甲乙付けがたいではないか』
『蒼、あの悪魔何か言ってる』
『ほっときなさい。それよりも攻撃に専念して』
『壊すのが惜しいくらいだ』
バルディエルは手にするライフルで応戦し、砲弾を盾で防ぐ。
ニエーバは魔法とブレスで艦に穴を開けようと奮闘しているがその装甲は硬く、魔法を受け付けていなかった。
ノワルヴァーデはブレスによる攻撃をメインで行っていた。
『私の攻撃じゃビクともしない、それにあの大砲が邪魔ね』
『先にやる?』
『そうしましょうか、そこの機械兵も』
「了解。最適化の為ヴェロスパックへと換装します」
バルディエルは高機動戦を捨てて新たなパックへと換装した。トゲのような物が後方へと数本生えている形をしている。
スラスターを吹かしながら地上へとゆっくりと降下していく最中、そのトゲを一斉に放ったのだ。
「目標確認。これよりオールレンジに移行します」
放たれたソレは砲弾を回避しながら自由自在に動き回り、先っちょから放出されたエネルギー弾で次々と機関砲を落としていった。
『おぉ!!実に素晴らしい!換装だけでなく遠隔操作攻撃も行うとは!っと悠長な事も言っておれんな。エネルギー充填、目標、降下中の機械兵』
巡洋戦艦が傾き、バルディエルへと艦首を向けて主砲の発射体勢を取った。
「警告、ロックオンされました。回避アルゴリズムにより回避率0%と判明。目標の破壊に専念します」
『無駄だ。この収束砲にはエネルギー弾なぞ無意味よ。自由落下中じゃ動けまい』
バルディエルは主砲に攻撃を集中するも、他の機関砲と違い壊すことが出来ない。
そして射線上に入ってしまったその時、エネルギーを貯め終えた主砲が放たれてしまった。
盾を前に突きだして守りの体勢に入ったバルディエルにノワルヴァーデとニエーバが体当たりをかまして射線上から押し退けたのだ。
二人の背後を掠めて行ったエネルギー砲は地上の原形を変えてしまう程の威力を有していた。
近くまで来ていた俺達にも爆発の余波が襲ってくる。
「アイツ等は!?」
「大丈夫みたいよ」
「ええ、でも厳しいみたいね」
「ダメか、ならアクロポリスを喚ぶ。アイ、アーシェ、悪魔は任せたぞ」
俺は召喚口上を唱え、ティリンス・アクロポリスを喚び出してバルディエル達に距離を取らせようと叫んだ。
『外したか、ん。なんだ?』
悪魔は上空の魔法陣を見上げていた。
次に降り注ぐ大剣に身を屈めて悲鳴をあげている。
大剣は艦のあちこちに突き刺さり、アクロポリスによってブリッジを切り裂かれて爆発と共に光りの粒子になってアクロポリスと消えていった。
「悪魔は?」
「あそこ、無事だったみたいね」
「しぶといわね」
地上に落下した悪魔は尻餅を突きバルディエル達に囲まれていた。
[バルディエル専用バックパック ヴェロスパック]
1本1本の出力を最大まで上げて重力化での遠隔操作攻撃を可能にしたパック。
従来の有線式の大型な物と比べて、無線式は小型で尚且つコードの制限を受けない為、自由度が高い。
しかし、多少のタイムラグとエネルギー砲の威力が弱まってしまう弱点もある。
ヴェロスパックには中央上下に大型で発射口が3門付いた無線式と左右に小型の無線式それぞれ4基が搭載されている。
針鼠を連想させる見た目だ。
巡洋戦艦の装甲
インヴィンシブル級の場合、機動性も求められていた為に装甲には対弾は最小限の防御力に抑え、代わりにアンチマジックコーティングを含んだ特殊な塗料で塗られている。
物理的な攻撃は最小限と言っても、同型艦の305㎜連装砲や対空ミサイルも数発耐えられる。




