第186話 扉の先
「「アーシェ!!」」
「あら、お二人とも久しぶりね」
「久しぶりねじゃねーだろ。待ち合わせた街に居ないし心配したぞ」
「ほんと。まぁアーシェだから心配って程でもないけどね」
「ごめんなさい。どうしてもやることがあったの」
「ジルから聞いたが、ここに居る奴と契約したいのか?」
「ええ、ニエーバの願いなの。その前に結界が張られていて突破出来ないのよ」
「結界?」
「封印の魔法よ。何処ぞの誰かがドラゴンを封印したと言うことね」
「わざわざ?って言うより封印するほど凶悪なドラゴンなの?」
『いいえ。少なくとも、人間に仇なす存在ではないはず』
「ならば何故」
「人間以外の何者かの仕業かもしれんな」
「サキさんの言うとおりだと思うわ。封印魔法は外側の攻撃に弱いはずなのに、ニエーバでも破れなかったわ」
「そうなのか?封印の魔法なんて実際に見たことないからな。ジル、ノワ、お前達はどうだ?」
「やってみないと分からないわ」
『私も。でも保証はない』
「よし、頼んだぞ」
本当なら三体の攻撃で無理くりにでも破壊したいところだが、全員が中に入ったらすし詰め状態になってしまう為、仕方なく一体ずつ入って試してもらうことにした。
ジルコートは光魔法によって階上を試みるが開かず、力任せの攻撃でも破ることが出来なかった。
次にノワルヴァーデもブレスや闇魔法を放ったが結果は変わらず。
「なにあの扉!全然壊れないじゃん」
『ごめん』
「ノワは悪くないよ」
「私達じゃ開けられないわね」
「ジル、何か分からなかったか?」
「いいえ。黒は?」
『私も』
「んー。ならコイツに頼むか」
「あら、サキさん何か思い付いたの?」
「分からんがやってみるさ」
俺はアイテムボックスから竜の珠を取り出して放り投げた。
「マスター、何か用事か?」
「おお!これはアーティファクト!ドラゴン型も存在していたのね」
「アーシェはお初だったな。コイツは機械竜のマークⅡって名だ」
「格好いいわね」
「だろ。マークⅡ、頼みがあるんだが」
俺は機械竜であるマークⅡを喚び、封印が破れるかを訪ねる。
「拝見する。マスターも共に」
「ああ」
俺とアーシェとマークⅡで洞窟内部へと入り、扉の前まで来ると、マークⅡが反応を示した。
マークⅡの眼の光りがより一層増して扉と向き合い、しばらく微動だにせず佇んでいた。
すると、扉が徐々に動き始めた。何をしたんだと話しかけても返事は帰って来なかった。
完全に扉が開くと。
「マスター、これでいいか?」
「何をした?」
「波長を合わせただけ。他に何かあるのか?」
「いや、流石だな」
「褒め言葉、感謝する。内部に竜種の反応を確認。排除命令はあるか?」
「大丈夫よ。後は私がやるわ」
「承知した。ではマスター、帰還する」
「ああ、ありがとな」
マークⅡを珠に戻すと、アーシェは後方で外で待機していたニエーバを念話で呼ぶと、更に奥へと進んで行った。
そこには身体を丸めて寝ている一体の竜が存在した。
『イグニス』
『誰だ。我が名を呼ぶのは』
その竜は起き上がり、俺達の方に顔を向けてきた。
「火炎竜!?」
「そう。力を借りたくてきたの」
俺達は火炎竜とニエーバを見上げていた。
[火炎竜]
プロクスドレイクとも呼ばれる真っ赤な竜。
上級種で火竜が長年生き残った姿とされているが、似ても似つかぬ姿と力を有している。
西竜型で銀竜達より一回りデカイ。




