第183話 対象牙竜
『人間等久々だな。芋虫どもには飽きたゆえ、頂かせてもらおう』
「腹壊すだけだぞ」
『ハハハッ!我の胃袋は強靭だ』
2足歩行の象牙竜は速かった。そのスピードを生かした突進は強力で、ギリギリの距離で転移して避ける。
地面はえぐれ、2本線が起こされていた。
シュヴェーラをソイツにぶつけるのだが、器用にも逆鱗で弾き返されてしまう。それでも何度も舞わすと。
『しつこいぞ!人間!』
象牙竜は魔法か覇気だかでシュヴェーラを纏めて吹き飛ばし、俺達に突進を仕掛けてくる。
再びアイを掴んで転移し、俺とアイは口上を唱えた。
ジルコートとノワルヴァーデを喚び、相手をしてもらうことにした。
「あれは俺達には無理だ。頼むぞ」
「お願いね」
「わかったわ。行こう、黒」
『ええ』
二体はブレスを放った後、空へと舞った。
象牙竜は横ステップでブレスをかわし、飛んでいる二体に土魔法による攻撃を仕掛けた。
次々と飛んでくる岩を避けながら、ジルコートは光魔法を放った。
しかしその攻撃も避けられてしまうが、避けた先でノワルヴァーデの闇魔法を一撃与えることに成功した。
それでも一発でどうこう出来る相手ではない。再び攻めに移られて、二体は避けきれなかった岩を数発食らってしまった。
『しぶといな』
ダメージは受けているが、飛行には支障がなく飛び続けていると、象牙竜から黒い球が放たれ、ノワルヴァーデの前でその球が広がった。
すると、翼を羽ばたかせてもがくが、ついに地面に叩きつけられてしまった。
「重力操作魔法か」
「あれって闇魔法よね?なんで使えるのよ」
「そんなことは知らんがノワがヤバイな」
ノワルヴァーデは重くなった重力で地面に吸い寄せられてしまったのだ。
狙いを付けられ突っ込んで行くと、 空からブレスと光魔法が放たれ、突進を遮った。
当たることはなかったが、その攻撃からノワルヴァーデを救うことは出来た。
「黒、大丈夫?」
『銀。有難う』
『邪魔をしよってからに』
『もう、それは受けない』
『避けられるなら避けられるがいい』
前方に光の膜を張り、再びノワルヴァーデに駆け出した。
二体は魔法を繰り出すも、その膜に阻まれて本体には届かない。飛び立とうとするも間に合わない。
「アゲート!」
俺はノワルヴァーデと象牙竜の間に転移した。
そして突っ込んでくるソイツに対してカウンター魔法を発動すると、俺は飛ばされ、象牙竜は大きくのけ反った。
「マスター!」
「今だ!やれ!」
その言葉で、二体はブレスと魔法を放ち続けた。
やがて攻撃が止み、モクモクと上がった煙が晴れると、そこには象牙竜が倒れていた。
『ふん。我がエサだったとはな。竜を従える人間よ、ほんとに食えぬヤツだったな』
そうして象牙竜は息絶えた。
「サキ、大丈夫?」
「服が擦れて切れちまった」
「マスター、体は?」
「ん?大丈夫だ。ありがとな」
『銀の主。有難う』
「黒もありがとな。さて、逆鱗を取って帰ろうぜ」
俺達は逆鱗を手に入れて街へと戻る。




