第191話 狼と虎
3階層目に下った俺達の前には狼タイプであるワーウルフが群れをなして彷徨いていた。
そのうちの一匹が俺達に気付いて唸りを上げると、他の狼もこちらに振り向き襲い掛かってきた。
コイツ等は一匹一匹素早さ以外大した戦力は無いものの、群れをなすことによって獲物を追い詰めていくことに長けた魔獣だ。
「ルナ、スロウをお願いね」
カリストの速度低下魔法によって襲いくるワーウルフの素早さを数段階下げていく。
「助かる。アイ、魔法は抑えておけよ」
「わかってる」
俺とアイで前に出て、手にした拵えでその首を落としていった。
速度低下魔法を受けて歩いているようにしか見えないワーウルフの首を跳ねるのは簡単だった。
あっという間に殲滅すると奥から別の群れが現れたが、カリストのお陰で楽に退治していけた。
「アーシェがいてくれて助かったね。ルナ、ありがとね」
「ほんとだな」
「この子のサポートは強力でしょ」
「私も契約したいな」
「おいおい、聖騎士様が何を言ってるんだ。本来は契約出来る職業じゃないぞ」
「分かってるよ。ノワは特別なんでしょ」
「だが、ノワの恩恵を受けられるのも聖騎士の特権だな」
そんな事を話ながら進んで行き、次から次へと来る狼達を倒し回った。
因みに、コイツ等のドロップ品は毛皮である。フカフカだが防水性に優れている為、そこそこの金額で買い取ってくれる。
倒してはドロップ品を回収してを繰り返してボス部屋の前まで着いた。
「あれ何?」
「アーシェさんや、あれはなんだね?」
「ブラッドファングじゃないかしら。あの牙に見覚えあるわ」
ブラッドファングはタイガー系の魔獣で、長く延びた2本の牙に、赤黒い毛皮が特徴である。
「サキ、作戦は?」
「ルナの速度低下を行った後、一気に畳み込むぞ」
「りょーかい」
「任せて」
ルナから速度低下魔法がブラッドファングに放たれ、俺達は一気に攻め寄った。
俺は左から拵えを振るい、アイは右から片手剣を振るったのだが、その攻撃を飛び越えてかわされてしまった。
「スロウを受けてもあの速さなの!?」
「元が相当素早いってことだな」
ソイツは俺達を無視してアーシェの方へと駆けていき、その牙で噛みつこうとしていたが、カリストの防御魔法によって弾かれた。
ルナはすかさず、麻痺を与えて痺れさせて俺達を手招きしていた。
痺れて動けないブラッドファングの背後を俺とアイで斬り裂く。それでも尚、牙を向けてきたので、額に剣を突き立てるとその一撃でようやく倒れてくれた。
「アーシェ、大丈夫か?」
「ええ、私は平気よ」
「それなら良かった。お、消えてくぞ」
ブラッドファングは消えていき、ソイツの2本の牙をドロップしていった。
「高く売れそうだね」
「1本20はかたいわよ」
「そんなに!?」
「珍しいだけじゃなくて武器として加工すると強力なのよ」
「よしよし、これだからダンジョンは止められんな」




